コラム・エッセイ View All Columns

語彙習得理論を“現場目線”で活かす! - コラム

実際に中学生・高校生の指導にあたってきた教師が、中学・高校現場目線で、語彙習得理論に基づく効果の高い語彙指導・語彙活動のあり方を探る。

このコラムについて

コラム

2009年4月15日

語彙習得理論の研究がさかんになってきています。メンタルレキシコンの理論、深い処理仮説、語彙ストラテジーの研究、語彙サイズテストのあり方など、さまざまな研究がなされるようになりました。

しかしながら、その理論をどう現場の語彙指導に活かすかは、まだまだ話題にのぼることが少ないように思います。

そこで“現場目線”で、語彙習得理論をどのように活用するか、どのような語彙活動をすれば学習者が効果的に語彙を定着させることができるのかについて、具体例をあげながら、書いていきたいと思います。



フラッシュカードを効果的に使おう!

コラム

2009年5月10日

中学校では、教科書付属のフラッシュカードを購入し、それを使って新出語を導入することも多いかと思います。フラッシュカードとは、表に英単語、裏に日本語が書いてある、教室の生徒全員が見えるくらいの大きさのカードです。先生がそのカードを見せて、発音練習をさせたり、裏側に書いてある日本語の意味を導入したりします。

そのときに、以下のような練習方法をとる先生も少なくないでしょう。

1.英単語をみせて日本語が言えるようにさせる、または、日本語を見せて英単語が言えるようにさせる。
2.何回も繰り返し、だんだんそのスピードを速めていく。
3.すばやく英単語が口にだせるようになるまで練習させる(その名の通り”フラッシュ”する)。

 フラッシュカードは、バラのカードですから、上記3を行うためには、先生は“手動”ですばやくカードを次々と提示しなければなりません。これはなかなか大変な技ですね^^。
 実際、私の友人には、「私がフラッシュになってない(不器用なのですばやくフラッシュのようにカードを提示していくことができない)」と困っている人もいます。
 
 しかし、皮肉なことに、この友人は単語の記億には効果的なことをしているのです。その理由を以下に述べます。


 新出語には、非常に単純に言うと、文字情報(つづり)、音声情報(発音)、意味情報(単語の意味)の3つの情報がふくまれています。生徒にとっては、この3つの情報を脳の中で処理するためには、十分な時間が必要となります。したがって、先生のフラッシュカードをめくるスピードが速いと、脳が情報を処理しきれなくなり、意味のない単なる「オウム返し」になりがちです。


 通訳の訓練法に「クイックレスポンス」というのがあるのだそうです。英単語から日本語、日本語から、英単語をすばやく言わせていくものです。通訳訓練でこの方法が有効なのは、このレベルの学習者には、すでに多くの英単語が脳の中に蓄積されており、それらを口に出すスピードを速めるためという目的であれば、このような「クイックレスポンス」は効果的といえましょう。


 しかし、生徒の脳の中に蓄積されていない新出英単語の場合は、この方法は必ずしも効果的とはいえないのです。たとえ一時的に日本語から英単語がすばやく言えるようになったとしても、単語の脳への記銘(長期記憶保持)の妨げにもなりかねません。すなわち、一時的な“条件反射”は、単語の長期記憶にはあまり効果的とはいえないのです。
 

 では、どうすれば、効果的になるか。
  
 「新出単語を導入するときは、その単語の情報を、生徒の脳がゆっくりと処理する時間を与えてあげましょう」


が原則になります。フラッシュカードを使うなら、提示のスピードを速めるのではなく、逆に、だんだんゆっくりとしていく、という方法が考えられます。

1’ 英単語をみせて、日本語が言えるようにさせる、または、日本語を見せて、英単語が言えるようにさせる。
2’ 何回も繰り返すうちに、だんだんそのスピードをゆっくりにしていく。
3’ 日本語を提示した後、10秒から20秒、待たせてから、英単語を言わせる。

3’ では、生徒は、日本語の意味に相当する英単語を最大20秒頭の中でキープした後、その語をいわなければなりません。この20秒の間に、英単語が生徒の脳にじっくりときざまれていくのです。
 
 または、フラッシュカードを導入時に使わずに、生徒にとってすでにほぼ定着している単語の復習として使うと効果的でしょう。そうした練習は「単語が使える訓練」になり非常に効果的です。通訳訓練の「クイックレスポンス」と同じ原理です。 


 さて、高校については、全くふれてきませんでした。高校での新出語の導入は、それぞれの高校によって、事情が違うでしょうが、予習で新出語を辞書で調べさせてくる、という方法は、かなり一般的に行われていることと思います。

 しかしながら、授業中に、新出語を調べてきたかどうかを確認するだけで、導入活動を何にもしないというのはあまり単語の記億に効果的とはいえません。高校の場合、教科書の付属でフラッシュカードがついているということは稀でしょうから、先生がカードを作成してもいいでしょうし、それが手間であるようなら、一通り単語の意味を確認したのち、カードなしで、上記1’から3’を行ってもよいと思います。

 
 フラッシュカードの一般的な使い方とは、少し違う提案をしてみました。教室でぜひお試しください。
 



エッセイライティングと語彙習得~生徒が作るオリジナルな単語テスト~

コラム

2009年9月07日

 高校のライティングの授業で、1週間に一度程度の割合で、100語程度のエッセイを書かせていました。自分が書きたいことを書かせようと思い、教科書のレッスンの内容とはあまり関係なく、自分がそのとき書きたいと思ったことを書かせていました。
 
 学校生活などの身近な話題から、中には、「環境問題」などの社会問題についての自分の意見を書くことにチャレンジする生徒もいました。


 どんなトピックを選んでも、知らない単語というものは必ず出てきます。 授業内で書くことを原則とし、宿題にはしませんでしたし、また、エッセイを書くときは、辞書を引かせない方針でしたので、あちこちで、「先生、これ、英語でなんていうの?」と聞かれます。その質問への対応は大変で、教室中を走りまわるようにして質問に答えたものです。


 ここで、問題としたい点は、生徒が「先生、これ、英語でなんていうの?」と聞いた単語のリストを作らせておき、そのリストを用いて、一人ひとりオリジナルな単語テストを作成する、という点です。たった一回エッセイでその単語を書いたくらいでは、すぐに忘れてしまいますが、その単語を用いて、自分だけの単語テストを実施すると、かなりの確率で忘れません。


例を用いて説明してみましょう。

<生徒A君が書いたエッセイ(下線部はこの生徒が知らなかった単語)>

Today, the world has many problems. For example, nature problems, trash problems, etc. We are not interested in these problems. But I think we have to be interested in these problems. If we take action to solve them, this world will become nicer.
This world “earth” was very beautiful long time ago. People were born in this place and they destroyed beautiful nature. I think that people must protect nature. Then, we will certainly make the world better.


このエッセイを書くために、教員(私)に聞いた単語(下線部)をリストアップさせておきます。


A君の単語リスト


 何回かエッセイを書いていくと、次第にリストアップされた単語がたまってきます。新しい単語を使う傾向の強い生徒とそうでない生徒がいますので、全員が10個というわけには行きませんでしたが、大体クラス全員のリストが単語10語くらいになった頃(およそエッセイ2つ分)で、自分で以下のフォームに単語テストを作らせます。10以上ある場合は、自分で10個選ばせます。


A君の自作単語テスト

 
 一週間後にテストをすることを予告し、テスト用紙は回収します。生徒は自分の手元にある単語リストで勉強して、テストにのぞみます。

 テストでは、解答欄2のほうに答えを書かせ、教員が採点して右側のみを切り取って返却します。答えがひとりひとり違うので、採点には多少時間がかかりますが、生徒にとっては、自分で書いたエッセイの単語は覚えやすいので、普通は全員がほぼ満点です。

 さらに三週間後、左側を使って抜き打ちでテストをしてみます。正解率を平均するとおよそ77%であり、かなりの割合で長期記憶に入っていることが確認できました。


 この単語テストで記億が高い理由は2点あげられます。そのどちらかが抜けてもおそらく語彙習得率は下がると思われます。

(1)エッセイを書いているときは、文章全体を書くことに注意が向くので、単語のみには集中できない。したがって、エッセイを書かせるだけで終わりにした場合、せっかく未知語を使っても一過性で忘れ去られることが多い。なので、自分が書いた未知語のみに焦点を当てた単語テストを作成し、単語のみもう一度学習させるためのテストを行う。

