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グローバル人材に求められるスキル - コラム

世界を舞台に活躍する際に求められるスキル・思考法などについて解説していきます。

このコラムについて

コラム

2009年06月24日

私自身、帰国子女で1977年〜1984年までアメリカで過ごしました。アメリカでは現地校に通っていた為、帰国時(小学6年生)はほぼアメリカ人といってよく、日本社会に入るのに苦労しました。よく帰国子女で羨ましいといわれいますが、私からすると羨ましいこと等何一つなく、目立たないよう、英語を話せることは隠すことをはじめ、ひたすら完璧な日本人になろうと努力していました。しかしそんな努力も空しく、すぐに見破られ、周りからは「彼は日本人ではないから」と言われ傷ついた経験は幾度となくありました。かといってアメリカ人になれるわけではなく、中途半端に2つの文化を彷徨っている感覚でずっと過ごしてきました。

社会人デビューは何故かもっとも保守的な大手都市銀行を選び、約4年間金融の現場で働きました。その後、銀行員→ベンチャー企業→MBA留学→起業というキャリアを積み、その過程で国際ビジネスの舞台で活躍する際、コミュニケーションで苦労する数多くの日本人ビジネスパーソンを目撃し、何とか手助けしたいという思いを強めていきました。今回、竹村編集長により国際ビジネスの現場に近い話題のコラムを書いて欲しいと依頼され、私の経験で役に立つことがあるのであればと喜んで引き受けいたしました。英語教育関係者が大部分の読者の中で私が提供できる価値は「国際ビジネス現場で何が起こっているのか」「その中で求められている人材とはどのようなスキル・思考法を持った者なのか」を伝えていくことにあると思います。

「英語力をどう身につけていくか」というハードの部分は教育現場で活躍される他のコラムニストの方々にお任せし、私自身はその培った英語力を使ってどのように国際ビジネスの現場で役立てるか、そのマインドセットを含めたソフトの部分について書いていきたいと思っています。



No.1: 「相手の気持ちを大切にする」VS「議題の理解を大切にする」

コラム

第一回目は私自身が感じる日本人と欧米人のコミュニケーション方法の違いについて書いていきたいと思います。

普段我々が日本語を使って、コミュニケーションを図る際、『6−7割の理解力』で話を聞いているように感じられます。分からないところは一度は聞き返せても、二度目はなかなか聞けない。説明をする側もメッセージがきちんと伝わったか知りたいが、そんなことを聞いて理解できていなかったら恥をかかせてしまう。聞き手も途中で遮るのは失礼ではないか、場違いな質問をして恥をかきたくないと思ってしまう。このため説明する側は一気に説明をし、聞く側は黙って聞くようにします。つまり「話し相手を不快にしてはならない」ことが「メッセージがきちんと伝わったかどうか」より重要になっています。そもそも共通の価値観の上で話していますので6−7割の理解力でやっていけること(分からないことは後で調べることができること)がその背景にあるかもしれません。

対して欧米人は「メッセージをきちんと伝わったかどうか」をコミュニケーションの第一目標と考えます。聞き手は話し手の話を理解しないと失礼だと感じます。だから何度でも分からなくなった瞬間に聞く。説明する側も目的は自分の伝えたいメッセージを100%伝えることなので、相手がどの程度理解しているのか、どこが分からないのかをその場で知りたい。よってコミュニケーションを図る際、聞き手も相手のメッセージを引き出すという大きな責任を担っています。

こう考えると日本の対話スタイルを会って話すという文字通り『会話』、欧米の対話スタイルを双方向を連想させる『コミュニケーション』という理由がなんとなく理解できます。会話はどちらかといえば相手の気持ちを大事にする、コミュニケーションは内容をきちんと理解することが大切になることになります。

私は日本語を使っているときは出来る限り黙って聞くようにします。途中で遮って質問をしようとすると「まあ最後まで聞けよ」と言われ、相手に不愉快な気分にさせる可能性が高いからです。そうなると会話相手失格となります。対して英語を使うときは何が何でも話題に喰らいついていこうとします。喰らいついていく姿勢を見せなければ相手を不安にさせるからです。同じように不安にさせるとコミュニケーション相手として失格となります。つまり英語を話す時と日本語を話す時にその会話・コミュニケーション方法において2重人格を演じているのです。

英語を使っているときは内容を理解することに集中しなければなりません。100%話題に喰らいついてく。これが礼儀になります。そうする為にはどんなことでもしなければなりません。欧米人ですら疑問点(例え単語でも)が出てきたら"What does X mean?"とすぐその場で確認します。我々日本人が同じ状況に遭遇した時、「相手の気持ちを大切にする」あまり一生懸命その意味を「察し」て理解しようにも分かるはずがありません。しかし多くの方々は理解できないのは自分の英語力不足だと思い、流してしまいます。そして流した瞬間、話についていけなくなります。つまり議題に100%食らいついていく、「分からないことを分からないとその場で言う」このコミュニケーション方法で英語を使用しないと、永遠に現場で通用する英語力を身につけることができないのです。これを書くと、「それは言うは易しだけど…」とかなかなか実践してもらえません。でもこれが出来るようになると急速にコミュニケーション能力があがります。考えることは一点のみ、とにかく初めから終わりまで話題に喰らいついていったか。きちんと相手のメッセージを理解できたか。相手はちゃんとあなたが話の内容を理解したことを喜びます。間違っても「この人、頭が悪いんじゃないの?」なんて決して思わないでしょう。

