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国際ビジネス英語エッセイ

世界を舞台にビジネスの世界で活躍してきた筆者が、自らの体験を交えて知的に綴る、スペシャルエッセイ

【第21回】
Cross(すれ違い)する Culture

2010年06月07日

見渡すと、何と「文化」ということばが多いことか。文化の日culture day、文化勲章order of culture、文化祭cultural festival。文化都市、文化会館、文化住宅から、文化村、文化包丁、文化鍋、そして文化干しにまで至る。ここでculture・文化とは、昔から西洋的な芸術とか生活様式である「ハイカラHigh Collar」のイメージだ。文化学院(1921)や文化服装学院(1922)など、大正デモクラシーの芳香と通じるものがある。

ところが、その「西洋的文化感」が国際舞台では皮肉にもどうもシックリこない。例えば国際ビジネスの重要要素「cross culture=(異)文化」論は芸術とか教養といった意味合いとは違う。cultureは「文化」では表しきれない深い言葉で、例えば、国際文化会館の英表記はThe International Houseとcultureは省かれている。

それは、cultureのもう一つ重要な「栽培」「耕作」という意味を考えると理解が深まる。砂漠の国サウジアラビアにおいて空から見るとあちこちに緑の円があった。半径数百メートルにもなるアメリカ製center pivot大規模散水方式で、小麦畑だ。
それこそagri-cultureと感心したものだ。接頭のagreはラテン語でacre(=土地面積)の語源で、col-, cult-とはcolere = cultivare = to till(耕す)だ。
Horti-cultureは「horti=園+culture=芸」で園芸。他にもaqua-culture(養殖、水産)、hydro-culture(水耕、水栽培)、seri-culture(養蚕)、arbori-culture(樹芸、育樹)などがある。さらに、真珠も養殖されるしcultured pearl、葡萄栽培viti-culture はvitis(=vine)+culture。さらに植民地colonialに派生する。

つまり、cultureとは「ハイカラ感」というより、cultivateと農耕的で「ジワジワと」「肌に沁み込む」ごとく形成されていくものだと納得がいく。ビジネス的にも「地場産業」とか「ご当地(とうち)もの」というようにlocal文化ということになり、これは国際(inter-national)とは対峙するということになる。
広辞苑でも「文化とは文明のなかの特に生活・精神に根差すもの」とある。

これに関連して、今は昔、情報化時代の幕開け期、インド人パートナーの「computer(という文明)とculture(という文化)」についてのことばが忘れられない。
重厚長大から軽薄短小産業に転職して、ハードからソフトへの移行時で、コンピュータがキーワードだった。
「コンピュータは文化の具現化手段」ゆえ「国際間でのfusion融合は本当に難しい。だからこそ人間力man powerがだいじなのだ」とーーー。
その時はマンパワー=労働力という先入観でピンと来なかったのだが、その後インターネットinter-netが出現、世界がつながれた(world wide web)今になって、wisdom of mass(人間集団の英知)というあの時の深い意味を痛感する。

他方、ハンチントンの著作で有名になったcivilization 「文明」の語源は、ラテン語の civis [キーウィス] 「市民」。ローマ帝国が版図を広げるにつれ、支配下に入ったローマの culture を受け入れ、溶け込んだ。それがcivilize だ。

この文明と文化の違いを司馬遼太郎は「アメリカ素描」(読売新聞社刊)に記している。例えば「交通信号の赤と青は共有できるから文明。他方、日本女性の部屋に入る時のしぐさ。その不合理さゆえに美しく光をはなつ文化だ」。
文明とは皆で共有できるに対し、文化はlocal固有のものというのは共感できる。

いよいよグローバル化が加速の時代だが、「不合理の美しさvs効率優先」という文化の壁は高い。「異文化」cross cultureとは文字通りcross=すれ違いになるという宿命だから、その理解とは「(お互い)異なるということを理解」することだ。それが国際ビジネス人の重要な使命ということになる。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

■ 関連サイト
文化(文明でなく)の衝突 ― 勝てない戦い -
中東紛争・日本:「文明」と「文化」の混同の危うさ



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