(2)自分の書いたエッセイの未知語は、自分の考えや経験と深くむすびついており、文脈も覚えていることから、生徒はその単語を覚えやすい。

 1年間続けてこの活動を行い、どの位語彙サイズがのびたかは測ってはいませんが、エッセイライティングと結びつけた生徒が作る自分だけのオリジナルテストは、student-friendly な単語テストではないかと考えられます。



紙ベースの英和辞書と語彙習得 その1 ~辞書をすみからすみまで使いつくそう~

コラム

2009年9月14日

 多くの高校では、入学時に、紙ベースの英和辞書を生徒に買わせると思います。教員が推薦した辞書の中から生徒が選んで買う場合が多いようですが、中には全員に同じ辞書を指定して持たせる学校もあるようです。
 
 私の学校は、いくつかの辞書を推薦し、生徒がその中から選んで買うという方式をとっていましたから、生徒は何種類かの違う辞書を持っています。

 私は、まず、最初の授業で、全員が高校生用の辞書を買ったかどうか、持ってこさせて点検します。持ってこない生徒は持ってくるまで指導します。

 そして、いったん持ってきたら、辞書は家に持ち帰らせません。学校のロッカーの中に入れておき、英語の授業中に必ず使えるよう指示します。

 「それでは、予習で、教科書の単語調べができないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。しかしながら、「教科書の単語を家で調べてくる」という予習は、語彙習得上、あまり効果的ではありません。辞書をひけば、意味は簡単に日本語でわかります。簡単にわかった単語の意味は定着しないものです。


 では、辞書を授業内で効果的に使う「語彙活動」とは、どんなものでしょうか。


 辞書には、あるひとつの単語について、以下のような情報が載っています。

a)品詞、b)発音記号、c)アクセント、d)シラブル数、e)使用頻度、f)コロケーション、g)日本語の意味、h)例文、i)絵、j)類義語、k)類音語、l) 接頭辞、接尾辞など。
 
 
 今回はh)辞書の例文を使ってできる、定着度の高い語彙活動を2つほどあげてみます。


<辞書で自作クローズテスト>

 違う辞書を持っている生徒同士でペアになります。先生は、教科書に出てきた覚えさせたい単語をいくつか選びます。たとえば、remind, confident, ability, succeed, とします。生徒はそれぞれの単語を辞書で引いて、それぞれの例文を書き出します。

■Aさんの辞書の例文 (注1)
You remind me of your father.
She is confident of winning the game.
Cats have the ability to see in the dark.
My brother succeeded in his exam.

■Bさんの辞書の例文(注2)
She reminds him of her mother.
I am confident of their victory.
She has an unusual ability to play music.
He will succeed as a doctor.

 これらの例文の新出語の部分を(  )に変えて、クローズテストを作成します。

■Aさんが作ったクローズテスト (例文の順番は適当に変えさせます)
1. Cats have the (    ) to see in the dark.
2. You (   ) me of your father.
3 My brother (    ) in his exam.
4 She is (     ) of winning the game.
 
■Bさんが作ったクローズテスト
1 I am (    ) of their victory.
2 She has an unusual (     ) to play music.
3 He will (     ) as a doctor.
4 She (    ) him of her mother.

 このテストをお互いに交換しあい、答えを書きます。答えを書き終わったら、相手に戻して採点してもらいます。


 このテストは、なぜ語彙習得上、効果的なのでしょうか?

        教科書と違う文の中で、その単語を見ると、単語のイメージが
        さらに膨らみ、定着がしやすくなる。
        しかも、このテストでは、自分の辞書の例文と、
        ペアの相手の例文とで、2つ違う文の中でその単語をみるので、
        定着度がアップする。

という点です。お互いの答えを採点しあうのも、語彙習得には効果があります。

 
 さらに、こんな活動も可能です。

<辞書の例文を変えよう>

 辞書の例文を基に、自己表現の英作文をする活動です。上記の例文を使います。

She reminds him of her mother.
I am confident of their victory.
She has an unusual ability to play music.
He will succeed as a doctor.

 今度は、新出語の部分を残し、他の部分を空けておきます。
1(    ) reminds (    ) of (     ).      
2(    ) confident of (     ).       
3(    )has an unusual ability to (      ).
4(    ) succeed as (        ) .


 (   )の中を埋めて、自分のことや経験や身の回りの人のことなどのことについて自己表現をします。(  )の中は何語入れてもOKです。

例) (I am )confident of( passing the test).


 この活動の効果は、上記クローズテストの効果に加え、

       「自分についてのことを例文を基にして書くと、自己関与効果が働き、
        記億が促進される」

という部分にあります。


 今回は辞書の例文の効果的な使い方について、2つの活動例をあげました。次回は、辞書の情報の中の

(a)品詞、b)発音記号、c)アクセント、d)シラブル数、e)使用頻度、f)コロケーション、i)絵、l) 接頭辞、接尾辞

など、生徒があまり自分では目にしない部分の活動を中心にご紹介したいと思います。


注1 辞書の例文は 「Grand Century, 第2版」(三省堂)を少し改編したものです。
注2 辞書の例文は 「Genius 第4版」(大修館)を少し改編したものです。



紙ベースの英和辞書と語彙習得 その2 ~辞書をすみからすみまで使いつくそう~

コラム

2009年10月08日

 前回のコラムでは、紙ベースの辞書を効果的に「語彙活動」として使おうという観点から、辞書の「例文」に注目した<辞書で自作クローズテスト><辞書の例文を変えよう>の2つの活動をご紹介しました。

 お読みいただいたみなさんの感想には「今の中高生は電子辞書を使うことが多く、紙ベースの辞書のよさを伝えるのは難しい」というものが2件ほどありました。

 語彙指導には、大まかにいうと、3つの目的があります。

     (1)語彙サイズを増やす (知っている語彙数を増やす。)
     (2)1つの語彙に関する知識を深める
        (品詞、使用頻度、コロケーション、アクセント、シラブル数、
         語法などについての知識を得る。)
     (3)認知速度を速める 
        (その単語を見たり聴いたりしたとき、すぐに認知できる。)

 紙ベースの辞書は、特に上記目的の(2)において、電子辞書より優れていると思われます。知りたい語彙の情報がひとつのところにすべてまとめて書かれてあるからです。そこの部分を生徒にいかに活用させるかが、教員の腕のみせどころといえましょう。授業中に、辞書の様々な情報に目を向けさせる活動を行うようにすればよいわけです。

 もちろん、電子辞書には、電子辞書のよさがあり、上手に使い分けることが大切でしょう。しかしながら、紙ベースの辞書を使わせないのは非常にもったいない、と私は思います。

 さて、前回の復習をすると、あるひとつの単語について、辞書には以下のような情報が載っています。

     a)品詞、b)発音(記号)、c)アクセント、d)シラブル数、e)使用頻度、
     f)コロケーション、g)日本語の意味、h)例文、i)絵、j)類義語、k)類音語、
     l) 接頭辞、接尾辞


 今回は、まず、
      a)品詞、b)発音(記号)、c)アクセント、d)シラブル数、l) 接頭辞、接尾辞

を生徒に考えさせる語彙活動をご紹介します。 

<共通点は何だ?>
つぎの単語に共通する点は何ですか?辞書を引いて共通点をみつけてください。
見つける観点は以下のとおりです。(解答は記事の一番下にあります)
 
 発音、アクセント、シラブル数、品詞、接頭辞、接尾辞
 
問1 何かひとつの点で共通しています。
(1) tear, last, bear, land, spring, light. store
(2) comb, psychology, cupboard, bomb, knife, foreign
(3) huge, global, international, true, honest
(4) elevator, scientific, temperature, transportation, similarly, negotiate

問2 何かと何かをあわせて複合的な観点で共通しています。
(1) about, sixteen, before, agree、above
(2) conduct, increase, progress, record, import, present
(3) government, generation ,nationality, importance, decision


