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語彙習得理論を“現場目線”で活かす!

実際に中学生・高校生の指導にあたってきた教師が、中学・高校現場目線で、語彙習得理論に基づく効果の高い語彙指導・語彙活動のあり方を探る。

語彙習得の観点からみたEnglish Library のススメ

コラム

2009年8月03日

 私の初任校には、English Libraryがありました。文字通り英語の本を貸し出す図書館です。図書館といっても、それ専用の場所ではなく、ある教室の一角に作ったものです。もちろん、最初からあったわけではなく、年月をかけて設置しました。

 
 語彙習得のひとつのあり方として「偶発的学習」(incidental learning)というものがあります。これは、多読など、学習者が特に未知語を覚えようと意識しない活動の中で、たくさんの英語のインプットに触れることより、自然と語彙を覚えてしまうことを指します。
 
 このタイプの語彙学習は、単語を覚えることを目的とした「意図的学習」(intentional learning)と比べると、あるひとつの語を覚えるのに非常に時間がかかります。何回もその単語をインプットされて、初めてその単語を習得できるからです。

 そのかわりひとたび覚えてしまうと忘れにくいという利点があります。さらに、本を読みながらその単語を学習するので、文章中でのその単語の使い方も理解することが可能です。また、教科書などに出てきた単語を読んだ本の中でたまたま見つけたりすると、「あ、これ、教科書で出てきた!」とうれしくなり、さらにその単語を忘れにくくします。

 

 では、具体的にEnglish Library の設置方法を説明してみましょう。

 まず、多読は生徒が自分の好きな本を読むのが一番です。そこで、高校生でも600語レベルくらいのやさしい絵本から、2000語レベルの社会問題を扱ったものや小説、理系の生徒用に科学的な読み物まで、多種多様な本を集めるところから始めます。絵のあるものは、未知語と絵が結びついて語彙習得がしやすくなります。また、推理物などは、生徒には特に人気があるようです。
 

 各学校には英語科に予算がつくはずです。そこで出版社と連絡をとり、目的を説明し、目録をいただき、「これは!」と思うものを注文します。多くの学校では、1年分の予算ではできないので、数年かけて集めるわけです。

 本が集まったら、その本の設置場所を考えます。生徒が自由に出入りできる場所であることが必須条件です。適切な場所がなければ、図書館の一角を貸してもらえるよう、頼むことも可能かもしれません。

 初任校では、英語科のある教室の一角に、2校目で行ったときは、クラス数減でたまたま空いた教室のうしろのロッカーの上に本棚を用意して、置かせていただきました。本がなくなるのでは、という懸念もあるかもしれませんが、そこは、生徒を信用しましょう。英語の本というのは、幸か不幸か、なくならないものです^^;。


 教員の役割は、どの生徒がどの位の本を読んだかを把握することです。2校目で私が作成した多読シートは以下のようなものでした。書くのに、あまり時間がかからず、かつ、少しだけ、多読の際に単語にも注意が向くようにしかけてあります。

<多読シート>
多読シート


 このようなシートをたくさん印刷しておき、本棚の横においておきます。生徒は、本を借りるときにこのシートを持っていき、1冊読み終わったら、シートを記入し、英語科の教員にサインをもらいにいきます。生徒全員に多読シートを閉じるファイルを渡しておき、教員のサインをもらったら、本を返却し、シートをファイルに閉じて保管します。
 
 学期末に、教員はそのファイルを集め、一人ひとりの多読状況を把握します。あくまで本を愉しんで読むことが重要ですので、成績にはいれません。成績に入れてしまうと自分のペースで本が読めなくなってしまい、愉しくなくなってしまいます。評価は、自分がためた多読シートの数です。シートの数が多いと、達成感が生まれ、生徒自身が「自分で自分をほめてあげる」ことが大切です。
  

  中には1年間で40冊も読む生徒もいます。一度多読の面白さにハマると自分でどんどん読み続けるようです。


 また、多読を始めた時期から、1年後くらいに語彙サイズテスト(注)を実施してみると、自分の単語数が増えたことがわかり、達成感につながります。これも、もちろん成績にはいれません。


 実際に語彙サイズテストを実施してみましたが、高1の6月では800語くらいであった生徒が、学年の最後には2000語近い語彙数になったという例もあります。もちろん、教科書で習う単語数も含まれますが、英語Iのテキストは全部覚えたとしても900語ですから、300語は多読からの語彙数増といえましょう。


