エッセイライティングと語彙習得~生徒が作るオリジナルな単語テスト~
コラム
2009年9月07日
コラム
2009年9月07日
高校のライティングの授業で、1週間に一度程度の割合で、100語程度のエッセイを書かせていました。自分が書きたいことを書かせようと思い、教科書のレッスンの内容とはあまり関係なく、自分がそのとき書きたいと思ったことを書かせていました。
学校生活などの身近な話題から、中には、「環境問題」などの社会問題についての自分の意見を書くことにチャレンジする生徒もいました。
どんなトピックを選んでも、知らない単語というものは必ず出てきます。 授業内で書くことを原則とし、宿題にはしませんでしたし、また、エッセイを書くときは、辞書を引かせない方針でしたので、あちこちで、「先生、これ、英語でなんていうの?」と聞かれます。その質問への対応は大変で、教室中を走りまわるようにして質問に答えたものです。
ここで、問題としたい点は、生徒が「先生、これ、英語でなんていうの?」と聞いた単語のリストを作らせておき、そのリストを用いて、一人ひとりオリジナルな単語テストを作成する、という点です。たった一回エッセイでその単語を書いたくらいでは、すぐに忘れてしまいますが、その単語を用いて、自分だけの単語テストを実施すると、かなりの確率で忘れません。
例を用いて説明してみましょう。
<生徒A君が書いたエッセイ(下線部はこの生徒が知らなかった単語)>
Today, the world has many problems. For example, nature problems, trash problems, etc. We are not interested in these problems. But I think we have to be interested in these problems. If we take action to solve them, this world will become nicer.
This world “earth” was very beautiful long time ago. People were born in this place and they destroyed beautiful nature. I think that people must protect nature. Then, we will certainly make the world better.
このエッセイを書くために、教員(私)に聞いた単語(下線部)をリストアップさせておきます。
A君の単語リスト

何回かエッセイを書いていくと、次第にリストアップされた単語がたまってきます。新しい単語を使う傾向の強い生徒とそうでない生徒がいますので、全員が10個というわけには行きませんでしたが、大体クラス全員のリストが単語10語くらいになった頃(およそエッセイ2つ分)で、自分で以下のフォームに単語テストを作らせます。10以上ある場合は、自分で10個選ばせます。
A君の自作単語テスト

一週間後にテストをすることを予告し、テスト用紙は回収します。生徒は自分の手元にある単語リストで勉強して、テストにのぞみます。
テストでは、解答欄2のほうに答えを書かせ、教員が採点して右側のみを切り取って返却します。答えがひとりひとり違うので、採点には多少時間がかかりますが、生徒にとっては、自分で書いたエッセイの単語は覚えやすいので、普通は全員がほぼ満点です。
さらに三週間後、左側を使って抜き打ちでテストをしてみます。正解率を平均するとおよそ77%であり、かなりの割合で長期記憶に入っていることが確認できました。
この単語テストで記億が高い理由は2点あげられます。そのどちらかが抜けてもおそらく語彙習得率は下がると思われます。
(1)エッセイを書いているときは、文章全体を書くことに注意が向くので、単語のみには集中できない。したがって、エッセイを書かせるだけで終わりにした場合、せっかく未知語を使っても一過性で忘れ去られることが多い。なので、自分が書いた未知語のみに焦点を当てた単語テストを作成し、単語のみもう一度学習させるためのテストを行う。
(2)自分の書いたエッセイの未知語は、自分の考えや経験と深くむすびついており、文脈も覚えていることから、生徒はその単語を覚えやすい。
1年間続けてこの活動を行い、どの位語彙サイズがのびたかは測ってはいませんが、エッセイライティングと結びつけた生徒が作る自分だけのオリジナルテストは、student-friendly な単語テストではないかと考えられます。