 生徒は共通点を探しながら、辞書の中で普段あまり目を向けないであろう、

     a)品詞、b)発音(記号)、c)アクセント、d)シラブル数、l) 接頭辞、接尾辞

の情報をかなりじっくりと見ることが可能になります。


 つぎの活動はf)コロケーションに目を向けさせる活動です。

■コロケーションの予測
 あるひとつの単語、例えば「leg」などのように、面白いコロケーションが出てくるものを先生が日本語で提示しておきます。

    「美脚」「前足」「後ろ足」「毛深い足」「足を骨折する」「足を組む」

 まず、これらの表現をなんというか、辞書を引かずに生徒に考えさせます。「美脚」は[beautiful leg] などという予測が出たりしますし、「後足」は「back leg」、「毛深い足」は「hair leg」などと予測が出ててきます。予測ができないものは、そのままでOKです。
 次に、生徒は「leg」を引いて、これらのコロケーションに当たる表現を探します。自分の辞書にない場合もあるので、友達と協力して行います。

 自分たちの予測が合っていれば、「あ、当たった!」という歓声があがりますし、「なるほどね」というものについては、「気付き」があるようです。

 
 このようにしてみると、前回と今回のコラムでご紹介した活動で、紙ベースの辞書のいろいろな情報に目を向けさせることが可能になります。

 あくまで授業中に行うことが大切で、独学でやらせると「やらない生徒」「やれない生徒」が出てきます。

  

 さて、辞書最終回の次回は、「辞書をいかに“読ませるか”」をテーマに、f)使用頻度、i)絵などを中心とした語彙の知識の深さを身につけさせる活動をご紹介していきます。「辞書を”読ませ”」て身につく単語の知識については、やはり、電子辞書より、紙の辞書のほうが適していると思います。

<共通点は何だ>解答
問1(1)1シラブル (2)読まない文字がある (3)形容詞 (4)4シラブル
問2(1)2シラブルで、アクセントが後ろ (2)名詞と動詞が両方あり、アクセントの位置が品詞によって変化する(3)すべて名詞で、ment, tion, ity, ce は、名詞を作る接尾辞である。

<コロケーションの予測>解答
slender leg, front leg,hind leg, hairy leg,break my leg, cross my leg.



紙ベースの英和辞書と語彙習得 その3 ~辞書をすみからすみまで使いつくそう~

コラム

2009年11月19日

 10月、11月のコラムでは、紙ベースの辞書をいかに使わせるかについて述べてきました。復習すると、10月は「辞書の例文」を用いた語彙活動を、11月は「発音、シラブル、アクセント、品詞、接頭辞、接尾辞、コロケーション」の知識を得るための語彙活動をご紹介しました。

 お読みいただいた皆さんのご感想をいくつか挙げてみると

・紙ベースの辞書は、単語一語についての情報がまとまって書かれている点で電子辞書より効果的である。
・紙ベースの辞書は辞書を引いたときに下線などが引けるので、学習の跡が残る点で効果的である。

など、私のコラムに共感していただくコメントがありました。

 
復習になりますが、語彙指導には、大まかにいうと、3つの目的があります。

(1) 語彙サイズを増やす (知っている語彙数を増やす。)
(2) 1つの語彙に関する知識を深める
    (品詞、使用頻度、コロケーション、連想語、アクセント、シラブル数、語法などについての知識を得る。)
(3) 認知速度を速める 
    (その単語を見たり聴いたりしたとき、すぐに認知できる。)

 紙ベースの辞書は、特に上記目的の2において、電子辞書より優れていると思われます。理由は、上記、読者の方のご感想と同じで、紙ベースの辞書は、単語一語についての情報がまとまって書かれているためです。


 最終回の今回は、「辞書を“読ませる”」ことに主眼を置いて、電子辞書にはない紙ベースの辞書の魅力を考えてみたいと思います。

まず、最初の2つの活動は、単語一語についての辞書の記述を読み、どんな知識が得られるのかを確認させる活動です。

■辞書を読もう(1)

問1 have, make, get, go のなかで一番ページ数(行数)の長いものはどれですか?
  予測してみましょう。
  予測(    )
  実際に一番ページ数(行数)が一番多かったものはどれですか?
  (    )
  そこには、どんなことが書かれてありましたか?書かれているものに○をつけましょう。
  意味(   )つ  品詞、 自動詞か他動詞か 発音, 例文(    )つ、 絵、  熟語(   )つ  その他(        )

問2 in, on, for, to のなかで一番ページ数の長いものはどれですか?
   予測してみましょう。
   予測(    )
   実際に一番ページ数(行数)が一番多かったものはどれですか?
   (    )
  そこには、どんなことが書かれてありましたか?書かれているものに○をつけましょう。
  意味(   )つ  品詞、  発音, 例文 (     )つ、 絵、 
  熟語(   )つ  その他(       )


■辞書を読もう(2)
以下の単語を引いて、表に辞書から得られた情報を書き込みましょう。ないものもあります。


 この2つの活動は辞書を“読みつつ” 「1つの語に関する知識を深める」(品詞、使用頻度、コロケーション、連想語、アクセント、シラブル数、語法などについての知識を得る。)という語彙指導の目的に合致したものになっています。


 また、つぎの活動は、辞書のあるページからあるページまでをスキャンニングさせ、以下の問いに当てはまる単語を見つけさせる活動です。

■辞書全体を読もう

問1次の単語はいくつありますか?辞書の該当ページを読んで探して、
  その語を書き出してみましょう。
  (1)Tで始まり、Hで終わる8文字以下の単語
  (2)Bで始まり、Kで終わる5文字以下の単語
  (3)Rで始まり、Gで終わる6文字以下の単語

問2 辞書の次のページには、使用頻度が高い単語(赤字のもの・星3つのものが
   いくつありますか? ページをみて、その語を書き抜きましょう。
   (1)P300~330
   (2)P575~P600
   (3)P40~80

問3 辞書の次のページには、絵のある単語がいくつありますか? 
   ページを見てその語を書き抜き、絵は何をしめしているか、書き出しましょう。
   (1)P1175~P1215
   (2)P780~P900
   (3)P250~P320

 この3つの問いは、辞書をあるページからあるページまで、「読み通す」ことで、辞書に「慣れさせる」という目的と合致しています。


  このように、辞書にある情報をすみからすみまで使いながら、語彙指導の目的のひとつである「1つの語彙に関する知識を深める」を達成することが可能です。その語に関する情報を深く知ることにより、その語の定着も促進されます。


 最後に、これも、先月の読者の方のコメントにあったように、辞書指導は「学習者の自律」という重要な意味をもちます。特に今回の「辞書を読む」活動は、「学習者が自力で辞書を引ける力」と多いに関係しています。
 
 辞書の情報をすみずみまで使用し、学習者が自分で見つけたい情報を見つけられるよう、このような活動を手助けとして、最初の一歩としたいものです。
 


<追記> 3回にわたり、紙の辞書で語彙活動をする方法について述べてきました。しかしながら、電子辞書には、電子辞書のよさがあるので、電子辞書の使用を否定するものでは決してありません。



「深い処理」仮説と語彙活動の実際

コラム

2009年12月20日

 「深い処理」仮説は、Craik and Lockhart (1972), Craik and Tulving(1975)によって立てられたものです。簡潔にいうと、ある単語の「形状情報(発音・つづり)」に目を向ける語彙活動よりも、「意味情報」をできるだけ深く処理する語彙活動のほうが、その語の定着が高くなるという説です。

 この仮説は、そのあいまいさを批判する声も研究者の間では聞こえますが、今でも、語彙習得理論の中では欠かせない理論のひとつとなっています。特に、仮説の厳密さを要求しないクラスルームでは、生徒の語彙活動を考えるときに、とても役立つ理論だと思います。

 たとえば、「単語を何回も書く」という語彙活動では、生徒は主に「つづり情報」を処理するので、浅い処理の活動ですし、「単語を何回も発音する」では、主に「音声情報」を処理するので、やはり浅い処理の活動といえるでしょう。

 それに対して、「単語とその単語の意味をあらわす絵をマッチングさせる」という語彙活動では、生徒はその語の「意味情報」に主に目を向けるので、より処理の深い語彙活動といえます。

 「意味情報」に目を向けさせる活動にも、その処理の深さには段階があります。
たとえば、新出語の導入時に、先生が、その語の日本語訳をあたえれば、生徒は浅い処理しかしないでしょう。教科書の巻末についている日本語訳を見て意味を調べるというのも浅い処理にしかなりません。
 しかし、先生が、その新出語をやさしい英語で言い直して提示したり、その語の意味を文脈から推測させるようにすれば、生徒はもっと深い処理をするはずです。