 もちろん、すべてうまくいくわけではありません。自主的な多読ですから、やさしい本でシート数稼ぎをする生徒(笑)、語彙数をふやすなら多読より単語集のほうがよいという生徒もいます(苦笑)。しかし、そういう生徒も、実は、友達ががんばって本を読んでいる姿を横目で見ています。そして、少しずつ多読の輪がひろがったりするものです。

 

 多読による語彙習得を期待するには、教員の長い目が一番必要だと思います。


注 語彙サイズテストとして、「英語語彙の指導マニュアル」(望月、相澤、投野、2003)についている望月テストを使用しました。


参考文献
「英語語彙の指導マニュアル」望月、相澤、投野、2003 大修館 東京。



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コメント

English Libraryの活用で偶発的学習を狙おうというのが、今回ヒントになり、是非活用したいなと考えています。
場所が確保出来なくても少しアレンジして出来そうな感じです。

40冊も読む子がいるんですね。
音楽と本とどっちが有効なんでしょうか??

English Library、いいですね。
私は中学校で働いているので、なかなか多読の域まで生徒を持っていけてないのですが、ちょっとした絵本から始めてもいいような気がします。
そして、成績に入れない、というのもいいですね。成績に入れなくても頑張れる生徒が、最後は伸びてくるんだろうと思いました。

武庫の荘の久米ヒロ志さま、

歌も語彙習得には効果的といわれております。
と言うのも歌詞には語彙の繰り返しも多く、感動的なものだとインパクトが強いので、自己関与効果が働き、語彙習得率は高くなります。

多読は個人差が大きく出ますが、歌はあんまり個人差がでないのも特徴です。

どちらにせよ、使い方次第なのかなと思います。

偶発的学習で得られた語彙は確かに忘れにくいと思います。私が浪人生の頃は、分からない単語はまず飛ばして読んで、何回か出てきてやっぱり気になるようだったら辞書を引く(あるいは巻末の訳を見る)ということをして語彙を増やしていました。単語の語源を利用して覚えるという方法も併用していましたが、リーディングの中で覚えたものは文脈まで覚えているので非常に効果的だと思います。

成績に関係なくとも、時間が許す限り、教師が多読をほめてあげることも動機付けの一つになるかと思います。

読書というと個人活動の印象がありましたが、教室にEnglish Libraryがあれば、生徒もお互いの取り組みを意識しながら多読にチャレンジできて、そういう点では「社会的ストラテジー」に通じるものもありそうですね。

書籍であれば、1冊読み終えた時の達成感も味わえるし、1冊の中に、テーマに関連した単語や熟語が何度も出てきて、まさに「偶発的学習」を意図的に仕組むことができそうですね。

English Libraryの設置、大変そうですがとても画期的だと思いました。

私が高校生のころの図書室には、英語で書かれた本なんて数冊しか置かれてない状況だったと思います。

なので大学に入って英語のジャーナルが置いてある部屋が図書館にあるのを知って、本当に驚きました(笑)

生徒達が多読に対して楽しみとか喜びを見つけられるような、教師の何気ないフォローが必要だと思いました。

眺めるだけでもいい、文化の違いを、絵から感じ取るだけでもいいですよね、とっかかりになりさえすれば。
読めたらいいなあ、って思わせられたらOKだと思います。
じっくり気長に、愛情もって、多読を育てる暖かな目ですね。

English Libraryもしくは英語教室は教師になったときに設置したいと思っています。

多読をするためには、学校で取り扱う教科書の難易度を下げるなどして、生徒に余裕を持たせないといけないと思います。
読みやすい文章をたくさん読んだ方が達成感も生徒にとってありますからね。

ESSみたいなクラブを作るとか、多読を科目にするなどいろいろな手だてはあると思っています。

でんた様

コメントをありがとうございました。

学生さんとお見受けいたします。
English Libraryも英語教室も、
英語科教員の共通理解、さらに校長などの管理職の理解など、さまざまな条件がそろって初めて可能なことです。

また、対象学年(クラス)を絞る、たとえば、選択英語のクラスの生徒のみ、とか、外国語科の生徒のみとか、いうことも考慮に入れてあります。

ESSの生徒に多読を、というのは、比較的簡単かと思います。

学校のさまざまな条件をかんがみ、長い目でがんばってくださいませ。

とても画期的で、なおかつしかけを存分に含ませた有意義な取り組みだと思います。これにピーンとヒントを得て、授業での活動を1つ思いつきました(笑)ありがとうございました。


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