最近、『欧米流ミーティング・Discussionでの貢献法』等のセミナーを行っていますが、そこで「英会話はもう卒業しましょう」とあえて言うようにしています。それは英会話とは英語を日本式コミュニケーション方法(『会話』)で使用しているようにしか感じられないからです。英語を使用する時は『とにかく話題に喰らいついていく』、日本語を使うときは『相手の気持ちを大事にする』この2つをきちんと使い分けられる人を私は日本でも世界でも尊敬される真のグローバル人材であると思います。



No.2: 常識・非常識の線引き

コラム

2009年07月30日

恥をさらすようですが、先日入院している知り合いのお見舞いに行った時の話。

知り合い:「ここはマンショウ(満床)らしいよ。」
私:   「マンショウって何?」
知り合い:「え~、そんなことも知らないの(笑)?これだから外国人は困るね。」

こうしたことは、私にはよく起きます。言われ易いキャラクターということはもちろんありますが、昔からとにかく分からないことはあまり深く考えず聞いてしまう。もちろん私だって恥ずかしい思いは出来ればしたくありません。しかし帰国子女の私には一般的な日本人として「何を知っていなければならず、何は知らなくても良いか」、つまり常識と非常識の線引きが分からないのです。今ではこのように言われても気にならないようになりましたが、MBA留学するまでは外国人呼ばわりされるのが嫌で嫌でたまりませんでした。聞くのを控えていた時期もありました。

この常識の線引きについては、多くの日本人は直感的に分かるといいます。本当にみんなの常識が一致しているかどうかはさておき、この「何を知っていなければならず、何は知らなくても良いか」という考え方自体が英語を使う際、大きな問題となります。この「常識を共有する」という考え方はいつしか「知らないこと=恥ずかしいこと」に発展してしまい、さらに「聞くこと=恥すべきこと」に行き着いてしまうところに根の深さがあるように感じます。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という諺がありますが、日本では「聞くは一時の恥...のみならず一生の恥」の方が近いでしょう。先日も学生時代の仲間内で集まった時、「大塚は千葉県の場所も知らなかったんだよ。」と二十年近く経った話を今でも持ち出されることからもこれは間違いありません。そう言われ続けると怖くて何も聞けなくなってしまいます。本当に常識が共有されていれば問題はありませんが、この常識の線引きが人によって微妙にずれていることが、問題をさらに複雑にするように見えます。

私がグローバル人材の育成に関わる時、まずこうしたマインドをリセットすることからはじめます。私見ですが、多くの日本人が英語を使って話す際、まず世界の常識とは何か考え、その線引きを日本国内での常識と照らし、勝手に引いてしまう。または、その線引きが分からないので「聞く=恥ずかしいこと」のマインドセットのまま臨んでしまう。どちらにしても結局主張する以前に話の内容が理解できないまま終えてしまう。必要最低限の英語力も知識も教養も十分に持っているのにこうしたマインドを持っていない為に不幸が起きてしまうのです。私の「日本人は英語を日本式コミュニケーション方法で使用している」という仮説はまさにここから来ています。

しかし国際言語である英語は共通の価値観や常識というプラットフォームがない為に、「聞く」ということは「恥」ではなく「基本」になります。英語は世界中で使われていますが、シングリッシュ(シンガポール人の使う英語)、フィリピン英語、香港英語、白人英語、黒人英語、ヒスパニック英語など、使う民族の間で独自の進化を遂げています。よって常識等全くなく、聞かないと理解できるはずないのです。だからネイティブ同士の話を聞いていても認識をすりあわせる確認作業は頻繁に行われます。

こう考えると我々のコミュニケーション方法がいかに高度なものであるか分かります。前回のエッセーで書きました我々は無意識のうちに「相手に不快感を与えていないか」や今回の「これは聞いてもいいのか、あとで自分で調べたほうがいいのか」まで考えているわけですから。このエッセーは英語の教育関係者が主に読まれていると聞きます。「英語の授業は英語で行うのが基本」という高校の学習指導要領の改定はチャンスかもしれません。英語で教えたほうがマインドは切り替えやすいと思います。是非深く考えずにすぐに聞くマインド・習慣を生徒に植えつけてあげてください。これは世界を舞台に活躍する人材にはなくてはならないマインドです。もちろん日本語を使うときはダメですよ。それは身をもって保証します(笑)。



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