 
いくつかの語彙活動を処理の浅い順に並べてみましょう。今度は、語彙の定着を目的とした活動です。

1 ビンゴゲーム(生徒が英語をビンゴシートに書き、先生が日本語を言うビンゴ)。
2 新しく習った単語の絵を描いてみる。
3 新しく習った単語から、連想する語をたくさんあげてみる。
4 新しく習った語を使って、自分のことについて英語で書いてみる。

 ただし、処理の浅い語彙活動も、工夫次第で深い処理を促す語彙活動に変身します。一番処理の浅いビンゴゲームでも、生徒が英語をビンゴシートに書き、先生が英語での言い換えをいうビンゴ(名づけて“言い換えビンゴ”)なら、ずっと深い処理の語彙活動になるでしょう。

 絵を描く活動でも、自分の描いた絵を、友達に、“半分隠し”たり、“さかさまに”みせて、「その絵はなんの単語か」を当てさせるようにすれば、より深い処理の語彙活動になります。


 しかしながら、実際のクラスルームでは、「処理が深ければよい語彙活動か」というと、そう単純なものではないのです。

というのも、「処理の深い語彙活動」は難易度も高いことが多く、上記4の「新しく習った単語を使って自分のことについて英語で書いてみる」という活動が、いくら深い処理を促し、語彙の定着を促進する活動であったとしても、生徒ができないとなれば、なんの意味もありません。

 このような場合は、逆に、少し、処理レベルをやさしくしてあげるように調整します。
たとえば、favorite という単語を覚えさせたくて、この単語を使って自己表現の文を書かせるときは、

My favorite subject is math.

のような“例文の型”を提示しておき、その型にあわせて、書かせるようにすれば、自分のことについて、書ける生徒が増えるでしょう。


「連想する語を挙げてみる」も、そんなに易しい活動ではないですが、連想する語を選択肢として与えておけば、かなりの生徒ができるはずです。たとえば、「mountainの連想語をあげなさい」といわれても、英単語が出てこない場合はよくありますが、「次の中から、mountainから連想する語を選びなさい」に変えて、hill, top, sea, high, climb, などを選択肢として入れておけば、活動が出来る生徒は増えるはずです。

 したがって、生徒にとって一番効果の高い語彙活動とは、“生徒ができる範囲でありながら、その中で、一番深い処理を促す”活動といえます。

 生徒の実態はさまざまですから、どの処理レベルの語彙活動がよいかを決めるのはその生徒さんたちを教えていらっしゃる先生方おひとりずつの判断になるでしょう。


<参考文献>
Craik, F. I. M., & Lockhart, R. (1972). Levels of processing: A framework for memory research.
Journal of Verbal Learning and behaviour, 11, 671-681.

Craik, F. I. M., & Tulving, E. (1975). Depth of processing and retention of words in episodic memory.
          Journal of Experimental psychology: General, 104, 268-294.



「意図的学習と偶発的学習~コミュニケーションで使える語彙学習とは~」

コラム

2010年1月14日

 単語集や単語テストなどで覚えた単語は、実際のコミュニケーションの場では使えないのではないか、という声をよく聞きます。
 ある意味では、そういう傾向はないとはいえませんが、コミュニケーションで使える単語は、(擬似的)コミュニュケーションの場面でしか習得されないかというと、そんなこともないのです。


語彙習得は以下の2つの場面で起きます。
(1)単語だけに焦点を当てて集中的に覚える方法
(2)英語の大量のinputの中で単語を覚える方法


 (1)の代表例は、単語テストで、単語のみで(文脈なしで)、日本語から英単語を書いたり、英単語の意味を日本語で書いたりするような単語の覚え方のことです。最近の生徒はあんまり単語カードを作っているのをみかけませんが、表に英単語、裏に日本語という単語カードで覚えるものこの仲間に入ります。単語集にもよりますが、市販の単語集で単語を覚える、というのもこちらでしょう。

 
 (2)の代表例は多読と多聴でしょう。このコラムでも「English Libraryのすすめ」などで、多読による、語彙習得のあり方をまとめてきました。多読、多聴をしながら、あるとき、知らなかった単語の意味に気付き、その単語の意味を覚えてしまうことを指します。


 (1)の語彙学習をintentional learning(意図的学習)といい、(2)の語彙学習をincidental learning (偶発的学習) といいます。この2つは、どちらがいいということではなく、いわば、語彙学習の両輪です。両方に長所と短所がありますので、どちらが欠けても語彙学習はうまくいかないものです。


 「意図的学習」は、単語を覚えようという目的で学習するわけですから、「単語学習だけに注意を集中できる」という利点があります。そのかわり、単語のみで覚えた単語は忘れやすく、文章の中での使い方が分からないという欠点があります。

 「偶発的学習」は、英語のinput全体の意味に学習者の注意が向くので、単語のみを覚えることに集中できない、覚えるべき単語を見逃してしまう、という欠点があります。しかしながら、いったんその単語にきづき、覚えた場合には忘れにくく、コンテクストの中でその語彙が使える、というのはこの学習法の長所といえましょう。

  
  Nation (2001)は、2000語レベルの語彙サイズくらいまでは、(1)の意図的学習を重要視しています。2000語程度の語彙サイズはないと、あらゆるコミュニケーションそのものに支障をきたすためです。特に、英語のinputが少ない日本のようなEFLの学習環境では、意図的学習は不可欠と主張しています。

  ですので、単語のみで学習する意図的学習も、特に、英語学習の初期においてはコミュニケーションで使える語彙学習の土台として、重要な役割を果たします。中学校などで、ビンゴなど、単語単独の語彙活動をよく行うことが多いのは、理にかなっているといえましょう。


  私見では、語彙サイズの少ない初期学習者は(1)の意図的学習の割合が高く、その後、語彙数が増えるにつれて(2)の偶発的学習の度合いが増すと考えています。語彙数が増えるにつれて、偶発的に単語を覚える確率は増えていくからです。

 また、意図的学習をより深めるために、例えばfavoriteという単語を覚えさせたあと、授業で以下のような簡単なインタラクションすれば、よりコミュニケーションで使える語彙学習になります。

A: What's your favorite subject?
B: My favorite subject is math.

A: What's your favorite sport?
C: My favorite sport is baseball.

さらに、語彙は4技能使うと定着が高くなることから、このようなやりとりをしたあとまとめの簡単な英作文をさせるとよいでしょう。

(例)B's favorite subject is math. C's favorite subject is baseball.


 意図的学習 と偶発的学習 は、相互補完的といわれています。たとえば、意図的に学習した単語を、多読や多聴の中で偶然見たり、聞いたりすることによって、その単語を忘れにくくなります。

 逆に、多読、多聴のなかで、覚えさせたいと思うターゲットワードを決めて、そのターゲットワードに、学習者の注意を向けるようにすると、学習者の単語への注意度が増し、その単語を習得しやすくなります。

 たとえば、リスニングをさせているとき、覚えさせたい単語をあらかじめ黒板に書いておき、その単語が出てきたときに、一時的に音声をストップさせて、黒板を見させるようなことをすると、学習者はその単語を覚える確率が高くなります。

 

 このように、単語のみで覚える語彙学習と、多読、多聴など、コミュニケーションの中で覚える語彙学習は、車の両輪です。読者のみなさんも、おそらくは、単語テストや、受験用単語集で最初に覚えた単語も、使う機会さえ与えられれば、十分に役に立つということを実感していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?


参考文献
Nation, I. S. P . (2001) Learning vocabulary in another language. Cambridge: Cambridge University Press.



