オーラル・コミュニケーションの年間計画
2005年3月31日
2005年3月31日
![]() 「英語教育」2005年4月号(大修館) → 目次はこちら → 定期購読はこちら From "The English Teachers' Magazine" April 2005 Vol. 54 No.1 (Taishukan) 後藤圭子 Goto Keiko 年度の初めに詳細な計画を立てても、実際に授業を進めていくと、頭で考えていたように進まなかったことが多かった。そもそも頭の中で立てる計画は難しくなってしまう傾向があるのかもしれない。しかしながら、年間計画を立てたからこそ実現できたことも多くあった。それなりの手ごたえも年度末に得られた結果となった。高校におけるオーラル・コミュニケーションの年間計画をどう立てて、実際とどのようなギャップがあったかを振り返りたい。また反省から学んだこと、計画を立てる上での注意すべき点などについても触れたいと思う。 科目の目標を知るまずは以下のアンケート結果を見ていただきたい。昨年度、オーラル・コミュニケーションIの授業を受けた高校1年生360人(有効回答344人)を対象に実施した英語の授業に関してのアンケート結果の一部である。
アンケートからわかるように、半数以上の生徒(約53%)が「英語を話す力」をつけたいと考えている。「英語を聞くこと」「英語を話すこと」を合わせると、7割以上になる。「話す力」「聞く力」を伸ばすことを目標とする「オーラル・コミュニケーション」の授業には、生徒たちから並々ならぬ期待が寄せられているかもしれないと思うと、いっそう計画的に授業を進め生徒たちに力をつけさせたいと思う。力が湧いてくる。年間計画を立てる上で忘れてはならないのは、その科目の目標を正しく理解することから始まるのではないだろうか。実際に1年間を終えて振り返ってみると、前もって計画したからこそ成果が得られたことと、綿密に計画したはずがうまくいかないことの両方があった。またそれらの失敗は来年度への課題として残ることになる。年間計画を立てることの意義年間計画を立てる目的は人それぞれである。(1)複数の教員で1つの科目を教えるときなどに授業進度を合わせるため。 (2)定期考査の範囲を決めるため。 (3)科目の達成目標を合わせるため。 それぞれの先生によってさまざまな理由で年間計画を立てておられるのではないかと思う。年間計画を立てることの意義は、何よりもまず科目の目標を達成させるために計画的に授業を展開していけることにある。 この仕事を始めて間もない頃は、自分の高校時代にはなかった「オーラル・コミュニケーション」という授業にただただ戸惑い、日々の仕事(授業)をこなしていくことが精一杯だった。それでもオーラル・コミュニケーションの授業には、大抵、外国人講師(ALT)がつき team teaching をしていたので、私よりも経験のある ALT に授業案から教材作り、実際の授業展開まですべてを任せきりということもしばしばだった。「年間計画」や「達成目標」「生徒につけさせたい英語力の目標」などとは無縁の2年間が過ぎた。少し余裕が出てきた3年目からは、これまでの ALT の配当がなくなり、日本人の英語教師が1人で40人クラスのオーラル・コミュニケーションの授業を担当することになった。 授業での生徒の反応、態度を見ていると、そのまま、自分が評価を受けているような気持ちになることが多くなった。授業のやり方を見直すことにし、何か教科書以外にも授業で取り上げることができる教材がないものか、生徒たちの motivation をあげることができる教材はないものかと模索を始めた。 また、年間計画を立てる必要性を感じたのは、授業を行う実情にもあった。「40人1クラスのオーラル・コミュニケーションの授業で、授業中での使用言語は極力英語のみ」この状況をどうすればよいのか考えた。40人の生徒たちをどのように授業の中でコントロールしていけばよいのか? これまで通りの教師1対生徒40の授業を続けていたのでは、効果的に生徒たちの英語の「話す力」「聞く力」を伸ばすことができないのではないかと考えた。言語とは習った表現を自分で試して、使ってみて初めて身につくものである。 生徒40人に対して教師1名では、指導にも限界がある。それでは生徒同士でのインターラクションを通してお互いに学びあえないかと考え始めた。そこで考えたのが "Free Writing Practice for Oral Communication Notebook" である。生徒は与えられた topic について free(自由)に英語で文章を綴っていく。書いたものをクラスで発表するのが最終目的だが、その前に ・peer editing"(生徒同士での校正)を行い、教師からの最低限のサポートのみで、生徒同士がお互いから学ぶことができるものである。教師の負担を軽減することに成功した activity の一例である。 また、この学年は2年生で New Zealand(以下 NZ)への修学旅行が予定されており、学年全体が海外へ行くことになっている。必要に迫られてではあるが、生徒たちの「英語を話すこと」「聞くこと」に対する関心は低くはない。また、以前 NZ へ修学旅行に行った生徒たちの声を実際に聞き、1年生のうちから英語でコミュニケーションすることの準備が必要だと感じた。実際に帰国後生徒からの感想で一番多かったのは、「ファームステイ先での経験が一番心に残っており、もっと英語を勉強していけばよかった」というものだった。 年間計画の立て方の手順と実際の年間計画(手順)1. 年間目標を決定する。そして、その目標が実現できるように様々な Activity を考えていく。 2. 年間の授業数を数える。 3. 定期考査の範囲を決める。 4. 生徒の今後の行事や進路を見据えた計画(例えば修学旅行で NZ へ行くことが決まっているので、そのための簡単な travel English を扱う授業をする、など)を考えられればより充実した計画が立てられるかもしれない。 私が作成した実際の年間計画表を見てもらうことにしよう。かなり大雑把に作られている。これは教科書以外に、授業で取り入れたいと考えた activity を全て書き込んだものである。 〈教科書以外の activity〉 ・Free Writing Practice for Oral Communication Notebook ・Listening Test (Pre- and Post) ・センター試験リスニング対策 ・NZ への修学旅行の事前指導 (NZ 紹介、travel English など) ・映画(Harry Potter)を使った授業プラン
