Web はライティングに役立つか?
リーディングからライティングへ
2005年8月31日
2005年8月31日
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中部大学助教授 小栗成子 Oguri Seiko 翻訳サイトへダッシュ![]() 「英語教育」2005年9月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" September 2005 Vol. 54 No. 6 (Taishukan) 確かに、翻訳サイトも使いようだ。しかし、ここでの指導目的は「翻訳サイトの効果的な活用法」ではなく、「自分の英語を磨く」ことだ。「書く」とは、自分の語彙や表現を使い、あるいは、調べた語彙や表現をそこに加えて、文を一歩一歩整えていく作業だ。自由なライティングをさせる学習効果に疑問を持ち始めた私が向かったのは、英語のまま読み、英語のままレポートしなければならないような課題作りだった。 web をリーディング素材に実社会に通用する英語を読む、となると web は教材の宝庫だ。とはいえ、大量な英字の並びに怯えた学生が、翻訳サイトに依存することは、第一に避けたい。情報が豊富で、英語が多彩であればこそ、どこで、何を学ばせようとするのか、教師自身が楽しみながら、目的を絞って課題を作ってみるのがよい。いくつかの課題を経るに従って、一歩ずつ書く量を増やしていくことはできないだろうか。リーディングからライティングへと、徐々に比重をシフトさせる課題を作り込むことはできないだろうか。【課題1】ベストセラーを探せ 書店、報道、出版社等のサイトから、ベストセラーの書籍リストを入手し、自分が読みたいと思う本を探す課題。web 上にあるリスト化された情報から、指定された情報だけを抜粋し、レポートするのが目標だ。訳して読むという習慣を断ち、スキャニング力をつけることが大きな目的である。(1)書籍名(2)著者名(3)出版社名(4)ジャンル(5)出版年月日(6)価格(7)ランキング(8)参照サイトURL。これらをスキャンした上で、簡潔な内容紹介や、この本を選んだ理由を20〜30語ずつ程度の英文で書き、添削指導を受ける。 「簡潔に書く」のは、実は難度が高い。しかし、最初に敢えてそれに挑戦するのには、理由がある。単語をやたらに並べて、「書いたつもり」に陥るのを避け、語数制限があるから語を選ぶしかない、要点だけを抜き出すしかない。そうした絞り込みの方向へ誘導することで、サイトから安易に全文を「コピペ」(copy & paste)できなくしている。ストーリー紹介では、サイト上の英語表現・語彙を参考にしながら、自分のレベルの文に仕立て直す、という書き方を学ぶ。場合によっては、実際にその本を読み、book review を書く等の課題にも発展させることができる。 【課題2】今度、何観る?(近日公開映画紹介) 映画を指定分野とし、さらに日本未公開の映画に限定して映画を紹介する課題。概して、エンタテインメント系サイトの情報は大量なので、ターゲットを絞り込んで情報収集を行えるようにする。(1)制作国名(2)ジャンル(3)タイトル(4)監督者名(5)主演俳優名(6)制作または上映開始年月日(7)年齢制限(8)参照URL 等をレポートした上で、ストーリー紹介を30〜40語程度で簡潔に書き、添削指導を受ける。1つの映画でも、1つのサイトを対象にするか、複数のサイトを見比べるかによって、学びの濃度は異なってくるし、場合によっては、複数の映画を紹介させてもよい。もちろん映画を実際に観て、レビューと自分の感想の違い等を書かせることも可能だ。 【課題3】何が一番?(世界のランキング調べ) 自由に分野を選択し、ランキングを見つける課題。自分が何かコメントできるようなものであれば、どんなランキングでもよい。ターゲットとするランキングから発見できたこと等、コメントを簡潔に書く。(1)分野(2)タイトル(3)公表機関名(4)公表年(月日)(5)参照サイト URL (6)ランキング(全部または必要部分のみ抜粋)を正しく明記した上で、コメントを40〜50語程度で簡潔に表現し、添削指導を受ける。 自分で分野を選ぶ課題では、ネット情報の渦の中に飛び込むようなものだが、たとえ漂流したとしても、それは決して無駄ではない。目に飛び込む英語は大量で、英語画面に慣れることはもちろん、「一体何が書いてあるんだろう?」と見て見ぬ振りができなくなれば成功だ。 日常生活的なものから、学術的なものまで、ランキングはどこにでもある。自分の好きな分野を選ぶことは、英語への抵抗がある場合には、緩衝材にもなる。1つのテーマについて、複数のランキングを比較させるという応用コースも可能だ。 【課題4】いってみたいな、よその国 指定項目をもとに情報を収集し、それをもとに作文して都市を紹介する課題。収集した情報を使って文章化しながら、説明に必要な基本的要素を理解する。最終的にはパラグラフ構成の基礎を学ぶのも目標だ。 この課題では、情報を箇条書きにするのではなく、文章にすることに挑戦する。地理的特徴や気候、人口、風景、観光名所等、用意された質問(例:Which city would you like to visit? Which country is it in?)に順に答える形で、メモを用意する。1文ずつ添削指導を受け、全文が整った所でそれを合体し、トピックごとにパラグラフ構成していく。 語彙単位、文単位の指導が必要な学生にも、パラグラフを書きなさいと言えば、手っ取り早く「書いたつもり」「書かせたつもり」にはなる。しかし、文もパラグラフも適当に並んでいるものに指導を入れるのは、至難の業だ。