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英語教育エッセイ

国内外で活躍する英語教育業界関係者によるエッセイコーナー

安くて楽しく簡単な最新英語学習法

2004年8月01日


愛知淑徳大学教授
松本青也
Matsumoto Seiya


英語の使い手になるには、英語を使わなければならない。使っていれば使えるようになるし、使っていなければいつまでたっても使えるようにならない。簡単な話である。今までの日本人が英語下手だったのは、受験勉強以外に、英語を使う機会も必要もなかったからだ。ところが、ICT (Information and Communication Technology) の著しい進展や経済活動の急速なグローバル化で、状況は一変した。今や英語を使う機会はいくらでもあるし、実際に英語を使う必要も出てきた。英語教師も、英語の解説者であればよかった時代は終わり、英語の使い手であることが求められようになってきた。
 
今月の特集は、英語の使い手になるために、安く、楽しく、簡単に英語を学習する方法を紹介しようとするものである。「安く」といえば、今や日本は世界で最もブロードバンド料金が安い国になった。インターネットに常時接続してあれば、無限ともいえるサイトの中から、自分の興味・関心に合うものを選んで「楽しく」「簡単に」英語を使うことができる。本稿では、主にこの新しいメディアを使うことでどのような学習方法が可能になったのかを、InputとOutputに分けて見ていくことにする。
英語教育の最新版
「英語教育」2004年8月号(大修館)
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From "The English Teachers' Magazine" August 2004 Vol. 53 No.5 (Taishukan)

INPUT

何はともあれ、毎日一定量以上の英語を読んだり聞いたりする必要があるが、まずはReadingの習慣をつけるために、ブラウザのホームページに毎日刻々と内容が変わるサイトを設定しておくといい。世界のニュースなら、おなじみのCNN(=Cable News Network)、ビデオが豊富なCBS News、ヨーロッパ重視のBBC News、多様な意見を掲載するバランス感覚で定評のあるThe New York Times、あるいはいろいろな放送局や新聞社からのニュースを集約したGoogle Newsなどがある。日本のニュースならThe Japan Times Onlineasahi.comMainichi Daily News、あるいは主に海外で報道されている日本の記事を集めたNewsOnJapan.comなどがある。ちょうど日本語の新聞を読むように、見出しをざっと眺めて興味を引くものをクリックし、毎日いくつかの記事を必ず読む癖をつければ、読解力は確実に向上する。
 
また、定期的に届く無料メールマガジン(略称メルマガ)を読む習慣をつけるのもいい。メルマガといえば何といってもまぐまぐだ。2004年5月現在で、のべ読者数2千6百万人、登録マガジン数2万8千件、英語に関係するものだけでも約1,000件という大規模なサービスを提供している。ニュースを扱うもので、高校生以上にも薦められるメルマガとしては、毎日主にアメリカの新聞からニュース記事の数行を選んで詳しい解説をつけて送ってくれる毎日1分!英字新聞、週2回、世界日報社がワシントン・タイムズの社説やニュースを対訳で提供してくれる対訳 THE WASHINGTON TIMES、英字新聞社や通信社出身者を中心とした執筆陣が週刊で2パラグラフのニュースを、本文、キーワードと翻訳のツボ付き本文、翻訳文、再度本文という4ステップ方式で解説する2パラグラフで英字新聞を読もう!などがある。
 
英語では、メルマガのことを“e-mail newsletter”と呼ぶことが多いが、英語版の無料メルマガを取りたければTopicaなどで、面白そうなものを見つけて登録し、届いたメールを必ず読むようにするといい。ニュースではなく、教材にも使える、何か身近な話というのなら、日本でもよく知られたChicken Soup for the Soulシリーズの著者が出しているChicken Soup for the Soul: Home Deliveryに登録すれば、心を明るくしてくれる話が毎日メールボックスに届く。
 
まとまった時間があるときに文学作品でも読んでみたくなれば、Project Gutenbergがお薦め。ここはネット上で無料電子書籍を提供する、いわば老舗サイトで、著作権がなくなったアメリカの文学作品を中心に、漱石の「坊ちゃん」まで1万点以上がダウンロードできる。Bartleby.com Great Books Onlineには、VerseやFiction以外にも、大統領演説などのNonfictionや、役立つオンライン辞書やReferenceも数多く含まれていて便利に利用できる。
 
英語教師対象のウェブ・ジャーナルが読みたければ、月刊誌The Internet TESL Journalが最適である。研究論文からレッスン・プラン、クイズまで膨大な量の役立つ情報が満載されている。
 