「“山”といえばなぜ“川”か~メンタルレキシコンと語彙習得~」

コラム

2010年2月14日

  日本語を母語とする人に「”山”という言葉から連想する語は?」と聞いたとします。みなさんは、どんな言葉を思い浮かべたでしょうか?おそらく「川」や「海」、「頂上」「高い」「登る」などだと思います。

 英語にも同じ現象が見られます。「"mountain”から連想する語は?」と英語母語話者に聞いた場合、ほとんどの人が“hill", "top",“high",“sea”などと答えるといいます。
 

 同じ言語を共有する人たちは、なぜこのように同じような連想をするのでしょうか?その答えは「メンタルレキシコン」という、私たちの「脳内辞書」のあり方に見出されます。
 

 Aichison (2003)によると、私たちの脳の中には、単語は非常に理路整然とした形で貯蔵されています。母語が英語の方であれば、生まれたときからの英語の大量のインプットにより、一緒に出てくる可能性の高い単語同士を判断し、それらは脳の近い場所に蓄えられます。"mountain”と“hill“ "top”"high”"sea”は一緒に出てくる可能性が高いため、脳の近いところに蓄えられます。連想語を聞かれるとこれらの単語を答えるのはこうした理由によるものです。


 Aichisonは、特に以下の単語同士は、一緒に出てくる可能性が高いため、脳の近いところに蓄えられているといいます。

①等位語
たとえば、野菜の名前同士、"carrot", "radish", "onion" "tomato", などは、お互いに等位語同士という関係にあり、脳の中で非常に近いところに蓄積されていきます。ですので、英語学習者に、新しい単語、例えば、"eggplant" を覚えさせたいときは、学習者がすでに知っている等位語、"carrot", "onion" などと結びつけさせると、メンタルレキシコンの中に組み込まれやすく、すなわち、記億に残りやすくなります。
 
ただし、学習者が知らない等位語、例えば"radish" と、新出語である"eggplant" を一緒に提示するのは逆効果といわれています。どちらが「大根」でどちらが「なす」か、混乱をひきおこしやすいためです(Tinkham, 1993)。


②collocational links
よく一緒に出てくる動詞と名詞のつながり(たとえば、"climb"と"mountain"など)、形容詞と名詞のつながり(たとえば"high" と"mountain"など)、動詞と副詞のつながり(たとえば"run"と"fast")などの単語は、やはり脳の中で近いところに蓄積されていきます。ですので、たとえば、"send" という動詞を覚えさせたいときは、"send a letter" "send a present", " send an e-mail”などのつながりをたくさん提示すると記億に残りやすくなります。


③同意語・反意語
"huge", "big", "large", "medium-sized", "small", "tiny" のような同意語・反意語はやはり、脳の中で密接に繋がって蓄積されています。"huge"という新出語を覚えさせたい場合には、学習者にとって既知語である"large"や"big"と結びつけて覚えさせるようにすると、"huge"という単語が定着しやすくなります。


 
  では、このようなメンタルレキシコンのあり方を利用した、語彙活動を2つご紹介しましょう。

■連想ゲーム
"mountain”という語を覚えさせたいとします。"mountain"から、連想する英単語をペアやグループでいろいろと出し合います。10分など時間制限を設け、一番たくさん連想語が考えられたペアやグループが勝ち、というゲームです。
ただし、連想語をあげるときは、学習者がすでに知っている(脳の中に蓄えている)単語に限ります。知らない単語をわざわざ、辞書などで引かないようにさせます。

 
 連想ゲームは、ある程度の語彙力がないとできませんので、もう少し易しくするとこんな活動も可能です。


■くもの巣ゲーム
真ん中に入る単語を答えさせます。


 このように、新出語とつながりの強い単語(=連想語)を結びつけさせることにより、新出語は、メンタルレキシコンに組み込まれやすくなる、すなわち、記億に残りやすくなるのです。

参考文献
Aichison, J. (2003) Words in the mind: An introduction to the mental lexicon. Oxford:Blackwell.
Tinkham, T. (1993) The effect of semantic clustering on learning of the second language
    vocabulary. System, 21, 371-380.
岡田順子(2008)みるみる語彙力がつく!魔法の5分間英単語テスト 明治図書出版。
岡田順子(2010)少しの工夫で効果4倍!魔法の英語語彙指導アイデア 明治図書出版。



「記億方略としてのキーワード法」

コラム

2010年3月29日

さて、4月になり、新学期を向かえます。先生方のお忙しい時期でもあり、少し趣向を変えて、今月は、楽しい記事をお届けしようと思います。

 単語の記億を促進するストラテジーとして、1970年代から、「キーワード法」というものが考案されてきました。

例えば、"occur"という単語を覚えたいとき、"occur" と音声の近い日本語を考えます。この場合、「おかあさん」など。これがキーワードになります。
その次にキーワードと"occur" の意味を結びつけ、「おかあさんに事故が起きる」のような文を作り、頭の中で「おかあさんに事故が起きる」というイメージを思い浮べます。
イメージしたものを絵に描けば、さらに記億は促進されます。


 単純なようですが、この記億方略は、綿密に計算されているのです。

(1)音声情報同士の結びつけ。
すなわち、ターゲットワード(この場合"occur")の音声情報と似た音声情報をもつ日本語を結びつける。
(2)意味情報同士の結びつけ。
すなわち、この場合 "occur" と "起きる" を結びつける。
(3)イメージの結びつけ。
すなわち「お母さんに事故が起きる」というイメージを頭に描く。

 3つの相互作用で、単語の定着を促進し、その効果は決してあなどれません。


 また、誤解が多いのは、キーワード法と単なる「語呂」とは違うものだということです。あるとき、授業で私が“temperature”を発音したら、ある女子生徒が「てんぷらちゃん!」と大きな声で言い、クラス中で爆笑になったことがありました。
このように "temperature" を「てんぷらちゃん」と覚えるのは「語呂あわせ」であり、「キーワード法」ではありません。なぜなら、ここには、音声情報同士の結びつきはあるのですが、意味情報の結びつきがなく、さらに、"temperature”と「てんぷらちゃん」の間にイメージの結びつきもないからです。ですので、このように覚えても、キーワード法と比較した場合、格段に忘れやすくなります。

 キーワード法は、生徒が慣れないうちは、先生が与えてもよいのですが、できれば、生徒が自分で考えたもののほうが忘れにくいといわれています。また、イメージが奇妙なものほど、記億に残りやすいともいわれています。

 
 少し、練習してみましょう。
以下の単語でキーワード法を用いた文を読者のみなさんも作成してみてください。

1 temprature
2 hear
3 deny
4 lie

これ以外の単語でもよいので、読者の皆さんからの、キーワード法を用いた単語の覚え方を募集します。コメントに入れてください。私の主観で座布団をお贈りいたします(笑)


つぎに、実際に生徒に作らせたもの中で私が選んだ最高傑作をご紹介しましょう。
die という単語を使ったものです。なんだとお考えでしょうか?

■「死ぬほどだいすき」 

座布団 10枚!


<練習問題の解答例>
1「てんぷらちゃんを揚げる温度を測る」
2「そのニュースを聞いてひやーっとした」
3「犯人は私でない否定した
4「らい客(来客)は、うそをついていた」

 
 注:来月は「ホールドの効果」という語彙習得理論でも、あまり取り上げられない理論とその実践について書く予定です。



「ホールド」の効果

コラム

2010年4月21日

 単語は一度や二度覚えようとした程度ではすぐに忘れてしまうのはごく普通のことです。このように、まったくの新出語ではないけれども、まだまだその記憶が不十分な単語には「ホールド」という効果を利用した語彙活動が有効です。

 定着があやふやな単語(input)を、一旦、作業記憶(working memory)の中にとどめ、その単語をより深く処理させるのが、「ホールド」です。

この説明だとわかりにくいかもしれませんが、以下のことを比べて見てください。

(1)先生が覚えさせてきた「訪ねる」という単語を日本語でいい、生徒はその単
語“visit”をすぐに繰り返して言う。
(2) 先生が覚えさせてきた「訪ねる」という単語を日本語でいい、生徒は15秒
頭の中でホールド、15秒後に“visit”と口に出すようにさせる。

(1)と(2)の違いはお分かりの通り、(2)では生徒は頭の中で“visit”という単語を15秒ホールドするので、その間に単語をじっくりと処理し、より深く頭の中に刻むことが可能です。

このことは文レベルでも同様です。新出語を文中で覚えさせたいときは、以下のやり方がより効果的でしょう。私がdelayed dictation と呼んでいる活動です。
 
ターゲットワード “visit”
(例文)I will visit my uncle.

