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国際ビジネス英語エッセイ

世界を舞台にビジネスの世界で活躍してきた筆者が、自らの体験を交えて知的に綴る、スペシャルエッセイ

【第19回】
一番下の行(ぎょう)は何だ?

2010年03月29日

「みどりは天才なんかではありません」、「小さい時から毎日何時間も練習してきたのです。練習したからこそなのです」。こう話してくれたのは「世界のミドリ」の母君で自らもヴァイオリン奏者の五嶋節さんだ。「私はみどりの練習でこう尋ねます。『あなたの演奏は何を言いたいの? ボトム・ラインは何なの?』と」。小さいみどりちゃんにはこのまるで禅問答のような問いはいかに難しく、厳しかったことか。「そして、そんな厳しい練習が終わると私は直ちにもうベタベタの母親に帰るのです」と大阪なまりの節さんは涙さえ浮かべていた。

この忘れられない逸話の中の言葉What is the bottom line?は実はビジネス用語だ。この「一番下の行(ぎょう)」とは何か? それは貸借対照表Balance Sheetや損益計算書Profit & Lossなど会計帳簿の最下行、つまり、一年(半年)の努力の結果が一体どれだけの利益(損失)を生んだのか、という最重要項目である。転じて、日常用語としても「結論は何だ? 何を言いたいのか?」という意味になってきた。

このBottom Line思考はまた、国際ビジネス通信上実に大事である。今は死語化してる「コレポン」だ。コレポンとはBusiness Correspondenceつまり、文書のやり取りで、インターネットもファックスもない時代はTELEXや電報(Cable、Wire、Telegraph)だった。現在では考えられないだろうが、国際通信は高価なため、文字数をいかに少なくするかが担当者の重要な仕事だった。
「結果、何を言いたいのだ? 何がポイントなのか?」というビジネスマインドを先輩から叩き込まれた。今は、通信費が安いが故に文章が必要以上に長くなる。要点が絞られてないと、またそれの説明を求めてやり取りが増える。それはコストそのもと意識せねばならない。

Bottom Lineのちょうど逆の表現、Head Lineはメディア用語だが、考え(=いかに相手にアピールするか)としては完全に一致する。同義語でキャッチ・フレイズはCatch Lineとも言う。このLineとは単に「線・行」という以上に意味が深い。相手の仕事(職種)を尋ねるときには、What is your business?というよりはWhat line of work/business are you in?の方が丁寧である。

仕事や原稿の「締め切り」はDead Line。辞書によると「死線、越えると射殺される」ともある。ガダルカナル島を攻めた米兵の意識限界線を描いたアメリカ映画は「Thin and red line」だった。ビジネスマンたるもの「赤red」というのは禁句だが、海外駐在の最前線Front Lineにある者はまさに戦士であるから、締め切り=死線という切迫感は他人事ではない。

死活問題といえば、阪神大震災以後Life Lineという言葉が浮上した。これはもともと救命索、命綱から拡大して、「電気、ガス、水道」と市民生活に直接関係する文字通りの生命線だ。石油やガスを運ぶ管(くだ)はPipelineだが、ビジネス用語では(売上やプロジェクト)計画を時系列的に線上で表わし、そこに行動計画や途中経過を示す。長く延びたパイプラインの要所要所に計測器やBoosterを配置するイメージを考えるとピッタリする。そして、その終着こそ収支決算である。

ということで、年度末決算。最下段(業績)やいかに?
又、果たして、グローバル人材は育ったのか?

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

■ 関連サイト
・グローバル人材の条件:魅力度と英語力
・来年こそは英語が話せるようになりたいと思ってるあなたへ



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コメント

Bottom Lineから派生した英語の様々なLineについての記事、面白く拝読させていただきました。 日本人は、Bottom Line(結果)と同じくらい、あるいはそれ以上にProcess(過程)を大事にしますね。 そして、さらに "Reading between the line" (行間を読む)も 英語版「空気を読む」に近い表現で、日本人が得意とするところですね。 アメリカでは、一般的に、"Reading between the line"をいちいち働かせなくては意思疎通が出来ないコミュニケーションの仕方はよくないということになっていますので、やはり文化的なギャップの隔たりを感じます。Lineを使ったボキャブラリーからいろいろと考えさせられることがありますね。


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