これだけは知っておきたいサッカーの英語
2006年6月30日
2006年6月30日
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東京外国語大学教授 根岸雅史 Negishi Masashi ワールドカップとサッカーの母国![]() 「英語教育」2006年7月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" July 2006 Vol. 55 No. 4 (Taishukan) ご存じの方も多いと思うが、the United Kingdom(以下、「英国」)は、ワールドカップには England, Wales, Scotland, Northern Ireland の4チームを出すことができる。しかしながら、これがオリンピックとなると、参加が認められているのは「英国」1チームのみだ。このため、オリンピックにプロ選手の参加が認められてからは「英国」はオリンピックには不参加だ。今度のロンドン・オリンピックではどうするのだろう。 「サッカー」と football「サッカー」は、英語では soccer なのか football なのかは、いつもちょっとした議論になる。もともとは「サッカー(本稿では便宜的にこちらを使う)の母国」イングランドでは、「サッカー」は football と呼ばれていた。これが19世紀に入り、地方ごとに定められていたルールが協会(Football Association)により統一されたことで、association football と呼ばれるようになった。この最初の単語の soc の部分から soccer となったと言われている。英国では soccer とは呼ばないと言われることがあるが、これは必ずしも正確ではない。実際、英国でも soccer という単語の入ったテレビ番組タイトルもある。この football は口語では footer や footie、footy とも言う。ただし、political football となれば、これは「政争の具」という意味だ。 カタカナ語に注意大方のサッカー用語は、日本語と同じであるが、少し注意した方がいい単語がいくつかある。まずは代表的なのは「シュート」と「ヘディング」だ。サッカーの基本とも言える「シュート」と「ヘディング」が英語ではないというのも奇妙な話である。もちろん shoot は立派な英語であるが、これは動詞であり、日本語の「シュート」は shot である。個人的な経験では、日本人が「ナイス・シュート」と言うような場面では、"Good shot!" と言われることが多いと思う。それから、「ヘディング」のことは、英語では header である。「ヘディングをする」というのであれば、動詞で head を使うことになる(He headed the opening goal.)。用具では「スパイク」は boots という。さらに、サポーターが持っている、各チーム名の入った「マフラー」は scarf であるが、これは女性がするような「スカーフ」ではない。「監督」はイギリス英語では manager というが、アメリカ英語では coach となる。かつて米国でワールドカップが開かれたときに Newsweek では各国の代表チームの監督は coach として紹介されていたはずだ。イギリス英語でいう coach の方は日本語の「コーチ」に近く、goal keeping coach, head coach, first team coach などの種類がある。 チーム名新聞やテレビ・ラジオで厄介なのは、チーム名がニックネームで呼ばれていることだ。たとえば、Arsenal はむかしスタジアムが弾薬庫の隣にあったことから the Gunners と呼ばれている。Tottenham Hotspur は名前が長いので、Spurs と略される。さらに、ユニフォームの色に由来するものもあり、Manchester United は Red Devils と呼ばれている。他のチームでも、Chelsea 対 Liverpool であれば、前者が Blues、後者が Reds となる。これらは何の説明もなく用いられているので、知らなければ手も足も出ない。同様に厄介なのが、スタジアムの名前である。これは日本の野球で言えば「甲子園」や「東京ドーム」でどこのチームの話かわかるようなものである。Wembley と来れば、代表チームの試合である(ただし、現在は改修中〈右段写真参照〉で、Cardiff の Millennium Dome を使用中)。また、Stamford Bridge とくれば Chelsea、Old Trafford とくれば Manchester United という具合である。同じところを本拠地とするチーム同士の試合を Derby というが、この代表的なものとしては Liverpool を本拠地とする Liverpool 対 Everton があり、Merseyside Derby として有名である。ついでながら、スタジアムの外にいるダフ屋は ticket tout という。 試合を見るさて、"Heads or tails?" と言って行うコイン・トスで陣地が決まれば、kick off である。試合が始まれば、美しい芝(turf または grass)の pitch に選手が散っていく。ポジション名は、日本語とあまり変わらないものが多いが、goalkeeper は goalie とも呼ばれる。また、チームの captain は skipper と呼ばれることもある。ただし、日本語の「司令塔」にあたる英語はない。強いて言えば、play maker がこれに当たるか。これは攻撃を組み立てる(play in the hole)ことになる。dribble や one-two (give-and-go とも)、volley、overhead kick (bicycle kick とも)といった用語は多少なりともサッカーをやったことがあれば、日本語でも知っているはずだ。シュートを放つときに用いられる動詞は blast や blaze といった強力なものから、chip(ループ・シュートを放つ)というようなソフトなものまでさまざまだ。