この例文を先生が読み、生徒はそれを15秒ホールドしてからディクテーションする。

生徒はこの間にターゲットワードを含め、この文を深く処理することが可能になります。

ではホールドの効果をもたらす語彙活動を二つあげてみましょう。

■20秒待って
 先生が覚えさせてきた単語「訪ねる」「おじさん」「森林」と日本語でいい、生徒は20秒頭の中でホールド、20秒たったら、先生の合図で、その3つの英単語を書く。

■ ゆっくり読んで
先生が、あるレッスンの新出語を、5語ポーズをあけてゆっくりと読みます。
例 work・・・・・library・・・・textbook・・・・・math・・・・・read

生徒は、頭の中で、(work), (work, library), (work, library, textbook), (work, library, textbook, math) (work, library, textbook, math, read)のように頭の中に一語ずつ増やしながら、ホールドします。
先生が「“数学”という単語は何番目でしたか」と質問するので、4番目と解答します。


実際にやってみると、かなり、頭をつかいます。
逆にいうと、それだけ定着度も高いということです。

あんまりとりあげられない、「ホールドの効果」ですが、ぜひお使いになってみてください。



「ほぼ定着した語を使えるようにするには?」

コラム

2010年5月27日

 前回のコラムでは、以下のような単語に関しては「ホールド」という効果を利用した、ゆっくりとした語彙活動が有効、と述べました。

■全くの新出語ではないけれども、まだまだ記憶が不十分な単語


 読者のみなさんからは、「活動は速ければよいものではないのだ」、「テンポよくやるばかりが活動のやり方ではないのだ」というご感想が多くありました。

 みなさんがお感じのとおり、活動のスピードが速いほうがよい、テンポよくやったほうがよい時、というのがあります。

 それは、

■「学習者の中でほぼ定着がなされた単語」を用いて、実際英語を話すときのスピードで、口から出てくるように訓練する時

です。

 頭の中にほぼ定着した単語を「使える語彙」にさせたい時は、活動のスピードは速いほうが効果的です。

 速いスピードで単語を口に出す練習は、脳から出される「この単語を口に出しなさい」という命令のスピードを速めます。言い換えれば、脳の中にある単語から口に出すパス(道筋)を強化してくれます。

 このパスはその単語を使えば使うほど強化され、スムーズな発話につながります。逆に、しばらく使わないでいると弱くなってしまいます。


 
 では、このような訓練はどのような語彙活動でなされるのでしょうか?

 通訳の訓練法で、「クイックレスポンス」というものがあります。先生が日本語を言い、生徒はすぐその日本語に当たる英語を言う。この訓練を繰り返すと、脳からの「この単語を口に出しなさい」という指令が速くなり、口に出すまでのパスが強化されます。

 このコラムの第一回で書いた、フラッシュカードを使って、テンポよく、日本語から単語を言えるようにする練習もこの段階で使うと効果的です。

 文単位なら、文章の速読みやシャドーイングも、この段階において、非常に効果的です。


 このように、学習者にとって、どの程度、その語彙が定着しているか、の段階に応じて語彙活動のスピードを調節することが必要といえましょう。



中学入門期、高校再入門期の音声指導―フォニックスとライミング

コラム

2010年6月25日

読めない単語は覚えにくいといわれています。ローマ字読みで覚えてしまう生徒もいますが、それではその単語を発話することはできません。ですので、単語の読み方を教えることは非常に重要になってきます。
 
私は単語が読めない生徒には、フォニックスを教えています。フォニックスとは、"つづりと発音の関係性"のことです。たとえば、「ea」というつづりは「イー」と発音することが多い、などのルールです。
 
tea の読み方がわかれば、sea, pea, beat, heat, read などが読みやすくなるでしょうし、つづりも覚えやすくなるはずです。

 ただし、授業時間の限られた、中学、高校では、すべてのフォニックスを教えるのは時間的に無理があるように思われます。ですので、代表的なフォニックスだけを取り出し、一時間(50分)の授業の最初の5分程度を割いて、少しずつ教えるのがよいと思われます。

 押さえておくべき代表的な(頻度の高い)フォニックスは以下のとおりです。

■母音一文字    "a", "i" "u", "e","o" の読み方

■母音二文字以上  "ee", "ea", "oo", "ow","air", "ear" の読み方

■子音字      "sh", "ch", "ph", "th", "ck", の読み方

 

この記事では、母音一文字に関して、読み方の練習方法の一例を取り上げてみます。

■ライミングでタイミング 
 「ライミング」という手法があります。ライムする単語を以下のように、先生が用意しておきます。

<例>
"a"
パターン1 bat, cat, fat, hat, mat, pat, rat, sat
パターン2  bake, cake, lake, make, take, wake
パターン3  ball, call, fall, hall, mall, tall, wall

"i"
パターン1 bit, fit, hit, pit, sit, wit
パターン2 bike, hike, like, Mike
     
まず、先生が、読み方のルールを教えたあと、「bat, cat, fat, hat, mat, pat, rat, sat」
とテンポよく、読みの練習をします。

 その後は、ペアを組み、ペアのAさんが2分で「bat, cat, fat, hat, mat, pat, rat, sat」が何回繰り返せたか、「速読み」にチャレンジします。Bさんは、Aさんが2分で何回よめたかを数えて記録します。AさんとBさんの役割を変えて同じことをします。

「bake, cake, lake, make, take, wake」「ball, call, fall, hall, mall, tall, wall」「bit, fit, hit, pit, sit, wit」「bike, hike, like, Mike」についても、同じような指導をします。中1の入門期のみならず、高校生でも、このような「速読み」は楽しんでやってくれます。


 
もし時間があるようなら、以下のような問題も行うとよいと思います。

■類推で単語を読む
まず、フォニックスのルールから、知らない単語の読み方を類推させてみます。

・次の単語の読み方を考えて、読んでみよう。
1 bad 2 late 3 talk 4 big 5 bite

■類推で単語を書く
つぎは、逆です。すなわち、先生が発音した単語のつづりを予測して書かせます。

・先生が発音する英単語を聞いて、推測で単語のつづりを書いてみよう。

1 (sad) 2 ( hate) 3 (walk) 4 (hip) 5 (kite)


この記事では、[a]と[i] しか、とりあげられませんでしたが、押さえておくべきフィニックスに関して、このような指導を行うと、生徒にとって、単語が「読める!書ける!」という達成感をもってくれます。

ぜひ、お試しください。



文章中で単語をしっかり覚えさせよう!

コラム

2010年8月05日

以前のコラムで、語彙習得には、以下の2つの方法があると書きました。

(1)単語のみを取りだして覚える方法
(2)文章中で単語も覚える方法

(1)は学習者が単語のみを覚えることに集中できるという長所がありますが、この方法は比較的忘れやすく、文章中でのその単語の使い方が学べないという短所があります。

(2)はその逆で、学習者が単語を覚えることにのみ集中出来ないという短所がありますが、文章中でのその単語の使い方が分かるという長所があります。

今までのコラムではどちらかというと(1)の習得方法に触れることが多かったので、このコラムでは(2)の習得方法について書いてみたいと思います。


■音読しながら語彙習得を目指す活動

・虫くい音読テスト
教科書の100語程度の文章を選び、覚えさせたい単語を(   )にして、(   )を埋めながら、1分以内で読めるように練習してきなさいと指示します。

実際のテストでは、授業1時間を使い、廊下に生徒を一人ずつ呼んで、「虫食い音読」が1分以内にできるかどうか、テストします。

テスト日には、休み時間に、生徒が2,3人でその文章を暗誦しながら廊下を歩いている姿を見つけたりすると、うれしいものです。

このテストの後、(   )にした単語を、それだけで単語テストを行うと定着も倍増します。つまり、(2)の指導法のあと、(1)の指導法で、語彙習得をさらに促進するわけです。

■筆写しながら語彙習得を目指す活動

・コピーイング4.3.2
どんなクラスでも、熱心に、静かに取り組んでくれるのは「コピーイング4・3・2」という筆写活動です。

教科書本文を最初は4分で書き写し、2回目は3分で書き写し、3回目は2分で書き写し、最後は日本語訳のみを見て、出来るだけ本文を復元する、というものです。

この活動は、誰でも参加でき、文章全体とともに、単語も覚えることが可能です。書き写す時間や文章の長さは、生徒によって調整します。

この活動のあとも、覚えさせたい語を取り出して単語テストを行うと、定着が促進されます。つまり、(2)の指導を(1)で補います。

■dictaion しながら、語彙習得を目指す活動

・delayed dicatation
先生が、教科書で習った文を一文ずつ読み上げます。最初の一文を読んだら、生徒はその後すぐに、dictaion するのではなく、先生が15秒数えて、「はい、書いて」と言ったらdictaion をします。

15秒間、生徒は英文を頭の中でホールドしておかなければなりません。このことにより、より一層の英文の定着(新出語の定着を含む)が図れます。

この活動のあとも、覚えさせたい語を取り出して単語テストを行うと、定着が促進されます。やはり、(2)の指導を(1)で補います。


音読、筆写、dictaion しながら、語彙習得も促すことができれば、語彙活動だけに時間を割かれる、ということもないので、一石二鳥ではないでしょうか?

