コラム・エッセイ View All Columns

グローバル人材に求められるスキル

世界を舞台に活躍する際に求められるスキル・思考法などについて解説していきます。

No.15 二重人格を演じる

コラム

2010年12月17日

dual_personality.jpg
"...a language is not just a body of vocabulary or a set of grammatical rules. A language is a flash of the human spirit. It's a vehicle through which the soul of each particular culture comes into the material world."
--Wade Davis (人類学者)

どうも私の周りに竹中平蔵さんが嫌いな人が多い。しかし周りの外国人に聞いてみると、彼を悪くいう人は少ない。日本について書かれた海外の新聞や雑誌の記事には彼のコメントがよく引用されています。

「あいつ、何なんだ。欧米人かぶれしやがって。」こう言われる人を良く見かけます。私も一部の人にきっと言われているに違いません。特に帰国子女や国外でMBAなど留学された方や、外資系企業に勤め始めた方がこうして言われるケースが多いように感じます。12歳で帰国し、「彼は外人だから」といわれるのが嫌で嫌でたまらず、一生懸命日本社会に溶け込もうと努力してきた私としてはこれを聞く度に心が痛みます。

中学1年生の時は帰国子女しかいないクラスにいたので気になりませんでしたが、中学2年以降、常に日本社会に入っていけない疎外感を感じていました。高校時代は帰国子女であることを隠そうとしていました。当然英語の授業では発音を日本人訛りに変える。正直16歳から留学する28歳までまともに英語を話した記憶がない。

そういうと「嫌味な奴」とか「何で?帰国子女とは羨ましいのに」と言われますが、そういう人達は子供の残酷さをまるで分かっていない。「出る杭は打たれる」、これは大人の世界より子供同士の世界の方が遥かに厳しい。大人は所属する組織(会社)を辞めることができます。対して子供には逃げ場がない。変に目立たぬよう、細心の注意を払って過ごしてきました(周りにはそうはみえてなかったようですが・笑)。これは何も私だけではなく、私の周りにいた多くの帰国子女も同じように何とか日本社会に溶け込もうと必死でした。

だからこそ、大人になって留学や海外赴任などをして、すっかり海外で学んだやり方、身につけたマインドのまま日本社会で突っ走ろうとする人や「だから日本人はダメなんだ」と日本人を見下す態度を取る人を見ると、非常に残念に思ってしまいます。「うまくバランスとろうよ」と。

冒頭の引用。これはWade Davisという人類学者がTED Conferenceで語った言葉で、いつも通り、スーパー意訳しますと、「言語というのは単純に語彙や文法の集合体ではない。言語とはそれを使用する民族の精神・文化(・価値観の全て)を表す鏡である」と。この彼の言葉に大きなInspirationを感じます。

最近講演やセミナーでグローバル・コミュニケーションについて話す機会が増えてきましたが、常に「日本用と英語用の顔を両方持つべき」といっています。これはどちらが正しいとか間違っているとか言っているのではなく、「言語が民族の精神・文化を映し出す鏡」である以上、使用する言語の「精神・文化・価値観」をしっかり理解した上でマインドを切り替えて使わないといけません。

「自分達の精神・文化・価値観」をベースに他言語を、又は自言語を「他言語の精神・文化・価値観」をベースに使用すると大火傷します。これだけは身を持って体験しましたので自信を持って言えます(笑)。



« No.14 教育と雇用の深刻な関係 | Main | No.16 不確実な時代に安定を求める »

コメント

大変興味深いテーマです。言語とアイデンテティの関係。
大塚さんのおっしゃることは、よくわかります。言語と文化は切り離せない。文化は日本のままで、言語だけ英語というのは無理。
一方で先日参加した英語関係の集まりで「60年以上日本古来の『男は黙って……』という教育を受け続けてきた私が、英語を話す時だけ『多弁になれ』と言われても……」という意見がありました。例えば私の父は私の十倍以上英語の語彙がありますが、外国人を前にしてもあまり英語を話しません。日本語でもほとんど話さない人だからです。
無口であることが彼の個性の一部であり、文化の一部である状況下で、「英語を話す時だけ別人になれ」ということが可能なのか、それは必要なことなのか。人は本当に二重(あるいは多重)人格を演じられるのか。
例えば「子供に英語を習わせるな」という意見をもつ人の一部は、その根底に「自分の文化が外国語によって浸食されるような恐怖感」を感じているように思います。
外国語を勉強しつつ、いかに自分のアイデンティティを確立していくか。自分でもまだ答えが見い出せませんが、考え続けていきたいと思っています。そして、「このテーマを母語の異なる人と語ろうとすると、結局外国語を用いるしかない」というのもまた、皮肉な、というか面白い状況です。

