コラム・エッセイ View All Columns

グローバル人材に求められるスキル

世界を舞台に活躍する際に求められるスキル・思考法などについて解説していきます。

No.12 世界の共通語 『グロービッシュ』

コラム

2010年07月20日

newsweek20100630.jpg
かつて正当なイギリス英語から「より民主的な」アメリカ英語に移行した英語は、今度は世界の誰でもが使える新しい道具に変わろうとしている。

冒頭は6月30日付ニュースウィークの記事「英語じゃなくてGlob・ish -簡易型英語が世界の新たな共通語に-」からの引用。リーマン・ショック以降、主戦マーケットがアメリカから新興国に移る中で、国際言語化した英語。「英語の性質が変わっているのではないか」とセミナーやこのブログを通じて問いかけてきたことが、まさに分かりやすく、より深く突っ込んで書かれており、何だかずっと探し続けてきた財宝を掘り当てた気分になりました。

記事では日本IBMの元幹部が「英語が母語ではない人が話す英語の方が欧米人よりずっとうまく韓国人や日本人顧客と意思疎通を図れると気づいた」こと。そしてこうした人たちは共通してシンプルな単語しか使わない。必要な語彙(英単語数)は1,500語で十分だと分かり、この1,500語で Communicateする簡易型英語を「グロービッシュ」と命名したと書いてあります。

例えば"Nephew (甥)"という単語。こんな単語は知らなくて良い。"the son of my brother(きょうだいの息子)"と説明すればよい。結局いくら難しい単語、例えば"oath(誓約)"という単語を使っても、非ネイティブ圏では"What does 'oath' mean?"と聞かれ、結局は"words of honor(誓いの言葉)"というグロービッシュ(簡易型英語)での説明を余儀なくされる。だったらはじめからシンプルに誰でも分かる簡単な単語を使った方が、より円滑にCommunicaitonが図れる。これには大きく頷かされました。載っていた文章例も面白い。

アメリカ英語
Native English speakers can't quite hack it when they need to dumb down to the 1,500 key words. The language they have to speak or write is expected to be kosher, if not perfect.

グロービッシュ
Native English speakers have great difficulties when they want to reduce their words down to the 1,500 key ones. On top of that the language they have to speak or write is expected to be correct, if not perfect.

この1,500を例にGlobishを説明するセンスの良さはさすがNewsweekです(笑)。

語彙数が1,500。英検、TOEIC(R)を運営するETSの公式見解ではありませんが、いくつかのウェブサイト*を調べてみたところ英検で合格に必要な語彙力は4級で1,100~1,300 words、3級で2,100~2,500 words必要だとのこと。TOEIC(R)でいえば500点=2500~3000語程度の語彙レベルだといいます。

「英検4級以上と3級未満の語彙力で十分!?」
「TOEIC(R) 500点でoverqualified (必要以上)!?」

既に我々にはグロービッシュを話す語彙力は備わっており、これ以上英単語や英表現を覚える必要はない。シンプルな単語をいかにうまく使うか。既に持りあわせている語彙を「どう操るか」を訓練するほうが余程重要。これがまさに英語力を身につけるのではなく、英語による「コミュニケーションの取り方」を学ぶことの重要性を指します。裏を返せば、相手が分からない単語を使ったらグロービッシュに簡易化させても良いというマインドを持つことがより重要になってきます。

時代が大きく移り変わろうとしているのに周りを見渡すと、英語勉強する者も指導する側も過去のやり方から抜け出せず、未だにネイティブを目指そうとしている。

普通こういった記事が出ると英語業界関係者で話題になりますが、あまり話題になっているような気がしません。私自身、誰かに教えてもらったわけではなく、偶然ある会社の待合室で見つけ、知ったほどです。

この記事、英語業界関係者にとって都合が悪い。これが本当だとすると多くの英会話学校はネイティブを目指させる従来のカリキュラムを大きく変えなければならず、またTOEIC(R)の点数も500点で"overqualify"となるとETSにとっても都合が悪い。ほとんどの大企業が目標にしている730点も意味がなくなってしまいます。