 
「音読・筆写指導でしっかり語彙定着」は、今年のELEC同友会語彙指導研究部会のテーマでもあり、10月31日の全国大会で、発表される予定です。

ご期待ください。



「夏休み明けの授業を盛り上げる!! 簡単"単語ゲーム"特集」

コラム

2010年8月29日

 今年の夏は、特に暑いですね。
冷房のない学校の教室では、生徒がだるそうにしていることもよくあるかと思います。

そこで、今月は「夏休み明け」特集をお送りします。暑くても授業が盛り上がる簡単"単語ゲーム"特集です。

授業の最初に生徒を活気づける意味で使ってもよいですし、授業1時間くらい、ゲームで楽しんでもよいかもしれません。

 ただ、ゲームとはいえ、語彙の定着を促進するものをご紹介します。基本的に既知語の復習を目的とします。既知語も使わないでいると、忘れてしまうため、折にふれて復習するというメモリーストラテジーは、語彙習得上、重要なものです。


では、ゲームを紹介しましょう。

(1) 授業の最初10分程度で盛り上がる単語ゲーム
■単語じゃんけんゲーム
 ペアを組みます。普通のじゃんけんは、たとえば自分がパーを出し、相手がチョキを出すと、自分の負けになりますが、単語じゃんけんゲームではそうではありません。
パーで負けたら、pで始まる単語を即言います。言えたら、負けにはならず、じゃんけんを続行できます。
同様に、グーで負けたら、gで始まる単語を即言います。チョキで負けたらcで始まる単語を即いいます。言えれば、負けにはならず、じゃんけんを続行できますが、つっかえて言えなかった場合は、負けとなります。
 いきなり、p,g,cで始まる単語を言うのは、なかなか難しいので、じゃんけんをする前に、各自、p,g,cで始まる単語をいくつかブレーンストーミングさせておきます。
このゲームはやり方がシンプルで、生徒が実際に動くので、授業が盛り上がります。
(注:じゃんけんは英語だと、グーとチョキが両方sで始まる単語になってしまうので、p,g,c とします。)

■最初はTEA(岡田,2010)
 しりとりゲームです。ペアで行い、時間制限を設けて競争にすると盛り上がるゲームです。
ふつうのしりとりは、tea→ apple→ eat → teacher→read, のように最後の一文字をしりとりしていきますが、このしりとりは tea→ eat→ ate→ telephone→ net のように最後の二文字をしりとりします。ただし、二文字をしりとりするのはかなり難しいので、その二文字はさかさまになってもよいこととします。
(例) tea→ eat→ ate→ teacherread.
 制限時間10分以内に一番多く出来たペアが勝ちとなります。


(2)授業を1時間使って、体を動かす、単語ゲーム
■椅子とりゲーム  
 普通の椅子とりゲームは、音楽を流しておいて、音楽をとめたら椅子を取り合う、というものですが、単語ゲームとしては、先生が、あるカテゴリーの単語、例えば果物の単語を言い、生徒はその間は椅子のまわりをぐるぐるまわっています。時を見計らって先生が、違うカテゴリーの単語、たとえば、「desk」などといったら、椅子を取り合います。
いろんなカテゴリーでゲームができるので、何回でも好きなだけ、ゲームが繰り返せます。

■フルーツバスケット
 普通のフルーツバスケットは、「~な人」と言って当てはまる人同士が席を移動し、椅子を取り合います。単語ゲームとしては、先生が、「girl」といったら、女の子全員が席を移動、椅子をとりあいます。先生が「tennis player」といったら、テニス部の生徒が席を移動、椅子を取り合います。先生が「フルーツバスケット!」と言うのもありです。
3回、椅子がとれなかった生徒は、なんらかの芸をしてもらいます。
どちらのゲームも時間をとりますが、生徒が授業に気乗りしない夏休み明けにはおすすめゲームです。


<引用文献>
「少しの工夫で効果4倍!魔法の英語語彙指導アイデア」(2010)岡田順子 明治図書出版



日本人高校生の語彙学習ストラテジーと効果的語彙学習法 ~その1~

コラム

2010年10月03日

「日本人高校生の語彙学習ストラテジーと効果的語彙学習法 ~その1~」では、まず、日本人高校生が頻繁に使用している語彙学習ストラテジーについての調査結果を示し、そこから浮き上がる、ストラテジー使用の問題点について、お話しようと思います。

<日本人高校生の語彙学習ストラテジーの使用状況>
Okada (2006)は、日本人高校1年生104名を対象にどのように語彙学習をしているかについて調査しました。

 語彙学習ストラテジーには以下の3種類があります。

(1)メタ認知ストラテジー
 語彙学習に関して目標や計画を立てるストラテジー。
例えば、3000語覚えよう、とか、一週間に10語ずつ覚えよう、とかいうストラテジーのことです。

(2)認知ストラテジー
 語彙をいかに覚えるかのストラテジーで、例えば、何回も書いて覚える、辞書を引く、単語の意味をイメージする、発音を勉強する、連想する語をあげる、自分のことと照らし合わせて覚える、などたくさんのストラテジーが含まれます。

(3)社会的ストラテジー
 なんらかの形で友達と一緒に語彙学習をすることで、例えば、友達と単語クイズを出しあう、単語ゲームをする、などのストラテジーのことです。


 この3種類のストラテジーに関して、65項目の調査用紙を作成、高校1年生104名にどのストラテジーを頻繁に使用するか、五段階で回答してもらいました。

■ストラテジー使用の特徴は以下の通り。

(1)メタ認知ストラテジーはほとんど使用されていない。

(2)認知ストラテジーは「何回も書いて覚える」がほとんど全員に使用されており、他のストラテジーと比べると、圧倒的に多い。他のストラテジーは「辞書を引く」「発音を覚える」などがやや使用されているが、それ以外ほとんど使用されていない。

(3)社会的ストラテジーもほとんど使用されていない。


■これらの特徴を踏まえ考察すると、

(1)まずメタ認知ストラテジーを使用しないということは、自分の語彙学習について、自主的に目標や計画を立てて取り組むのではなく、受け身の姿勢で取り組んでいるといえます。それは、おそらく、学校で単語帳を与えられたり、定期的に単語テストをしたりすることも多いので、自分で目標や計画を立てる必要がない、ということなのでしょう。

(2)次に認知ストラテジーについて考えてみると、「何回も書いて覚える」というストラテジーは、非常に頻繁に使われており、実際生徒の単語学習をみても、ノートに単語を10回ずつ書いてあったりします。また単語を10回ずつ書いてきなさい、という宿題が出ることもあるでしょう。しかしこのストラテジーは単語を忘れやすいだけでなく、何回も書いているうちに、だんだんと間違ったスペリングになったりして、下手をすると間違いを覚えることにもなりかねません。

(3)社会的ストラテジーがほとんど使用されていないことから、語彙学習は「一人でやるもの」という固定観念もあるようです。


 この結果を踏まえ、高校生に教えたい語彙学習ストラテジーを来月のコラムでご紹介したいと思います。


<引用文献>
 Okada, J. (2006). Vocabulary Learning Strategies for Japanese High School EFL Students. アルク。Tokyo.



