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語彙習得理論を“現場目線”で活かす!

実際に中学生・高校生の指導にあたってきた教師が、中学・高校現場目線で、語彙習得理論に基づく効果の高い語彙指導・語彙活動のあり方を探る。

紙ベースの英和辞書と語彙習得 その1 ~辞書をすみからすみまで使いつくそう~

コラム

2009年9月14日

 多くの高校では、入学時に、紙ベースの英和辞書を生徒に買わせると思います。教員が推薦した辞書の中から生徒が選んで買う場合が多いようですが、中には全員に同じ辞書を指定して持たせる学校もあるようです。
 
 私の学校は、いくつかの辞書を推薦し、生徒がその中から選んで買うという方式をとっていましたから、生徒は何種類かの違う辞書を持っています。

 私は、まず、最初の授業で、全員が高校生用の辞書を買ったかどうか、持ってこさせて点検します。持ってこない生徒は持ってくるまで指導します。

 そして、いったん持ってきたら、辞書は家に持ち帰らせません。学校のロッカーの中に入れておき、英語の授業中に必ず使えるよう指示します。

 「それでは、予習で、教科書の単語調べができないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。しかしながら、「教科書の単語を家で調べてくる」という予習は、語彙習得上、あまり効果的ではありません。辞書をひけば、意味は簡単に日本語でわかります。簡単にわかった単語の意味は定着しないものです。


 では、辞書を授業内で効果的に使う「語彙活動」とは、どんなものでしょうか。


 辞書には、あるひとつの単語について、以下のような情報が載っています。

a)品詞、b)発音記号、c)アクセント、d)シラブル数、e)使用頻度、f)コロケーション、g)日本語の意味、h)例文、i)絵、j)類義語、k)類音語、l) 接頭辞、接尾辞など。
 
 
 今回はh)辞書の例文を使ってできる、定着度の高い語彙活動を2つほどあげてみます。


<辞書で自作クローズテスト>

 違う辞書を持っている生徒同士でペアになります。先生は、教科書に出てきた覚えさせたい単語をいくつか選びます。たとえば、remind, confident, ability, succeed, とします。生徒はそれぞれの単語を辞書で引いて、それぞれの例文を書き出します。

■Aさんの辞書の例文 (注1)
You remind me of your father.
She is confident of winning the game.
Cats have the ability to see in the dark.
My brother succeeded in his exam.

■Bさんの辞書の例文(注2)
She reminds him of her mother.
I am confident of their victory.
She has an unusual ability to play music.
He will succeed as a doctor.

 これらの例文の新出語の部分を(  )に変えて、クローズテストを作成します。

■Aさんが作ったクローズテスト (例文の順番は適当に変えさせます)
1. Cats have the (    ) to see in the dark.
2. You (   ) me of your father.
3 My brother (    ) in his exam.
4 She is (     ) of winning the game.
 
■Bさんが作ったクローズテスト
1 I am (    ) of their victory.
2 She has an unusual (     ) to play music.
3 He will (     ) as a doctor.
4 She (    ) him of her mother.

 このテストをお互いに交換しあい、答えを書きます。答えを書き終わったら、相手に戻して採点してもらいます。


 このテストは、なぜ語彙習得上、効果的なのでしょうか?

        教科書と違う文の中で、その単語を見ると、単語のイメージが
        さらに膨らみ、定着がしやすくなる。
        しかも、このテストでは、自分の辞書の例文と、
        ペアの相手の例文とで、2つ違う文の中でその単語をみるので、
        定着度がアップする。

という点です。お互いの答えを採点しあうのも、語彙習得には効果があります。

 
 さらに、こんな活動も可能です。

<辞書の例文を変えよう>

 辞書の例文を基に、自己表現の英作文をする活動です。上記の例文を使います。

She reminds him of her mother.
I am confident of their victory.
She has an unusual ability to play music.
He will succeed as a doctor.

 今度は、新出語の部分を残し、他の部分を空けておきます。
1(    ) reminds (    ) of (     ).      
2(    ) confident of (     ).       
3(    )has an unusual ability to (      ).
4(    ) succeed as (        ) .


 (   )の中を埋めて、自分のことや経験や身の回りの人のことなどのことについて自己表現をします。(  )の中は何語入れてもOKです。

例) (I am )confident of( passing the test).


 この活動の効果は、上記クローズテストの効果に加え、

       「自分についてのことを例文を基にして書くと、自己関与効果が働き、
        記億が促進される」

という部分にあります。


 今回は辞書の例文の効果的な使い方について、2つの活動例をあげました。次回は、辞書の情報の中の

(a)品詞、b)発音記号、c)アクセント、d)シラブル数、e)使用頻度、f)コロケーション、i)絵、l) 接頭辞、接尾辞

など、生徒があまり自分では目にしない部分の活動を中心にご紹介したいと思います。


注1 辞書の例文は 「Grand Century, 第2版」(三省堂)を少し改編したものです。
注2 辞書の例文は 「Genius 第4版」(大修館)を少し改編したものです。



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コメント

生徒が辞書から得たい情報の一番は「単語の意味(日本語)」なのだろうけど、教員側としては、その先に並んでいる「例文」に目を向けさせたい。
その点で、例文に目を向けさせて、それを穴埋め英作文や書き換えに活用するのは、生徒のコロケーションや構文を意識させるのに、使える活動だな、と思いました。

