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英語教育エッセイ

国内外で活躍する英語教育業界関係者によるエッセイコーナー

CALLを英語指導の中心に据えて

2004年7月01日


千葉大学教授
高橋秀夫
Takahashi Hideo


大学へのCALL施設の導入が急速に進んでいる。ところがその一方で導入されたCALL施設をいかに効果的に活用するかについて苦慮している大学も多いという。千葉大学外国語センター(現国際教育開発センター)では平成6年度センター設立時より、千葉大学自然科学研究科、教育学研究科の協力を得て、独自教材の開発、およびCALLを授業の中心に据えた英語指導を精力的に行ってきた。本稿では平成15年度を例に、千葉大学における CALL の実践について報告したい。
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From "The English Teachers' Magazine" July2004 Vol. 53 No.4 (Taishukan)

CALL英語とは

「CALL 英語」科目は学習者の多様なニーズに応えるため、センター設立時に新たに英語科目のひとつとして設定された選択必修科目である。当初パソコン20台、クラス数1、履修者数20名で開始したCALL英語は平成15年度現在で、CALL教室1室(60台)、CALL自習室2室(120台)、開講クラス数36、履修者数1,871名にまで拡張された。計180台のパソコンはLANで接続せず、スタンドアロンとして使用している。

表1には平成15年度後期のCALL英語の時間割を示した。1年次用科目は週2回授業があり(半期2単位)、2年次用(含む2年次以上)科目は週1回半期1単位の設定となっている。指導にあたった教員は専任3名、非常勤講師1名であった。1)


表1 平成15年度後期 CALL英語時間割
 
  1年a 1年b    
1年c 1年d 1年e 2年  
  1年c 1年b 2年 1年f
2年   2年 1年e  
1年f 1年d 2年 1年a  


CALL教材

CALL英語で使用する教材は大きく分けて、聴解力養成用教材と語彙力養成用教材の2種である。前者は平成10年から平成15年度、竹蓋幸生千葉大学名誉教授(文京学院大学教授)の指導のもと、メディア教育開発センター(NIME)の委託研究、文部科学省科学研究費補助金等の助成による研究2)等を通して開発された英語CD-ROM CALL教材(Listen to Me!シリーズ)12種(次頁表2)である。英語聴解力の養成を通して英語を使った総合的コミュニケーション能力を高めることを目指した教材で、カリフォルニア大学、アラバマ大学、コロラド大学で取材した講義、教職員、学生に対するインタビュー、それに映画やテレビニュース等、大学生学習者の興味を考慮した素材を扱っている。


表2 Listen to Me!シリーズの内容とレベル
名 称 レベル(TOEIC) 制作
First Listening
初級 (380)
千葉大
New York Live
初中級 (450)
千葉大
Intr. to College Life
中級 (520)
千葉大
English for Science 1
中級 (520)
NIME
College Life
中上級 (590)
千葉大
English for Science 2
中上級 (590)
NIME
Medical English
中上級 (590)
NIME
College Life II
上級 (660)
千葉大
College Lectures
上級 (660)
NIME
People Talk
上級 (660)
NIME
TV - News
上級 (660)
NIME
Movie Time 1 & 2
上級 (660)
NIME


これらの教材はすべて3ラウンド・システム(竹蓋、1997)と呼ばれる指導理論に沿って開発された。紙面数の制約上3ラウンド・システムについての詳細な説明は避けるが、ノイズを含む自然な音声英語を使用しながら、学習成立に必要な情報を厳密に定義し、必要な場面で必要な量を与えることにより、学習者が自ら問題解決作業をしながらその内容を理解することを可能にした指導法である。1教材あたり30~40時間の学習時間を想定しており、週1回授業の2年次用クラスでは半期で1教材を、週2回の1年次用クラスでは2教材を使用する。第1週に行われるプレースメントテストの結果をもとに平成15年度は、初級(First Listening)、中級(Introduction to College Life、図1)、中上級(College Life)、上級(College Life II)を割り当てて使用した。週2回のクラスでは前半でこれらの教材を学習させ、後半はひとつずつ難易度を上げた教材を使用した。他の教材は指定教材以外にも進んで学習したい学生、授業は履修していないが単位と無関係に自習を希望する学生(年間約400名)に利用されている。

CALL英語で使用するもうひとつの教材は、教育学研究科で開発された語彙指導用コースウェア(竹蓋、1999)を外国語センターでソフトウェア化した語彙力養成用教材(ビジネス英語2種、学術英語2種、図2)である。各教材とも語彙140語を音声、および280の用例とともに学習するためのもので、学習しやすいように1セット10語からなる14セットに分類されている。この他にも米国大学新聞の特徴語を抽出した教材が4種整備されている。平成15年度は学習者のレベル、1年2年の区別なく、前期にビジネス英語1を、後期にビジネス英語2を使用した。