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興味深く読ませていただきました。
この活動を見て思うことをコメントしよう・・・と思ったら、最後の2点にまとめられていましたね。
岡田先生がおっしゃる通り、これを1年間つづければ、かなりの語彙が定着するのでしょう。
指導する教員側は「個別対応」で大忙しでしょうが、少人数のクラスなら、やってみたいと思います。
ライティングに限らず、リーダーのテキストや総合英語の科目でも応用出来そうですね。
生徒に合わせた単語テストとなれば、確かに先生のおっしゃる通り定着度はかなり高いものになると思います。
個別対応は、何かプリントのレイアウトなどでいい方法を考えてみると、教員側の負担が減りそうですね。
この方法は有効かも知れませんね。私も学生時代に日記を書いて添削してもらいながら口頭で語彙の確認をしてもらいましたがほとんどすべて覚えていました。
一度自分から調べたものはなかなか忘れにくいものです。納得ずくで覚えた単語やコロケーションは忘れにくいと思います。特に自分の考えを表現してものに関してはその傾向が強いと思いますので、このアクティヴィティは有効性が高いと思われます。
やっぱり自分の経験に基づくことの方が記憶がいいし、意欲にもつながるんですね。
いろいろ取り入れてみます。
よく練り上げられたアクティビティになっていると思います。このレベルまで考え付かれたことはすばらしいことだと思います。ライティングという経験、先生に知らない単語を聞くというフィードバック(ケアテイカーの存在になるのかなあ)、そして重要と思う単語を選んで暗記する(インテークになるのかなあ)。まさに手続き記憶を引き起こす活動のように思えます。
心理学の世界では、記憶を定着させる行動をリハーサルというそうですが、短期記憶から長期記憶に移行させるには、精緻化リハーサルといって、自分の言葉で整理したりといったことをする必要があるそうです。
また、脳に暗記させる方法として、その覚えることが重要であると思わせる必要があるそうです。
さらには、教育ファシリテーションでは、まず、選択させることが主体的に学習させる一歩であると言われています。
どの理論も適用させているのではないでしょうか。
最後に、質問ですが、単語テストを日英のテストではなく、英日のテストにされた意図は何かあるのでしょうか?
なるほど。勉強になります。
押し付けられる勉強より、生徒が自分で選ぶというところに自主性も感じられますし、生徒にとっても覚えやすいと感じました。
その新出単語を使った自分の例文+辞書の例文を調べてくることで
新しい表現も学べるのかもしれないな。とイメージが湧きました。
凄いです。面白いですね!
僕はまだ教育実習でしか中学校の生徒を持ったことはないのですが、この活動は中学生にも有効なのかな?と思いました!
中学生の場合は、もっと簡単な文になるかもしれませんが、自分の知らなかった単語・表現を新たに書き出し、自分で作ったテストを解く。分かりやすいですし、いけそうな気がしました!
塾で、ちょっとアレンジして試してみようかと思います。
こんにちは。
コメントしようと色々考えれば考えるほど、このアクティビティが非常に細かく考えられていることがわかってきます。
例えばこの方法論を応用して、
「教科書や授業で行った内容」に関して、自分の経験と結び付けてエッセイを書くように指示したら、
生徒の自主性は少し落ちますが、使用する語彙が多少統制されて、(既に習った内容の語彙が作文中で使用されるという意味で)まだ語彙の乏しい中学生やあまりレベルの高くない高校生は多少書きやすくなるかも・・?とか考えたりしました。
10個挙げる単語にも既出で記憶が曖昧だったものが含まれて、処理が深くなるのではないでしょうか。
これからもおもしろいコラムよろしくお願いします!応援してます。
(2)のようにストーリー性を持たせて、記憶させるといつまでも覚えていますね。
高2、荒れているクラスでやってみようかな、って思いました。
(手を動かしていると幾分いいようですが、10分程度が限度です)
興味深い教え方ですね。
ネイティブスピーカーと添削授業が出来れば、最高だと思います。
おうちゃん様
コメントをありがとうございました。
正直、私はそこまで考えておりませんでした。
最後のご質問の部分にお答えしますと、エッセイで単語を書かせていますので、テストの妥当性からいうと日本語から英単語に直すテストのほうがよろしいと思います。しかしながら、生徒の実力では、つづりまできちんとおぼえないといけないテストは難しいだろうというごく現実的な判断で英語から日本語に訳すテストにしております。
ご指摘ありがとうございました。