高梨様

深いコメントありがとうございます。確かにいきなり人格そのものを変えろといわれてもそれは無理があります。ちょっと突っ込みすぎました(笑)。

私がいいたかったのが「コミュニケーションの取り方を変えよう」ということです。100%ちゃんと話の内容を理解しているのであれば別に無口でも構わないと思います。ただ理解しているよというアピールはしなければなりませんが。。。

ただ、日本人が日本語で話す場合、内容が分からなくても「聞いたら相手に失礼に当たるのではないか?」「分かっていないのは自分だけ?バカに思われるのではないか?」というマインドを英語を話しているときに持ち込むとあらぬ誤解を生み、円滑なコミュニケーションを阻害してしまいます。「日本人が考えていることはいまいちよく分からない」という外国人や「それくらい分かれよ」という日本人が出てきたりして、それはお互い損をしている状況がいま本当によく見かけます。

そういった意味で、無口の人が多弁になる必要はありませんが、少なくともグローバルコミュニケーションにおいては「知ったかぶりをしない」「分からなかったらどこが分からないかちゃんと意思表示をする」というコミュニケーションの基礎をやらなければいけない。これは切に感じます!

> 外国語を勉強しつつ、いかに自分のアイデンティティ
> を確立していくか。自分でもまだ答えが見い出せませんが、
> 考え続けていきたいと思っています。そして、「このテーマを
> 母語の異なる人と語ろうとすると、結局外国語を用いるしかない」
> というのもまた、皮肉な、というか面白い状況です。

これは確かに面白いですね!またいろいろとコメントくださいね!勉強になります。

私も大塚さんと同じ帰国子女です。
現在は再び外国に住んでいるので、外国人ですけどね(笑)

"純日本人"なのに日本人にはなりきれないし外国人にもなりきれない。
「英語が喋れるんだ!カッコイイ~!」なんてかるいノリで言われて
好きで帰国子女になったんじゃないんだよ!と昔はずっと思っていました。

結局日本とは相容れず、外国に戻ってきた。と言った感じですが
今ではだいぶ日本にたいしての敵対心(?)もだいぶ薄れ
いつか日本で暮らすのも悪くはないかなぁ~と思っています。
勿論逆カルチャーチョックにはよく悩まされますが…


コラム読んで、二重人格?えっ?と最初は思いましたが
よくよく考えてみると日本人の前と外国人の前では私は少し別人かもしれません。

日本人の前ではpolite、外国人の前ではfriendly

英語だと丁寧な言い回しはあっても日本のようにガッチガチな敬語はないので
外国人の年上の方や初対面の人に対して日本人的感覚からすれば
私は随分と「馴れ馴れしい」態度をとってるでしょうね(笑)

メイさん

コメントありがとうございます!

> コラム読んで、二重人格?えっ?
> と最初は思いましたが
> よくよく考えてみると日本人の前
> と外国人の前では私は少し別人か
> もしれません。

そうなんですよ。出来る人は無意識にコミュニケーションの取り方を変えているんです。私はDicussionを教えるクラスを持っていますが、大体冒頭は日本語で話し、いきなり完全英語に切り替えます。以前ある生徒さんからあまりの違いに「襲われるかと思った」といわれたのが大変印象に残っています。それだけ突っ込んで聞いていたのでしょうね(笑)。それも無意識に!

コミュニケーションの使い方を使い分けることが出来ると楽になります。

でもメイさんの仰るとおりで「帰国子女は羨ましい」という発想は本当にいい加減にして欲しいですね!いまだから笑っていえますが、コンプレックスの塊です(笑)。


コメントを書く


名前:
メールアドレス:
ウェブサイト:
メッセージ:

スパム防止:
CAPTCHA Image

文字の確認:
 

カテゴリー

最近の記事

コメント

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

世界最大規模のタイトル数を擁するペンギンリーダーズ。

多読授業をはじめ、英語副教材として、図書館用蔵書として、また純粋に英語での読書を楽しみたい方にも、ペンギンリーダーズならではの豊富なラインナップでそのニーズにお応えします。

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

生徒を世界デビューさせる一冊を、あなたのワンクリックで

英語教材のオンラインショップ「ELTBOOKS」 : 各種リーダーズと教材を割引価格で

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

日本在住の外国人英語教師のためのサイト「ELT News」の求人広告をご活用ください。ELTBOOKS.comのお客様は、求人広告欄が1ヶ月間無料

月々たった3,665円(一日相当約122円)の日刊英字新聞。

月々たった3,665円(一日相当約122円)の日刊英字新聞

最新ニュースを英語でチェックすれば、日常生活&ビジネスに役立つ英語力がグンッとアップ!

 
 

イベント情報