図1 College Lifeメニュー画面
図2 語彙力養成用教材画面例


指導形態

ある調査によればアメリカ人は高校を卒業するまでに50,000時間英語を耳にしているのに対し、日本人はわずかその50分の1だという。この差は決定的で、仮にCALLによる指導が効果的であったとしても、授業時間だけ学習していたのでは社会が求めている英語力(TOEIC 730点、TOEFL PBT 550点)に到達することは到底不可能である。千葉大学ではCALLを外国語学習における時間不足に対処するための最も効果的な手段と位置づけ、CALLによる学習は授業に加え、学生が空き時間を利用して自習することを基本とし、週最低1回の自習を義務づけている。このため自習室を月曜1限から金曜5限まで開放し、いつでも学習ができる環境の提供に努めている。1週間のCALL教室、自習室の延べ利用者数は約1,500名である。

一方授業の役割としては、まず学習が適切に行われているかを確認する小テストの実施があげられる。CALLにより学習者のレベル、ペースにあった学習が可能になったとは言っても、学習の進度、理解度を短いスパンで確認し、フィードバックを与えることは不可欠である。平成15年度後期の2年次用クラスの指導日程表を表3に示した。聴解力養成用教材については内容理解の上で重要な単語や表現の理解度、書き取り、内容聞き取り力等を測る14問からなる進度テストを3週間おきに実施した。学生はこの日程に合わせて勉強をするため、理解度の確認だけでなく、進度の調整を行うという大きな役割も持つ。学生のレベルに応じ4~5種類の教材が同時に使用されているため、1授業時間中での小テストの実施は難しい。そこで学生の使用教材に合わせ必要なテスト問題を自動的に提示し、テストを実施するシステムも独自に開発した。語彙学習については、語彙や表現を聞いて意味を答える、意味から英語表現を答える等のテストを作成し、口頭でほぼ毎週実施した。

どんなに高い効率の教材を長時間使用したとしても、学生への動機づけが適切に行われない限り高い効果は望めない。そこで授業ではCALL教材による学習以外に、授業の30分ほどの時間を使って、授業担当者ごとに工夫を凝らし、動機づけを高めるための指導を実践している。表3には一例として筆者の授業内容を示した。表にあげた以外に学習の中心となるCALL教材の自己学習があり、きわめて密度の濃い指導計画だと考える。


表3 平成15年度後期指導日程表例(2年次用)
回数 進度テスト 語彙テスト 授業内容
01     Placement Test
02     ガイダンス
03   Set 1,2 学習開始
04   Set 3,4 音の変化
05   Set 5,6 意思疎通の失敗例
06 Unit 1   発音の地域差
07   Set 1-6 ユーモアのセンス
08   Set 7,8 米国大学キャンパス
09 Unit 2   発想の違い
10   Set 9,10 ジョークと笑い
11   Set 11,12 学習理論
12 Unit 3   文化と習慣
13   Set 13,14 TV コマーシャル
14   Set 7-14 実力テスト
15 Unit 4   アンケート

学生によるアンケート評価

平成15年度CALL英語を履修した全学生に対して行ったアンケート調査結果の一部を表4に示した。多くの学習量、小テストを課したにもかかわらず、「別の教材でも学習したい」「この授業を取ってよかった」と評価されているのは我々にとって喜びである。TOEICのスコアで観察した教育効果測定結果については別の機会に報告したい。


表4 教材、授業に対する5段階評定結果(中央値)


何のためのCALLか

財政の緊縮が叫ばれ、非常勤講師コマ数が減少すると言われている中、CALLをその人減らしの解決策にしようとする動きや、英語教師の負担を軽減するためにCALLを導入しようとする動きがあるのは残念である。CALLは学習者の外国語能力を高めるために力を発揮するもので、大学の経営や教師の負担を軽減するためのものではない。教材の開発、カリキュラムの開発、動機づけのための工夫、テストの開発、適切な評価等、CALLの実践には時間、労力、工夫を要する。それを怠れば学生からは見捨てられる。彼らの目は厳しい。彼らは教わるプロである。筆者は教育の成果を「学習量=効率×時間×やる気」と捉える。高い効率を提供するのが指導法、教材で、時間不足を補ってくれるのがCALLである。学習者のやる気をコントロールするのは教師の役割である。「やる気」は学習者のやる気でもあり、教師のやる気でもある。


【参考文献】
竹蓋幸生(1997)『英語教育の科学』アルク、東京/竹蓋順子(1999)「コミュニケーション能力の養成に寄与する語彙指導」、Language Laboratory、 36: 97-116

【注】
1) CALL の実践にあたっては、千葉大学名誉教授竹蓋幸生先生、文京学院大学草ヶ谷順子氏、本学教員椎名紀久子氏、土肥充氏、本学非常勤講師竹蓋勝子氏、中條清美氏、本学非常勤職員板谷澄子氏、倉重良子氏、宮重保江氏に心より感謝したい。
2) 特定領域研究(A)「高等教育改革に資するマルチメディアの高度利用に関する研究」(領域代表者:坂元昂)計画研究(カ)「外国語CALL教材の高度化の研究」(研究代表者:竹蓋幸生)


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