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語彙習得理論を“現場目線”で活かす!

実際に中学生・高校生の指導にあたってきた教師が、中学・高校現場目線で、語彙習得理論に基づく効果の高い語彙指導・語彙活動のあり方を探る。

「ホールド」の効果

コラム

2010年4月21日

 単語は一度や二度覚えようとした程度ではすぐに忘れてしまうのはごく普通のことです。このように、まったくの新出語ではないけれども、まだまだその記憶が不十分な単語には「ホールド」という効果を利用した語彙活動が有効です。

 定着があやふやな単語(input)を、一旦、作業記憶(working memory)の中にとどめ、その単語をより深く処理させるのが、「ホールド」です。

この説明だとわかりにくいかもしれませんが、以下のことを比べて見てください。

(1)先生が覚えさせてきた「訪ねる」という単語を日本語でいい、生徒はその単
語“visit”をすぐに繰り返して言う。
(2) 先生が覚えさせてきた「訪ねる」という単語を日本語でいい、生徒は15秒
頭の中でホールド、15秒後に“visit”と口に出すようにさせる。

(1)と(2)の違いはお分かりの通り、(2)では生徒は頭の中で“visit”という単語を15秒ホールドするので、その間に単語をじっくりと処理し、より深く頭の中に刻むことが可能です。

このことは文レベルでも同様です。新出語を文中で覚えさせたいときは、以下のやり方がより効果的でしょう。私がdelayed dictation と呼んでいる活動です。
 
ターゲットワード “visit”
(例文)I will visit my uncle.

この例文を先生が読み、生徒はそれを15秒ホールドしてからディクテーションする。

生徒はこの間にターゲットワードを含め、この文を深く処理することが可能になります。

ではホールドの効果をもたらす語彙活動を二つあげてみましょう。

■20秒待って
 先生が覚えさせてきた単語「訪ねる」「おじさん」「森林」と日本語でいい、生徒は20秒頭の中でホールド、20秒たったら、先生の合図で、その3つの英単語を書く。

■ ゆっくり読んで
先生が、あるレッスンの新出語を、5語ポーズをあけてゆっくりと読みます。
例 work・・・・・library・・・・textbook・・・・・math・・・・・read

生徒は、頭の中で、(work), (work, library), (work, library, textbook), (work, library, textbook, math) (work, library, textbook, math, read)のように頭の中に一語ずつ増やしながら、ホールドします。
先生が「“数学”という単語は何番目でしたか」と質問するので、4番目と解答します。


実際にやってみると、かなり、頭をつかいます。
逆にいうと、それだけ定着度も高いということです。

あんまりとりあげられない、「ホールドの効果」ですが、ぜひお使いになってみてください。



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コメント

今回のホールドの考えかたは私にとってはとても新鮮は方法でした。いつも、授業では瞬時に答えることを強いているため、人間の脳の中でしばらくの間、言葉を深く処理させる作業は生徒に試してみたい方法です。さっそく月曜の授業でやってみます。ちょうど文型の文法事項を終え、教科書の内容に入っていくため、新出単語ができます。フラッシュカードと併用させながら、試してみます。いつも、私にとっては真新しく、かつ理論的で納得できる方法ばかりです。
日本語のスピーチなども、間を取ることが聞き手の心に内容がしみていくと同じ考え方のように感じました。あまり、せこせこした授業にならないように、時にはこの方法を取り入れてみます。

コラムを拝見させていただきました。大変興味深いものと感じました。私は塾で講師をしているので実際に取り入れてみようと思います。

一つ質問があります。
ホールドの時間を15秒に設定した理由はなぜですか。

木戸さま、

コメントありがとうございます。
ホールドの長さは、15秒でなくとも特に構いません。
活動内容に合わせて、あるいは学習者の習熟度のあわせて少し変えます。しかし、私の経験ですと、
10秒って案外短いです。ですので、15~20秒前後がよろしいかと思います。