作成にあたっては、(1)センター試験リスニング対策として、毎回リスニング小テストのようなものを行い、リスニング力を養えるようにする。また、生徒たちのリスニング力の伸びを見るため年の初めと(4月)終わり(1月頃)に同一のリスニングテストをすること。(2)修学旅行対策を入れること。(3)教師対生徒の授業に終わらず、生徒同士が学べる activity を毎回入れること。以上の3点について留意して計画を立ててみた。 実際にはどのようなギャップがあったか計画は立てたものの、実際に生徒と顔を合わせて授業を展開していくと、計画通りには進まないことがあった。
1年が終わり、授業が予定通りにいかなかった所に×印を入れると上のようになる。なぜうまくいかなかったのかを少し見ていきたいと思う。 (1) free writing を年間通じて行おうと思っていたが、前期のみで終了し、代わりに pair project(ペアで会話文(dialogue)をつくり、クラスで発表)をした。free writing の取り組みを途中で別のプランに変更したのは、毎回の授業で行うと生徒が飽きてしまうこと。また、相当注意深くトピックを選択しないかぎり、peer editing が成功しないこと。最大の理由が、 "Free Writing Practice" は、やはり、あくまで "writing" だということで、 "speaking" の範疇とは、少し焦点がずれているのではないかという指摘を受けてであった。しかし、年度末に生徒の意見を聞くと、こちらの予想に反し「難しかったが身についた」との意見が多数あり、続行してもよかったなあ、と思っている。また今年度もやってみようという気持ちになった。 (2) 行事や休日、短縮授業などで授業数の足並みが揃わずテスト範囲を決めるのに苦労する。 (3)NZ 事前指導が思うように出来なかった。(授業時間不足によるもの) 昨年の反省と年間計画を作る上でのアドバイス1.生徒の反応を見よう・生徒の声を聞こうFree Writing Practice for Oral Communication Notebook の activity が Pair Work Project に取って代わった例からも分かるように、実際に授業を進めていく上で、不都合が出てきたり、変更を余儀なくされたりということは、ある程度仕方がないかもしれない。授業で直接生徒たちの反応を見ることができるのは、現場で働く教師の強みだと言える。授業ごとに生徒たちの反応を見、発せられる言葉を聞いて、そこから年間計画の修正、変更をしていくのが良いのではないか。 2.失敗から学んだことを次年度に活かそう 計画の修正は生徒の反応や課題への取り組み方を観察して随時行うようにする。常に気づいたことをメモし次年度に生かせるようにすること。 (例えば、free writing で、生徒のよくある間違いや、分からない単語など) 上記2点が大枠のポイントだが、細かいアドバイスとしては、 ・あまり細かく計画を立てないこと 後から生徒の実態に合わせられるよう、少し余裕を持ったプランを立てて、逆に時間があまったときのプランを用意するほうが有効かもしれない。 ・年間を通しての目標を持つこと 年間変わらないもの、例えば学習指導要領の目標などでも構わない。私の場合は(1)楽しく授業をする(2)1時間の授業を受けて生徒が何かを得て(学んで)教室から出て行くこと(3)英語を使うことに対する「壁」affective filter を少しでも低くし、生徒の心理的負担を軽くすること(クラスの雰囲気作り)(4)生徒が「分かる」授業をする(5)生徒の知的好奇心を刺激するような授業案を考える(6)少しでも英語を「話す」「聞く」ことの楽しさを味わわせる、である。 ・目標は必ず書いておいて時々確認すること そうするだけでも効果があると思う。目標を目で確認することで、その目標を決めたときのことを思い出し、目標を見失わずにすむ。 ・1時間の授業での目標は1つにする アメリカの大学で TESOL を学んでいたときは、よく先生から "For one class, just one objective!" 欲張らないようにと教えられた。 まとめ年間計画は立てるに越したことはない。また計画通りに進まないからといってイライラする必要はないと思うし、それに縛られる必要もない。生徒の実態に合わせてどんどん better plan に変えてゆけばよい。ただし最低限、年間目標は見失わないようにしなければならない。 書き込み式の用紙(Form のようなもの)を用意しておけば、手軽に書き込んでおける。一度考えてみるのとみないのでは、1年後に大きな違いが出るのではないか。1年を終えた後で、自らの取り組みの反省材料にもなる。生徒たちにとって貴重な高校生活の1年を、教師にとってもまた貴重なそれになるようになればと思う。最後に私の改訂版年間計画表を紹介しておく。
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「英語教育」2005年4月号 |
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大修館よりオススメの新刊 |
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第1章 国際英語と日本の英語教育 第2章 英語教授法概説 第3章 e-learning と4技能 第4章 発音指導の基本点と留意点 第5章 リスニングとその指導法 第6章 教師のための学習英文法 第7章 授業実践 第8章 測定・評価から評定・通知まで 第9章 早期英語教育の現状と課題 第10章 これからの英語教師論 第11章 英語教師の本棚──英語研究・教材研究の文献案内 索 引 →大修館書店ホームページ「燕館」はこちら |
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