日本人高校生の語彙学習ストラテジーと効果的語彙学習法 ~その2~

コラム

2010年11月09日

 前回のコラムでは、高校一年生104名の語彙学習ストラテジー使用の調査結果に基づき、

(1)受け身の学習が多いこと、
(2)「何回も書いて覚える」学習ストラテジーが非常に多いこと、
(3)また語彙学習は一人でやるものという意識が強いこと

などを明らかにしました。

 今回のコラムでは、その結果を受けて、どういう指導をすれば、高校生がもっと自主的かつ効果的に語彙を学習出来るかについて書きたいと思います。


■受け身学習という問題について。

 学校で単語帳を持たせ定期的に単語テストを実施するのは、もう既に多くの学校でなされていると思います。
鶏と卵の関係のように、生徒が単語の学習を自主的にしないから、学校で単語テストをするのか、学校で単語テストをするから、生徒が自主的に単語を勉強しなくなるのかは難しいところでしょう。

 学校において、単語テストをやめるのは現実的とは言えませんので、それ以外の部分で生徒が自主的に単語を学習する機会を作るとよいと思います。
 例えば、自分の身のまわりのことや、趣味のことや、部活のことなどについてのワードマップを作らせたり、洋楽が好きな生徒なら、好きな歌詞の単語を集めさせたり、といったことです。

 一週間にいくつ、などのような指定はしません。期限内にいくつ、という指定もしません。簡単に言うと、生徒が自主的単語学習をはじめるきっかけ作りとフィードバックをするのが、先生の役割になります。
 このようなやり方をストラテジートレーニングと呼んでいます。


■「何回も書いて覚える」のような処理の浅い、忘れやすい語彙学習ストラテジー使用についての代案

 多くの場合、生徒は「何回も書いて覚える」ストラテジーしか知らないことがほとんどです。なので、もう少し深いストラテジーをすることで、ある程度の改善が見込まれます。

 例えば、何回も書いて覚えるよりは、自分で「単語ノート」を作成し、日本語を見て英語が言えるか、書けるか、またはその逆は大丈夫か、などのリコールプロセスは、単純ですが、「何回も書いて覚える」よりはずっと深い処理になります。

 加えて「単語ノート」に絵を書いてみる(イメージ法)、身近な例文を付け加える(自己関与効果)など、その単語に関する自分の好きな情報を付け加えさせるのも効果的です。


■語彙は一人で学習するものという思い込みについて

 単語学習もペアやグループでやるほうが記憶を促進する場合が多いことから
(学習者の好みの学習スタイルにもよりますが)、
英文の中の未知語の推測をペアで行う、お互いの単語ノートを交換し、友達同士でクイズを出しあう、などのことが出来るように教師側がサポートするとよいでしょう。


 まとめとして、いえることは、生徒は語彙学習のさまざまな方法を単純に知らないことがほとんどなので、教員が自分の生徒に見合う語彙学習ストラテジーを提示してあげることによって、生徒の自律的語彙学習を促進することが可能でしょう。



単語テストの工夫~その1~

コラム

2010年12月03日

 単語テストのやり方は

・英単語の意味を日本語で書かせる
・日本語から英単語を書かせる

というものが多いですが、やり方のバリエーションはさまざまです。

大きく分けて、
(1)単語のみでテストをする方法
(2)文章中で単語テストをする方法
の2つがあるので、各々に分けて書きたいと思います。

今月は、(1)に絞って様々な単語テストの工夫を書いてみます。

■「絵」からそれに相当する英単語を書かせる。
 この方法は、ある単語のイメージを膨らませる効果があり、特に、学習スタイルの視覚ラーナーには非常に効果が高いテストです。

■音声から英単語とその意味を書かせる。
 読めない単語は覚えにくいことから、音声を聞かせて、その英単語を書かせる訓練をします。ただし、音声から英単語を書くだけですと、意味を理解しているかが試せないので、さらに、その意味がわかるかも書かせるようにします。学習スタイルでいえば、聴覚ラーナーに効果が高いテストです。

■英語での言い換えから、その英単語と意味を書かせる。
 この方法は、日本語の意味の代わりに、英語での言い換えから英単語とその意味を書かせるテストです。
 学習者が何の英単語かを深く考えなければならない分、単語のさらなる定着を促進します。


■連想テスト
 ターゲットとなる英単語を連想させる単語を5つ位書いておき、それらから連想する英単語とその意味を書かせるテストです。連想語が定まりにくい場合は、選択肢をつけるとよいでしょう。

問題例:high, hill, sea, climb, river <解答> mountain

■仲間外れを探すテスト
 5つ位の単語群の中から、何らかの理由で仲間外れになる単語を探すテストです。

問題例:bus, train, chair, plane, taxi, <解答> chair


■仲間同士を結ぶテスト
 仲間外れテストの逆で、10の英単語の中からペア同士になる英単語を探させるテストです。

問題例:walk, basketball, guitar, run, notebook, flute, math, pencil, English, baseball
<解答>walk run, basketball baseball, guitar flute, math English, notebook pencil

各々のテスト方法から、生徒の実態やテストの目的に合わせたものを上手く選んで使用することが大切と言えましょう。


(2)の文章中で単語テストをする方法は来月のコラムでまたご紹介する予定です。



単語テストの工夫~その2~

コラム

2011年2月06日

前回のコラムでは、単語のみで、テストをする方法のいろいろなバリエーションをご紹介しました。

今回のコラムでは、文章中で、単語テストをする方法を2つご紹介したいと思います。


■3レベル虫食い音読テスト
覚えさせたい単語を(   )にしておき、30秒以内で(  )の新出語を補って読めるよう、練習してくるようにと指示します。
実際のテストでは、授業時間1時間を使って、生徒一人ずつ、廊下に呼んで、
(   )を埋めて30秒以内に読めれば合格というテストです。

以下の英文は中1用ですが、生徒のレベルに合わせて、3レベルの虫食いを用意し、
好きなものを生徒自身に選ばせます。Slow learnersは、レベル1、英語が得意な生徒はレベル3を選ぶでしょう。

もとの文章(下線部が新出語)
My name is Tanaka Yukiko. I'm in class 1-A. I like your English classes. You talk about your country. Halloween is very interesting. You are a popular teacher. Please come to our class tomorrow and talk about customs of your country.

レベル1
My name is Tanaka Yukiko. I'm ( ) class 1-A. I like your English classes. You
( ) about your country. Halloween is very ( ). You are a ( ) teacher. Please come to our class ( ) and talk about ( ) of your country.

レベル2
My ( ) is Tanaka Yukiko. I'm ( )class 1-A. I ( ) your English classes. You ( ) about your ( ). Halloween is ( )( ). You are a ( )( ). Please ( ) to ( ) class tomorrow and ( ) about ( ) of your ( ).
.
レベル3
( )( ) is Tanaka Yukiko. I'm ( ) ( )1-A. I ( ) your ( ) classes. You ( ) about your ( ). Halloween is ( ) ( ). ( ) are a ( )( ). Please ( ) to ( ) class ( ) and ( ) about ( ) of your ( ).


■虫食いコピーイングテスト
上記ステップ1のものを用いて、穴埋めを文字で行います。先生の採点が大変な場合は、ペアで交換して、採点させて、提出させるとよいでしょう。


 私の経験では、虫食い音読テストは、ひとりずつ、面接方式で行うので、クラス全員の取り組みがよく、生徒からも、「あのときの英文はよくおぼえている」となかなかの評判です。
 3レベルあり、生徒が自分に合うものを選べるのも長所かと思います。



カテゴリー

最近の記事

Recent Comments

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

世界最大規模のタイトル数を擁するペンギンリーダーズ。

多読授業をはじめ、英語副教材として、図書館用蔵書として、また純粋に英語での読書を楽しみたい方にも、ペンギンリーダーズならではの豊富なラインナップでそのニーズにお応えします。

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

生徒を世界デビューさせる一冊を、あなたのワンクリックで

英語教材のオンラインショップ「ELTBOOKS」 : 各種リーダーズと教材を割引価格で

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

質の高い、外国人英語講師を雇いたいなら…

日本在住の外国人英語教師のためのサイト「ELT News」の求人広告をご活用ください。ELTBOOKS.comのお客様は、求人広告欄が1ヶ月間無料

月々たった3,665円(一日相当約122円)の日刊英字新聞。

月々たった3,665円(一日相当約122円)の日刊英字新聞

最新ニュースを英語でチェックすれば、日常生活&ビジネスに役立つ英語力がグンッとアップ!

 
 

イベント情報