授業をテンポ良く行うことしか頭になかった自分としては、とても参考になりました。

単語単位から導入してみて、後々チャンク・文単位でも導入してみようと思います。

TOEICも含めて現実の世界では、言われた瞬間に理解できなければ、役に立たないと教えられただけに、このホールドの方法は盲点です。実際には、ホールドの状態では、単に待っているのではなく、頭の中で何度となく発音(?)が繰り返されていて、逆にその時間が記憶の定着時間に当てられているのですね。

特に、頭の中で一語ずつ増やしながら行う方法においては、その頭の中で繰り返している発音というか記憶の思い出し作業が、何と15回もあり、かなり効果がありそうだと感じました。

いつも為になる記事をありがとうございます。

今回も興味深くコラムを読ませていただきました。

私自身、授業では瞬時に答えさせる活動を行うことが多かったので、月曜日の授業でぜひ試してみたいと思います。

授業を行うときに、常々生徒に頭を使わせる活動をしたいと感じながら、なかなか良い活動を思いつかなかったので、大変参考になりました。ありがとうございます。

認知的なスタンスから考えても、holdは有効な指導法だと感じました。是非、実践してみたいと思います。

いつもためになる記事有難うございます。
早速試してみます。

ホールドしていると頭の中で確かに何度も何度もリピートしますね。
負荷も程良くかかって覚えてもらう方法に最適ですね。

今回も興味深く拝読いたしました。ありがとうございます。

実際に、アルバイトをしている塾で試してみましたが、受講生の方々にも好評でした。受講者からは、「疲れるけど、定着している気がする」という感想をいただきました。

今回のコラムで興味を持ったのは、「ホールド」をすることが深い処理を促すという点です。私の理解では、作動記憶内のリハーサルでは維持リハーサルと精緻化リハーサルがあり、後者が記憶の定着に関係しているのでと思うのですが、ホールドの際には精緻化リハーサルが行われているのでしょうか。教師の日本語のCueに対して、英語を繰り返すと考えると、意味に焦点があるので精緻化リハーサルと考えられると思いますが、15秒間繰り返す作業というのは、電話をかけるときに「電話番号を心の中で繰り返す」ように、維持リハーサルに近いようにも感じます。
また、岡田先生のコラム「深い処理仮説」から考えると、英語を15秒間繰り返すというのは、浅い処理に近いようにも感じます。

「ホールド」が深い処理につながるという点がまだ明確に理解できていいないので、その点についてご説明していただけたら幸いです。また、ホールドの際に学習者が意識すべき点はありあますか。ご教授いただけたら幸いです。

宮里様

コメントとご質問ありがとうございます。

維持リハーサルと精緻化リハーサルは、必ずしも、完全に2つに分化したものではないと思います。
なので、維持を繰り返しながら、
精緻化している、といえると思います。

また、「深い処理」との関係ですが、「意味に焦点があること」という点からは、深い処理仮説と合致すると思います。また、「深い処理」を促す活動は、他にもいくらでもあるのですが、15秒ホールドするのとしないのとでは、やはり、ホールドしたほうがその語を「深く」処理するのではないでしょうか。

使う単語のレベルによっても、維持リハーサルの部分が強くなったり、精緻化リハーサルの部分が強くなったりもします。
その学習者にとって、比較的、難しいレベルの単語だと、維持リハーサルの要素が強くなり、定着しかけた単語だと精緻化リハーサルが強くなると思われます。


語彙指導においては適度な負荷が必要だと改めて思いました。
即答させる作業とホールドを併用した場合、生徒が飽きず、メリハリのある指導ができるのではないかと思いました。
ありがとうございました。

質問への解答ありがとうございました。ホールドの効果に対する理解が深まったと思います。

>維持リハーサルと精緻化リハーサルは、必ずしも、完全に2つに分化したものではないと思います。
なので、維持を繰り返しながら、
精緻化している、といえると思います。

という点とホールドしている間にじっくりと処理し、より深く頭に刻み込むことができるという点が私の中でつながり、納得いたしました。

また、定着しかけの単語だと精緻化リハーサルするが強くなるというのにも納得しました。認知資源と関係していると推測しています。

丁寧なご説明ありがとうございました。私は、ホールドの活動を新出単語の定着に使っていたので、もう少し後の活動に取り入れたいと思います。


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