時には nutmeg(股抜き)や back-heel(ヒール・キック)、glancing header(振り向きざまのヘディング・シュート)などの技も披露してくれるだろう。1人で3点とれば hat trick である。この hat trick は日本ではサッカーとの連想が強いが、実はクリケットで投手が連続して3人の打者をアウトにするとチームから新しい帽子が与えられたことに由来する。同点弾は equalizer だが、語形成的には複雑なこの単語も中継では "An equalizer!!!" などと絶叫されることになる。また、大きくゴールをはずしたりすれば、wide of the goal となる。 試合が進めば、offside もあることだろう。これは自陣(side)から離れている(off)という意味である。反対は onside である。その他のひどい反則 (foul) を犯した選手は記録され(booked)、イエロー・カードが出されたり(yellow-carded)、レッド・カードが出されたり(red-carded)する。退場させられる(sent off)ことを to take an early bath ということもあるが、これはロッカー・ルームに1人先に戻って湯につかるということである。また、選手交代は substitution である。残り時間5分などとなれば、five minutes to go と言う。ちなみに、「ロス・タイム」は、英語で injury time と言う(正式には、additional time という言い方もあるが)。 試合結果を知るスコアは2−1であれば two one のように数字を読むだけだが、チーム名とともに読むときは Arsenal two, Everton one. のように読む。イントネーションは前半で上がり、後半で下がる。問題は0点の時であるが、これはたいてい nil と読まれる。したがって、2−0であれば、two nil となる。
勝敗表を見てみよう。上段の文字は、順に Games Played(試合数)Games Won(勝ち)Games Drawn(引き分け)Games Lost(負け)Goals For (得点)Goals Against (失点)Points(ポイント)を表している。GD とあれば、Goal Difference(得失点差)である。これに対して、FA Cup などのトーナメント戦(knockout competition)では、本拠地(home leg)と敵地(away leg)で戦うことが多いが、この2試合を two legs と言う。結果は合計点で決まるために Liverpool 4 Bolton 1 (on aggregate) などと表示してある。リーグ戦の終盤には、昇格(promotion)と降格(relegation)が常に話題となる。 昨年の Guardian Weekly には、"Underdogs have their day" という見出しが踊った。underdog を英和辞典にあるような「負け犬」としてしまうと意味が通らない。これは「弱くて、勝ち目のない人”チーム”国」を指す。前述の見出しは、勝ち目のない Southampton が Liverpool に2−0で勝ったときのものだ。もちろん "Every dog has its day." にかけている。 サッカーにまつわる歌英国でサッカーの試合を見ていてすぐに気づくことは、スタジアムで歌がどこからともなく始まり、大合唱になっていくことである。この歌は、試合の状況によって異なるのだ。観客は試合を実によく見ており、彼らの反応を見ているだけでどちらのチームが勝っているのかわかるほどだ。これは日本の J リーグや代表の試合のように、最初から最後まで同じような応援が繰り返されるのとは大きく異なっている。サッカーにまつわる歌について、いくつか紹介しておこう。まずは、代表チームの試合で歌われる歌であるが、これは国歌である "God Save the Queen" はもちろんのこと、これ以外にも"Land of Hope and Glory" や "Rule Britannia" などがある。もちろんスコットランド代表の試合となれば "Flower of Scotland" や "Scotland the Brave" となる。 各クラブ・チームの中では、Anfield スタジアムの the Kop と呼ばれる場所に陣取る Liverpool の応援団の応援と歌が最も伝統があると言われている。代表曲 "You Never Walk Alone" は、試合前には必ず歌われる。Manchester United の "Bright Side of Life" は Monty Python からの曲である。替え歌も少なくない。たとえば、イングランドの応援歌の "Stand Up if You Love England" は Petshop Boys の "Go West" の替え歌であるし、Tottenham Hotspur や Manchester United の応援歌の "Glory Glory" は "John Brown's Body"(日本では「おたまじゃくしはかえるの子」)の替え歌である。 そして、サッカーは人生サッカーは演劇や小説、人生のどこにでも登場する。日本でもプレーしたリネカーは An Evening with Gary Lineker という芝居に、ベッカムは Bend it like Beckham 「ベッカムに恋して」という映画に取り上げられている。また、Arsenal の熱狂的ファンの小説家”エッセイスト Nick Hornby による自伝的日記 Fever Pitch は、一読に値する。 英国では "You can change your wife but you cannot change your mother and your football club." ということわざがある(ただし、このバリエーションはいくつかある)。一度応援すると決めたチームは、一生応援しなければならない。そんな国民が、ワールドカップではひとつになってイングランドを応援する。2度目の優勝を目指して。 |
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