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国際ビジネス英語エッセイ

世界を舞台にビジネスの世界で活躍してきた筆者が、自らの体験を交えて知的に綴る、スペシャルエッセイ

【第3回】
From the New World

2008年12月01日

1993年12月16日。筆者はNYマンハッタンのカーネギー・ホールの前に立っていた。丁度100年前、1893年のこの日、ここでドボルザークの交響曲第九番が初演されたのだ。

♪ミーソソー、ミーレド、レーミソーミレー♪、下校時に鳴るこの哀愁に満ちたメロディー「家路」は、夕焼けの美しさと重なって、子供心にも切なく今なお肌に刷り込まれている。

Going’home, goin’home, I am a goin’home.
「遠き山に日は落ちてーー」(堀内敬三)———。見事な意訳だ。

あの甘いコールアングレの響きがその交響曲の第二楽章Largoであるというのは長じてから知った。その名「新世界より」の意味も後にわかった。

チェコの作曲家ドボルザークが慈善事業家の招きでニューヨークのナショナル音楽院の院長として「赴任」したのは1892年。51歳だった。筆者が家族を連れて、「憧れの国」アメリカ(NY)に赴任したのは100年後の1992年、もう五十路線に近かった。 将来への期待と不安の中、この「新世界」で見るもの聞くことすべてがカルチャーショックだった。

「私が流暢な英語を話したのでみんな驚いていた」と記したドボルザークとて、ホームシックにかかった。そこで、アイオア州にあるスピルヴィルという、故郷ボヘミアからの入植者の小さな村に保養にでかけ「祖国、故郷を思った」由。アメリカの黒人音楽が故郷ボヘミアの音楽に似ていることに刺激をうけて、「新世界より」や弦楽四重奏12番「アメリカ」を 作曲したのはこの村でだ。まさに新世界から故郷に向けての「こころのメッセージ」。と、この話を、在日アイオア州事務所の知人にしたら「それは知らなかった」と目を輝かした。

Home Sick。「いつか故郷日本に帰りたいという一生だった」というある中南米移民高齢者の涙ながらの話は印象に残っている。 移民はImmigration, Emigration。Migrateとは本来渡り鳥の移動だが、コンピュータ用語ではシステム移行をさす。Localizationも「地域化=その土地に溶け込む」からIT用語となり、ソフトの現地化を言う。

世界でがんばってるのは「華僑」a Chinese [Chinese merchant] (living) abroad或いはoverseas Chinese。世界中どこに行ってもあるChina Townがそれを示す。「僑」とは本来仮住まいを意味する言葉であり、二世・三世・四世の世代になれば薄れはしようが、望郷感は一種のDNA化している。インド人の場合は印僑。250万人が暮らすアメリカでは、印僑の9人に1人が年収1億円以上、人口は0.5%ながら、全米の億万長者の10%を占める、と聞く。

マンハッタン南には隣のChina Townに押されぎみだがLittle Italy。ロシア街も近い。47丁目通りは通称ダイヤモンド街。長いもみあげに黒の燕尾服姿のユダヤ人宝石商の横をアラビア服が闊歩している。ロングアイランドには韓国街もあり、それぞれのCulture文化を誇示している。

さあ、来年1月20日には、いよいよ「アフリカ系」大統領が誕生する。オバマ大統領がその候補受諾演説で30回も言及したという「アメリカの約束」とは、聖書のイスラエル人のExodusだし、清教徒Puritanにとってのアメリカを示唆する。

Global化、Flat化の時代だが「志を果たして、いつの日にか帰らん」というドボルザーク的な帰属意識は人間の根にある。 そこでは、それぞれ溶け合う(Fusion)Melting Pot(ルツボ)ではなく、個性が輝くSalad Bowlを形成する。

そんな多様なアメリカについて末娘と英語読本「Melting Pot or Salad Bowl?」を共著した。 國弘正雄氏(同時通訳)や平野次郎氏(学習院女子大学、元NHK解説委員)らから「実に面白い」と過分のお言葉を頂戴したのは望外の喜びである。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

■ 関連サイト
・いよいよ米大統領選 NO 「マケイン・ペイリンTicket」
・Melting Pot or Salad Bowl? 〜Eye-Opening Facts about the U.S.A.〜



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コメント

読ませていただきました。海外にいると特に自分のアイデンティティだとかルーツというものをよく考えますね。海外で生まれ海外生活の方が日本より長くても海外にいても、やはり自分の故郷は日本なんだなという心は持っていました。 帰属意識は人間の根にあるというのはすごく僕は共感できます。逆に日本にいる人にその意識が希薄なような気がします。


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