ウェブページやメールの英語を読む際に、分からない単語を調べるには、パソコン上ですぐに使える辞書が一番便利である。無料のものとしては、和英・英和なら英辞郎on the Webや更に音声と国語辞典まで付いたgoo辞書などがあるが、いずれも入力の手間が要る。もっと簡単に、しかも英英でとなると、有料の英英辞典ソフトをインストールして、クリックだけで済むようにするのが一番だ。そこでお薦めしたいのが、第4版で画期的に改善されたLongman Dictionary of Contemporary English(CD-ROM 付き。実売価格3,500円程度)である。特に CD-ROM には、辞書には収録されていない約7万の例文に加えて、Longman Corpus Networkから採用した約100万の例文がExamples Bankとして入っている。単語をクリックしてCTRLキーを押すだけで意味が現れ、イギリス英語、アメリカ英語の標準的な発音が聞け、更に自分の発音を録音してモデルと聞き比べることもできる。その上、Grammar、 Vocabulary、 Culture、 Dictation、 Exam Practiceの5つのジャンルで豊富な自主学習用の練習問題まで付いている。
 
Listeningの力も、結局は時間次第、とにかく毎日聞くことである。ただし学習という点では、分からない部分をそのまま聞き流すよりも、トランスクリプトで確認できた方がすっきりするし、効率的でもある。テレビ番組やビデオ、DVD などで学習するいろいろな方法については、この特集の他のところで詳しく紹介されているので、ここではあまり知られていないサイトを紹介したい。
 
日本のニュースならNHK World Daily Newsが文字、音声、画像で楽しめる。アメリカの非営利放送団体が運営するOnline NewsHour: NewsHour Indexには、この一週間の放送から選び抜かれた番組と、Background Reportsとして40ほどのテーマごとに数年前からの番組が音声付で集められていて貴重である。
 
ニュース以外なら、U.S. Department of Educationでアメリカ教育省長官の重要な演説を中心に、教育問題についての報告などをキャプション付きで聞くことができるし、World Poetry Audio Libraryで、英詩の名作を読みながら朗読を聞くこともできる。

OUTPUT

日本人のように生活で英語を使わない学習者の特徴のひとつが、Inputのレベルと比べてOutputのレベルが極めて低いことである。最大の原因は、Inputされた情報が長期記憶の回路に入る前に「なるほど、…なんだ」と、すっかり日本語になってしまうので、日本語の記憶しか残らず、後になってそのことを英語で言おうにも、全く英語が思い出せないことである。対策はただひとつ、Inputされた情報をすぐにOutputしてみることだ。幸い今ではOutputにいくらでも英語を使うことができる。気楽にやり取りできる英語版メル友や、お喋りを楽しめる英語版チャット仲間を何人か作っておけば、Inputしたばかりの英語情報をそのまま忘れないうちに話題としてOutputに使うことができる。
 
Writingを習慣化できるメル友は、登録者数を誇るPenpal.Netとか、日本について興味を持っている外国人と日本人の橋渡しをしようとするJapanese pen palなどで無料登録すれば、性別、年齢、国などを選んで簡単に見つけることができる。もし返事が来なければ、それはこちらの内容が面白くないからで、返事が来るような内容を工夫するのも楽しい勉強になる。
 
やはり気心の知れた同業者を相手にしたいというのなら、100か国以上の2万人を超える英語教師が参加しているTESL-Lのメーリングリストに登録するといい。世界中から毎日数通はメールが入るようになるので世界の英語教育の現状が手に取るように分かるし、フォルダにためておいてキーワード検索をすれば、その話題について書かれたメールだけを再読できるので、絶好の表現集としても使える。こちらから問いかければ即座に世界中の教師からの反応も得られるので、いいことずくめだ。
 
英語を使うプロジェクトに参加することで、自然に英語を使うようにする方法もある。例えば約100か国15,000以上の学校が参加しているiEARN(International Education and Resource Network)などに加入して外国の学校と共同でプロジェクトを始めれば、否が応でも頻繁に英語でやり取りをすることになる。
 
しかし何といっても、インターネットの恩恵を一番感じるのは、Speakingを楽しむときである。1,500円位のマイクか4,000~10,000円程度のカメラを用意して Yahoo! MessengerPalTalkなどからソフトをダウンロードするだけで、会話学校に行けば年間何十万円もかかるような英会話が無料で何時間でも楽しめる。どちらも最近機能が向上して、ボイスチャットでもビデオチャットでもお好み次第、世界中の人たちと快適におしゃべりが楽しめる。喋ってみて、いろいろな日常表現やテーマ特有の表現を知らないことに気づいたら、英語表現事典などでおさらいをするといい。よく使う表現を豊富に集めてあって貴重だ。
 
英語の使い手になるには、ともかく英語を毎日使うこと。それにつきる。

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