英語じゃなくてGlob・ish。そろそろ現実を直視する時期に来ているかもしれません。

*参照したウェブサイト
http://www.eigokentei.net/
http://www.eigo-eikaiwa.com/0013.html
http://allabout.co.jp/gm/gc/58085/



« No.11 変化のスピードについていけるか | Main | No.13 宇都宮のキセキ »

コメント

英語教育についてネットサーフィンしていてたまたま見つけ、一気にすべてのコラムを読ませていただきました。
まさにそのとおり。日本人の英語の捕らえ方、英語教育について、常々漠然と感じていたことを、大塚さんは事例を基にとてもわかりやすく整理し文字になさっていたので「なるほど!」と何度もうなずいてしまいました。
言語とは、本来コミュニケーションするためのツールであって目的を達成するための手段であるはずなのに、日本における「英語」は学問に近いですね。「英語力」が、語彙力・いかに単語・文法を知っているかが「正」になってしまっています。
日本人の英語に対して、日本人が一番厳しい・・・、まさにその通り。私も、外国人と会話をするのに文法や単語の間違いなどまったく気になりませんが、日本人の割合が多いととたんに、意見を伝えようという思いが弱まり、間違いを恐れ躊躇してしまう自分がいます。
このような環境が、英語に対して日本人をますますあたまでっかちにしていき、まったく実践する場のないままコミュニケーションツールとしての「英語」にはなっていかないのでしょう。
このままでは確実に日本の国際競争力は低下するばかりですね。グローバル化、フラット化していく世の中でガラパゴス化していく日本が目に浮かびます・・・。
そうならないためにも、早急に英語教育を変えていってほしいですね。
なお、私は楽天・ユニクロの社内公用語化はとても良い判断だと思ったのですが、大塚さんはどうお考えでしょうか?

Sayakaさん

コメントありがとうございます!コラム全部読んでいただいたとのこと。非常にうれしいです。

とにかく感じるのが教材不足。全て英語を主役においている教材ばかりで英語をツールとして使える教材は皆無(とくにビジネス関連)に近く、作るしかありません。いまちょうど宇都宮大学で公開講座をやっており、こうしたDiscussionの取り方を人数20名弱、TOEIC300点台から800点後半。年齢も24から60以上。職もバラバラ相手に教えています。

毎回Discussionをビデオ取りして、「あなたのこの発言が彼女のこの発言を引き出し、彼の**という結論を導き出した」と一人一人メールでフィードバックしているのですが、ここまでやると一瞬で「Communicationの取り方」を体得する人が多く、やっていて非常にInspirationを受けます。

こういった活動を今後広めていきたいと思っています。

楽天やユニクロですが、かなり体育会系な強引なやり方のような気がします。日本国への提言としては非常にインパクトがあり、素晴らしいと思いますが、実際に勤めている社員の話を聞くと結局日本人同士なので会議等の効率は格段に落ちる。「日本人の英語に対して、日本人が一番厳しい」なかでやってもあまりよくないような気がします。最低一人外国人を放り込む。これが出来れば全然違うと思うのですが。。。

しかし一石を投じたのは意義があることだと思います。

いつも非常に有意義で納得させられるエッセー、毎回楽しみに読ませていただいています。
今回二度目の投稿をさせていただきます。
実はちょうどグロービッシュの日本語対訳を行ったのが、私の大学院時代の同級生で、まだ出来たての紙ベースの献本をつい先日送ってもらって読んだところです。対訳と合わせて150ページほどですが、すべてグロービッシュで書かれているのでもちろん理解しやすく、かつ、平易な語彙を使用しているからといって、決して内容が浅いわけでもありません。
 私は2年間海外でWorld Englishesの分野を学び、現在高等学校の教壇に立っていますが、生徒はもちろん教員も、英語の現状(誰に、どのように、どんな文脈で今英語が使われているか)にまったくといっていいほど知らされていないという状況です。入試英語=アメリカ英語の「正しい」発音と文法が重視され、少しでも難しい語彙を覚えることに必死になっている姿を見ながら、少しずつ、私が学んできたことを伝えていっています。
 生徒の反応は様々ですが、現在私たちが英語を使う相手はネイティブよりもノンネイティブであることのほうが多いということを話したり、様々な国籍の留学生同士による英語での会話を録画したビデオを見せたり、先日のパン・ギムン国連事務総長の韓国アクセントのスピーチを聞かせたりする中で、多くの生徒は、英語は「自分たちのツール」として自由に使っていいんだ、という意識に変わりつつあります。
 グロービッシュにある1500語で、私たちの日本語や日本文化を反映したコミュニケーションができるわけではありませんが、従来より英語学習の負担が軽くなる分、日本独特の言い回しやコミュニケーションスタイルを英語に盛り込むことが容易になるのではないかと、このグロービッシュに期待しています。

