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語彙習得理論を“現場目線”で活かす!

実際に中学生・高校生の指導にあたってきた教師が、中学・高校現場目線で、語彙習得理論に基づく効果の高い語彙指導・語彙活動のあり方を探る。

語彙学習も”ペア”で楽しく、かつ、効果的に! ~ 丸暗記からの脱却を目指して ~

コラム

2009年5月20日

 英語の授業で、ペア・グループ学習というと、ダイアログ練習やスキット作りなどの活動に使用されることが多く、語彙指導にペア・グループ学習を取り入れている、というお話はあまり耳にすることがありません。語彙学習は、一人でコツコツとするもの、という印象が先生方にも、生徒の間にも強いように思います。


 そもそも、語彙のペア・グループ活動そのものが、英語教育の中でほとんど紹介されていないと思われます。しかし、語彙学習に社会的ストラテジー(友達と一緒に勉強する学習方法)を取り入れることが非常に効果的であることは、さまざまな研究が実証しています(O'malley and Chamot, 1990, Schmitt, 1997)。


 たとえば、教科書のあるページで、新出語を5語学習したとします。生徒が単語を覚えるのに一番よく使う学習法は「何回も書いて覚える」だという結果が出ています。ということは、かなりの生徒がこの5語を覚えるのに、その方法を使う可能性が高いといえましょう。国語の漢字練習法の踏襲かもしれません。

 しかし、「何回も書いて覚える」という学習法は、忘れやすいだけでなく、無味乾燥で面白くありません。その結果、語彙学習を嫌いになる傾向もみられます。


 では、「何回も書いて覚える」という部分は変えずに、次のような方法でペア活動にしたら、いかがでしょう?

         <新しく学習した単語5語の例>(中3~高1レベルを想定)
            desert, forest, earth, air, greenhouse,

 この5語を、ペアで、以下の表にしたがって、10のカテゴリーに分類しながら、単語を10回書くという活動です。要するに、カテゴリーが10ありますので、いつのまにか10回も単語を書くことが可能になります。    




 読者のみなさんも、おひとりでけっこうですので、この5語を分類表にしたがって実際に分けてみてください。
最初の語”desert”を分類するとき、どちらに分類するかあれこれと考えながら、最終的に10回書いているはずです。


 ペアで行えば、意見が分かれることもあるでしょう。そういうとき、同じ分類表を作らなければならないとすると、ここで、話しあいが生まれてきます。
 実際、生徒の発想は実にユニークです。高校1年生のあるクラスでは、こんな話しあいが聞こえてきました。


Aさん 「”desert” は砂漠だから、砂漠は動かないよね」
Bさん 「うん。・・・・あ、でも、砂漠化で、砂漠は広がっているから、動く物とも考えられるかも。」
Aさん 「あ、それ面白い考えだよね。じゃあ、動く物のほうに入れよう。」
     

Cさん 「私、"forest"は嫌いなんだよね。虫がたくさんいて、苦手。」
Dさん 「え~、森の中のお散歩って気持ちいいじゃん。」
Cさん 「虫が寄ってこなければ、気持ちいいけど。」
Dさん 「私も虫は嫌いだけど、森林浴とか、サイコー!」
Cさん 「じゃ、いいよ、好きな物のほうで。」
    
私はこの活動を "modified repetition"と呼んでいるのですが、この活動が単語の記億を促進する要素をまとめると、以下の4点になるかと思います。

     ① ペアでの話しあいにより、単語の意味をいろいろな角度から深く考えることが可能

     ② ひとつの単語を自分の経験と結びつけて考えることが可能

     ③ 友達と一緒に作業することの楽しさ

     ④ いつのまにか、実は、10回も単語を書いているということ

「単語を10回ずつ書きなさい」を少し変えて、「ペアで分類しながら10回書きなさい」にするだけで単語を書く回数は変わらなくても、楽しく取り組めて定着率も高い効果的な語彙活動になるのです。


語彙指導にかける時間の問題もあるかと思います。しかし、これからは中学も週3時間から週4時間に授業数が増えます。その時間増をぜひ語彙のペア活動にあてて、生徒が「語彙学習は楽しい」と感じるようになれば良いと思います。

来月は、やはり、ペア学習を中心にした、「語彙指導でも異文化理解教育を!」をお届けします。
一見相いれなさそうな、「語彙指導」と「異文化理解教育」がどのように繋がっていくか、謎解きをしたいと思っています。

<参考文献>
O’Malley, J., & Chamot, A. (1990). Learning strategies in second language acquisition. Cambridge:
   Cambridge University Press.

Schmitt, N. (1997). Vocabulary learning strategies. In N. Schmitt & M. McCarthy (Eds.),
   Vocabulary: Description, acquisition and pedagogy (pp. 119-227). Cambridge: Cambridge University Press.



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コメント

今回のコラムの内容にはとても共感しました。

semantic feature analysisとコンセプトが似ている点があるような印象を受けましたが、より簡素で柔軟応用性が利き作りやすく、personalizationの要素も取り入れ、かつ、単語を何度も書くと書かせる工夫がなされていると言う点で、modified repetitionは素晴らしい活動だと感じました。

未だに、ただ単にひたすら同じ単語を何度も書いて書いて覚えることを効果的な単語学習法と考え、生徒に課題として課している先生方、中学校・高校の英語科は依然として多いのではないかと思います。
これからも、「丸暗記からの脱却を目指して」全国の英語教師に効果的な語彙指導・学習法を普及されることを心から願っております。

なるほど。
友人の会話で、
関連付けて記憶力がアップするわけですね。
脳のネットワークもできて二重の効果ですよね。

意味も読み方も使い方も気にしないで、単語をただのアルファべットの羅列としてしかとらえていない生徒にいくら「意味を考えながら書いて覚えるんだよ」って言っても無理な話ですね。

分類しようとすれば必ずその単語の意味を考えないといけないし、一石二鳥以上の効果があるように思えます。さっそく生徒にやってもらって反応を見たいと思います。

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