最近の課題として、高校生は紙の辞書ではなくて電子辞書を「すでに」持っている場合があります。電子辞書の場合、中に英和辞典だけでなく、和英や国語辞典、漢和辞典も入っていて、学校によっては国語の先生が「電子辞書が便利。ハンディだし」とお勧めしているところもあるようです。
最初に書いた、「生徒が真っ先に知りたいのは単語の意味(日本語)」という点では、生徒も電子辞書の方が取り組みやすいのかもしれません。
苦労して、重たい思いをしても、「紙の辞書にはこういう良い点がある」と生徒に理解してもらうのは、なかなか大変かもしれませんね。

辞書の例文を使ったクローズドテストですが、辞書活動するにあたって、該当する日本語訳だけを調べるツールとしてしか認識していない生徒が多い中、例文までをしっかり読ませるというのは、定着には十分に意味のあることだと思います。
本文の和訳や新出単語の和訳については市販の教科書併用参考書に全て載っていますし、電子辞書もありますので、その場の単語調べであればこれでも足りると思いますが、語彙の使い方までを定着させるのに、クローズドテストは非常に効果があると思います。

定義だけを教えるときはCobuildを使って良く小テストを行っていましたが、例文も次回から追加したいと思います。

おっしゃる通り「簡単にわかった単語の意味は定着しないもの」だと思います。学習した単語に、その後、どのように触れさせ、どのように自分のものにさせるかが、教師側の課題で、それが定着度を大きく左右すると言えると思います。この「どのように」の一つの方法として、クローズテストの手法はよいです。中学2年生では、生徒に作らせず、私が作った文で(  )に穴埋めをさせてみました。ちょっと彼らにはレベルが高かったようですが、比較的単語が書けるようになっていましたし、単語のイメージも湧いたようでした。
斬新なアイディアをありがとうございます。いつも授業で役立たせて頂いております。

自分の経験上よくわかります。私は学生のとき、ジニアスとリーダーズの2冊を使って勉強していました。学校ではジニアスをロッカーに、家ではリーダーズで予習です。

辞書を2冊使う利点は納得できます。

簡単にわかった単語の意味は定着しないというのは納得いきます。
では辞書を使わないと未知語が多すぎて教科書の意味が全くわからないようなあまり英語が得意でない(私のような笑)生徒には先生はどうやって指導なさっていましたか?


余談ですが、私は塾の先生がフォニックスを教えてくれたので、物心ついたとき(?)から発音記号は(ある程度)読めましたが、案外発音記号のわからない中高生って多いんですね。
次回のコラムが見逃せません。

ふくた様、
コメントをありがとうございました。
辞書で意味調べをさせない=未知語を教えないということではないのです。
このコラムにはそこの部分をどうするかが抜けていましたね。
ご指摘ありがとうございます。

辞書で調べさせずとも、未知語の導入は様々な方法で可能です。

教科書そのままの状態で、未知語を推測させるのは難しいですが、
やさしい例文を使って未知語をペアで推測させるとか、ここでは詳しくは述べられませんが、「効果抜群!語彙の導入と定着を促進する語彙活動集」(岡田、2007)の中には、さまざまな未知語の導入方法が書いてあります。

また、上で、松橋様、大西様がおっしゃっているように、未知語は軽くこちらで教えてしまって、「学習した単語をいかに定着させるかが課題」ということで、主に、「学習した新出語をいかに定着させるか」の観点から辞書の使い方をご紹介していきます。

また、私もフォニックスは中1で取り扱います。辞書の発音記号の使い方につきましては、来月のコラムをお楽しみになさってください。

参考文献
「効果抜群!語彙の導入と定着を促進する語彙活動集」岡田順子(2007)、アルク。


私は文法書から、その単元の穴埋めを作っていましたが、そうか、辞書の例文という手もありますね。

今の中高生に紙辞書の有用性をわかってもらうのは至難の業ですね。紙の辞書は真っ新だったりします。

高坂様、

コメントをありがとうございました。

>紙の辞書は真っ新だったり

そこがまさにこのコラムの目的です。

教員が授業で、辞書のあらゆる部分に目を向けさせる。そのひとつが今回の「例文」です。

家で使わせるだけなら、やはり電子辞書に頼る生徒が多いでしょうが、授業中、教員があらゆる活動を通して、辞書の様々な情報に触れさせる。

次回以降のコラムもごらんいただければと思います。

いくつかの辞書の例文を比較して見るという観点は、自分自身が行っている習慣でありながら、教える側としては気づかなかった点でした。

最近の辞書はコーパスを利用して作成したものがほとんどだと思うので例文に対する信頼性は高いものと考えられます。それゆえ、クローズテストの活動は単語の使用方法・状況についてより正しく深い理解を促せられるのではないでしょうか。

また、例文全体に目配りができるようになるという利点があることや、自己表現を通じることによって単語の定着を図りつつ、発信力をも強化できる土台が培われる点が良いように思いました。生徒同士がお互いにどんな文章を作るかを見比べる楽しみもありそうです。

紙ベースの辞書については扱う楽しみ方がたくさんあると思いますが、ところで、「高校生用の辞書」という記述についてひとつ伺いたい点がありました。具体的にはどういった辞書が該当するのでしょうか。一定の語彙数や例文の豊富さがあることが「高校生用」という判断基準という理解でよろしいでしょうか。


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