 さて、楽天やユニクロの英語公用化について少しコメントさせていただきたいのですが、私もこれらの会社のやり方に強引さを感じずにはいられません。この方針を採用した根拠は、10年前の「英語第二公用語化」論と同様なのでしょうが、私は、そもそも「公用語」という概念が誤解されているように思います。会社に様々な国籍の人がたくさんいて、日本語だけでのコミュニケーションが困難な場合であれば、英語を公用語化することも納得できますが、日本人しかいない場で、しかも社内でのこととなるとかなり高度な事柄について、英語を用いることのメリットはあまりにも少ないような気がします。会議の場でも、みんながUm----, We----ll...などとやっていると時間がかかって仕方ありません。それならば、例えば、1時間の会議時間のうち、最初の30分で用件は日本語で片付けて、のこりの30分を英語学習の機会にあてた方が、仕事の効率の面でも英語学習の面でも有益ではないでしょうか。

 とりとめもなく書いてしまい申し訳ありませんでした。大塚氏の様々な実践的な取り組みを今後も楽しみに期待しています。


原田先生

コメントありがとうございます!Globishはあくまでも英語のシンプルのツールに変えただけで、それを使いこなすとなると結局は高いコミュニケーション力が求められ、仰るとおり、そう簡単な問題ではありません。

私はセミナーや講演で「日本語と英語を使うときは(そのコミュニケーションスタイルにおいて)2重人格を演じる」くらいマインドを変える。このコツを掴まないといくらツールがシンプルになっても使いこなすことが出来ないといっています。

楽天・ユニクロに関しては賛否両論ですが、最低一人Video参加(今Skypeで簡単に参加できます)でも良いので外国人を入れるだけで大分変わってくると思いますね

でも原田先生のように英語を学問ではなくツールとして捉え、いま世の中で起こっている流れをきちんと把握した上で、英語を教えている教諭は本当に少ないように感じられ、こういったMovementを広めるお手伝いが出来ればととてもうれしいです。

今後ともよろしくお願いいたします。

日本の英語教育水準は世界でもトップクラスであることは周知の事実です。文法だけをとれば、日本人の高校3年生の方がアメリカ人の高3よりもよく知っています。人口の95%(高校進学率)がそんな水準まで達しているのに、日本人の英語話者は人口比5%程度です。この比率は、欧州諸国の平均40%と比べあまりにもお粗末です。それは、日本の英語教育がアメリカ英語を目指したものだからではありません。

では、何が悪いのか?確かに、受験英語はレベルが高すぎます。有名大学の受験問題は、アメリカ人の高校生でも理解できないものが多くあります。しかし、それと英語でコミュニケートすることとは別問題です。

日本の問題、というより、アジア全体の問題は、学校で学んだ英語を練習する場がないということです。テニスを例にとればよくわかると思います。教室で、テキストを使ってテニスのしかたを6年間学んだ生徒が、ある日コードに出て、プロと打ち合いができるか、もちろん無理です。

日本人は中高6年間で、約2000時間の英語レッスンを受けています。それに対し、練習時間はほぼゼロです。実際にネイティブスピーカーと会話練習したことのある学生は、全体の1%にも満たないでしょう。これで英語が話せるようになるはずがありません。