ここでは、意図的な順で部品(文)を整えさせてから、全体(パラグラフ)を構成させていくことで、パラグラフ構成に必要なことは何かを体験させている。 次のステップとして、旅行プランを詳細に立てる課題にも発展できるし、紹介した都市に居住することを想定し、家探しをさせ、物件紹介をさせるというような課題にも発展できる。またこの他にもグルメ情報、人物紹介、時事問題等、リーディングとライティングを織り込んだ課題は、無限大に展開できる。 どう伝える? どう伝わる?そろそろ自分で書き始めることをさせようとする段階でも、上記のようなリーディングから得たことを全て切り離してしまわないように注意を払いたい。受信者として学んだことを、今度は、発信者として活かしていきたい。相手に何をどう伝えるか。その方法を学ぶ課題がある。画像1枚に対して、1文(1 line)のキャプション的な文章を簡潔に書く「Photoline」。画像が9割、1文が1割の役割を持つ。画像の説明をするのではなく、画像が表していないことを言葉にするのが目標で、画像にその1文が加わることで、一層効果が増すことを目指す。 もう1つは、その逆の比率をめざす「Show & Tell」。文が9割伝えているが、1割の画像が加わることで、「伝える」インパクトを増強させる。この課題には、字数制限の目安はない。 学生が発信側になる課題では、その人にしか発信できない視点を重視したい。他の人には書けない視点に気づかせたいので、最も注意が必要なのは、テーマを決める段階だ。 とはいえ英語が苦手な学生には、計画よりとにかく書いてみるということをさせている。とりあえず未熟でも1文、1文英語で表し、書けたところまでを添削しながら、次の文を加えていく作業を繰り返し、「書く」積み上げを体験させている。準備段階で挫折を経験させるより、まず英語を組み立ててみることにチャレンジをさせたい。理想的なライティングの手順は、後から教えることもできる。 土台を築くための添削まずは中学3年間で学んだ語彙レベルを、自分のものにさせたい。自分の意図を的確に伝える。読み手に誤解を与えない文を組む。語彙を増強したり、構文に磨きをかけたりするのは、その後だ。身の丈に合わない英語を書かせていては、いつまでたっても英語が「使える」ようにはならず、つまりは頑丈な土台を備えたコミュニケーターの育成にはつながらない。ここで、添削指導の道具を選んでみよう。添削指導で軌跡を残さないのは、宝を半分捨ててしまうようなものだ。紙も保存・閲覧できればよいわけだが、インターネットは、紙よりそれが得意だ。保存しやすいだけでなく、指導や学習に、即座にも、後でも活かしていける副産物が増える。「interaction を密にできる」「足跡を記録できる」という大きなメリットの他、さらに、指導を公開すると、「人の振り見て我が振りを直す」環境を実現することもできる。Web を完成品の発表の場だけとするのは惜しい。例えば関係者だけがアクセスできる「作業の場」を web 上に作ることは、クラスにとって大変有用だ。私の場合は、先輩の添削指導の軌跡を、現学期の受講生が見に行くことができるようにしている。自分が受けている指導の先を、学生が見通すのに役立っている。 最後に、添削指導の方法について触れておきたい。実は私も、長年せっせと direct correction を与えてきた派だ。手本からきっと学んでくれるだろうと信じていた。しかし、correction の根拠を自発的に理解し、次のライティングに自主的に活かすには、かなりの学習力と英語力が必要だ。 手厚い指導を続けていればいるほど、学生は「どうせ直されるんだから、適当に書いて」という受け身姿勢にもなりかねない。 そこで昨年から、私は indirect correction の方向へシフトし、誤りの箇所と種類を、色で示す手法を試みている。誤りの箇所を示すだけでは、学生の負担が大きいので、誤りの箇所とその種類を示すことにし、修正方法を探す仕事は学生に残す、という方法だ。 web 掲示板の形式も多様だが、私が添削指導に選んでいるのはフォルダ型掲示板。各学生に個人フォルダを与え、添削指導を受けさせている。個人フォルダはいわば学生のデジタルノートということになる。学生が作文を載せると、私は修正が必要な箇所に、20色以上の“ペン”で、色塗りを始める。ラインマーカーを何色も持ち、作文に色塗りをするのに等しい。例えば「三単現の S は赤色」というように、エラーによって色があらかじめ指定されている。学生は、塗られた色からエラーの種類を判断し、修正方法を自分で調べて修正していかなければならない。たとえ20語の作文でも、完成するまでの指導の繰り返しが、掲示板に残されていく。個人フォルダ内には、各課題ごとにファイルがあり、添削指導と学習の経緯が残されている。個人フォルダ入口には、個人のエラー数のランキングが、クラス入口には、エラーのクラス集計ランキングが、リアルタイムで表示されるようにデザインされている。この手法の詳しい説明は、別の機会としたいが、統計を通じて教師も学生もエラーの傾向を瞬時に把握できる等、学習と指導に活かせる機能は見逃せない。筆者の「添削道場」の見学は下記で。 (http://dojo.lc.chubu.ac.jp/) ライティングは、語彙を整理し直したり、文法を使いながら定着させたりするのに有効だ。しかし、ライティングのためのライティングドリルを重ねるだけでは、いつまでたっても「実生活」と結びつけにくいかもしれない。web 上にある様々な「教材」で、手本となる語彙や表現のリーディングを行い、自分のライティングに反映していくことも、web を活用する方法の1つだ。 |
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