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グローバル人材に求められるスキル

世界を舞台に活躍する際に求められるスキル・思考法などについて解説していきます。

No.5 止められないグローバル化の流れ

コラム

2009年11月07日

一昨年「フラット化する世界(トーマス・フリードマン著)」を読み、激動のグローバル化した時代に備えたマインドを持っていないと恐ろしいことになるのではないかと自分の中で大きな危機感を持ちました。この本はアメリカが2000年以降、急速なIT技術の発達により多くのサービス業務がインドを中心とした国々にアウトソーシングされていく過程を描いたもので、ゾッとするような話が散りばめられています。

例えば個人の確定申告。国外にアウトソーシングされた件数は2003年に25,000件しかなかったが2005年には400,000件へと急上昇。インドでは毎年会計学を専攻した学生を70,000以上輩出。平均給与は月100ドルだといいます。しかもモチベーションレベルが米国で同じ業務を行うものと比べ遥かに高いといいます。次は放射線科医。米国の中小病院は平均年収が30万ドル(3千万円程度)を超える放射線科医を雇うお金がない。しかも絶対数は不足している。そこで中小の病院は(恐らく米国で資格を取った)インドやオーストラリア在住の放射線科医にX線分析を発注するという活路を見出す。価格は圧倒的に安く、時差を利用できるので効率的(夜発注を出すと朝には結果が届く)といいます。

最後に証券会社の投資調査(Investment Research)の仕事。上場している企業の決算を分析するという業務ですが、こうした業務の平均収入はニューヨークやロンドンだと80,000ドル(800万円弱)だがバンガロール(インド)だと15,000ドル(150万円弱)で済む。当然そういった仕事の多くはインドにアウトソースされていったという話。

著者のフリードマン氏は「今後貿易財の定義が『箱に詰めて送れるモノかどうか』から『品質を落とさずに長い距離を電子で送れるサービスかどうか』にシフトしていく」といいます。そして今後アウトソーシングされるか否かの職種として3つのカテゴリーに分けています。一つ目は特別、特殊なスキルを持った人。アスリートやアーティスト、有名な脳外科医など、専門的なスキルを持ったもの。このカテゴリーに属している人は引き続き安泰でしょう。二つ目はその場所にいなければ出来ないようなサービスを提供している職種。例として床屋、コック、庭師、離婚弁護士、ごみ収集者など。ただし、これらの給与は従来どおり需要と供給の関係で決まっていく。このカテゴリーに属する人達も給与の差はあるが安泰しています。3つ目のカテゴリーはデータ入力や企業分析、会計、放射線を扱ったりするその場所にいなくても問題ない仕事だといいます。

日本は語学の壁に守られているから大丈夫だと思っている人は多いと思います。しかし芝浦工業大学の山崎敦子教授によると「日本の大手自動車部品会社では2007年にCAD(コンピュータ支援設計)部門をベトナムに完全に移し、今ではハノイ大学(ベトナムの東大に相当)卒のエンジニアが日本人エンジニアと取って代わった」とのこと。そして、この流れはエンジニアリングのみならずビジネスの管理部門にも見られ「あるエネルギー会社は給与計算の部門をすべてタイにアウトソーシングした」という恐ろしいことも現実的に起きているようです。

問題は何も国内の仕事が外国に奪われるに限ったことではありません。法務省入国管理局によると1996年から2006年の10年にかけて外国人労働者の数は倍増したとのこと。現実的に東京西葛西にはインド村があります。つまり、今後アウトソーシングできる仕事は国外に出ていき、国内の仕事を巡る競争も激化する流れが強まるのは避けられないのです。

ご存知の通り、サービスの内外価格差(同等のサービスに対する日本と外国の価格差)があまりに違う場合、途上国に住む人々は必死に日本語を学ぼうと努力します。最近フィリピンで現地の日本人学校にフィリピン人が通っているという話を耳にしました。英語ができるよりも日本語が出来たほうが高い給与が保証されるからです。とは言っても日本人はサービスに対し要求する水準は高く、外国人では要求レベルを満たすことができないのではないかという意見もあるでしょう。その壁は非常に高いと。しかし今後失業率が上昇していけば、逆に日本人を外国に移住させ日本にいる時と比較して圧倒的安い給与で、ただし現地では比較的裕福な生活が出来るレベルの給与で払うというオプションも出てきます。とにかく日本企業は今後グローバル競争に勝ち残っていくためにもコストを抑え、新規投資をしていかなければならない。

米国が経験した「フラット化する世界」の波が日本に徐々に押し寄せています。この流れは今後ますます強まっていくでしょう。例えば会計に関して言えば、今後日本、米国、欧州と3つあった国際基準が一つに統一されていく。ルールが統一化されればアウトソーシング化は間違いなく加速します。深刻な医師不足の問題の解決策として、アウトソーシング出来る仕事は外に出すオプションが出てくるのではないか。激動の時代に備えて個人としてどのように生きるべきか。そのマインドを人材を育てる側は持っているのか。真剣に考えなければいけない時期にきているように感じます。



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