日本でネイティブと会話練習ができるのは、英会話スクールだけですが、全国に約8000あるスクールに行ける若者は50万人いません。文部科学省が7年前に「英語でコミュニケートできる日本人を養成する必要がある」とALT制度を強化しましたが、400人の生徒に対し一人の外国人、それも英語の教師でもなんでもない、ただ英語を話すというだけの人をあてがっているだけです。

文部科学省がしなければいけないことは、国民が分け隔てなく誰でも英会話の練習ができる場所を設けることです。それも、英会話スクールのように一時間3000円というような法外な料金でなく、おこずかい程度のお金で好きなだけ話せる、そんな英会話練習場が必要なのです。

ただ、3000万人の学生が全員いつでも手軽にネイティブと話せる環境を作ることは、理論上不可能です。橋本大阪府知事の、関空をつぶして英語村を作るという提案もまんざらではありませんが、それでも実際焼け石に水です。

練習しないでうまくなれるものなど、この世にありません。95%の日本人が2000時間の英語レッスンを受けているのですから、練習さえすれば、少なくとも人口の20~30%が英語話者になるのは夢ではありません。韓国では、国の政策として英語村を作っています。もちろん、楽天のような会社も多く存在します。

日本人ばかりで、アーウー言っていてもしょうがないと言ってしまえばそれまでです。私は、政府に頼らず、自ら英語を話す場・機会を作ろうとする経営者に敬意を表します。行き過ぎだと批判するのは簡単です。しかし、今の日本がこのグローバル経済の中でどれだけ不利な立場に立たされているかを考えると、一言でも英語を話す機会が存在することの大切さをつくづく感じます。

政府は、大学生の就職難に対してどんな手を打っているのか。日本の大学生は日本企業に勤めるための訓練を積んでいます。しかし、グローバル社会では、雇用主を日本企業に限定する必要はないのです。英語さえ話せれば、世界中の企業が雇用主となりえるのです。

私は、在米37年、金融関係、教育関係の仕事をしてきて、今、日本の直面する問題を自分なりに解決しようと決心して帰国しました。誰もが手軽に英会話の練習ができる場を作る、それを今手がけております。

井口様

Speakglobalのサイト拝見いたしました。まさしく井口様の書かれたような熱い想いがそのまま実現されたような素晴らしいサービスだと思います。英語評論家はいっぱいいますが井口様のようにきちんと自分の信念に基づき行動に移されている方は本当にに少なく尊敬いたします。

最近私は英語を通じて問題解決力、Critical thinking, communication力, プレゼン力、クリエイティビティーなど複合的にスキルを開発しなければと感じ、いろいろと実験しております(コラムNo.18に書きました)。

井口様のように世界で一度ビジネスをされた方々と一緒にこうした運動を盛り上げていきたいと思っております。もう日本には時間がないように思えます。

発音の問題はどうなのでしょう。少ない語彙で意志の疎通が図れるといいますが、nonnative同士で英語で会話するとして、簡単な単語でも発音が正確でないため理解できないことがあると思いますが?(native speakerでも訛りがありますが)
基準となる正確な発音についての共通の認識があってGlobishも成り立つのではないかと思います。


コメントを書く


名前:
メールアドレス:
ウェブサイト:
メッセージ:

スパム防止:
CAPTCHA Image

文字の確認:
 

カテゴリー

最近の記事

コメント

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

世界最大規模のタイトル数を擁するペンギンリーダーズ。

多読授業をはじめ、英語副教材として、図書館用蔵書として、また純粋に英語での読書を楽しみたい方にも、ペンギンリーダーズならではの豊富なラインナップでそのニーズにお応えします。

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

生徒を世界デビューさせる一冊を、あなたのワンクリックで

英語教材のオンラインショップ「ELTBOOKS」 : 各種リーダーズと教材を割引価格で

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

日本在住の外国人英語教師のためのサイト「ELT News」の求人広告をご活用ください。ELTBOOKS.comのお客様は、求人広告欄が1ヶ月間無料

月々たった3,665円(一日相当約122円)の日刊英字新聞。

月々たった3,665円(一日相当約122円)の日刊英字新聞

最新ニュースを英語でチェックすれば、日常生活&ビジネスに役立つ英語力がグンッとアップ!

 
 

イベント情報